第九話 混ざっている
放課後。
教室。
人、ほぼいない。
青木、席。
ノート、開いたまま。
ペン、止まってる。
書けない。
青木「……な」
雨宮、窓際。
外、見てる。
雨宮「うん」
青木「これ」
ノート指す。
『繋がってる?』
青木「もう少し知りたい」
雨宮、すぐ答えない。
風。
カーテン、少し揺れる。
---
雨宮「……青木ってさ」
青木「ん」
雨宮「消しゴム落ちたとき」
青木「……ああ」
雨宮「拾うでしょ」
青木「そりゃ」
雨宮「なんで?」
青木「いや……」
言いかける。
青木「……落ちたからだろ」
雨宮「うん」
間。
雨宮「じゃあ、落ちなかったら?」
青木「拾わねぇよ」
雨宮「うん」
沈黙。
青木「……それが?」
雨宮、少しだけ振り向く。
雨宮「落ちたから拾うのか」
間。
雨宮「拾うから落ちるのか」
青木「は?」
青木「逆だろ」
雨宮「そう?」
青木「そうだろ」
雨宮「じゃあさ」
少しだけ近づく。
雨宮「青木が拾うって決めてなかったら」
間。
雨宮「それ、落ちてないかもね」
沈黙。
青木「……いや」
すぐ否定しようとする。
でも。
青木「……」
言葉、止まる。
雨宮、続けない。
青木「……じゃあさ」
少しだけ前のめり。
青木「俺がやるから、起きてるってことか?」
雨宮「うん」
青木「全部?」
雨宮「全部ではない」
ここ、はっきり。
青木「……は?」
雨宮「青木“だけ”じゃない」
間。
雨宮「でも、青木も入ってる」
沈黙。
青木、考える。
青木「……混ざってるってことか」
雨宮「近い」
青木「近いってなんだよ」
雨宮、少しだけ笑う。
雨宮「そのままでいい」
青木「よくねぇよ」
でも。
否定しきれない。
青木、ノート見る。
『繋がってる?』
その下に、少しだけ書く。
『どこまで?』
ペン、止まる。
雨宮、見る。
何も言わない。
青木「……なぁ」
雨宮「うん」
青木「これ、どこまで繋がってんの」
間。
雨宮、外を見る。
少しだけ考える。
雨宮「……青木が気づけるところまで」
それだけ。
青木「……は?」
青木、顔上げる。
雨宮、もうこっち見てない。
風。
カーテン、揺れる。
青木、ノート見る。
『どこまで?』
そのまま。
答え、書かれてない。
でも。
さっきより、“わかりかけてしまってる”。




