第十七話 あいだ
夕方。
教室。
人、いない。
雨宮、一人。
窓際。
外、オレンジ。
静か。
雨宮、ノート開く。
白紙。
少し考える。
ペン、持つ。
書く。
『寄り』
止まる。
その下。
『選択』
少し間。
小さく。
雨宮「……分ける意味ある?」
自分で書いて、自分で疑う。
ペン、置く。
目、閉じる。
これまで。
全部、整理できてた。
* 条件
* タイミング
* 距離
でも。
一つだけ。
残ってる。
先日。
振り返ったこと。
戻ったこと。
あれは。
雨宮(……説明はできる)
でも。
雨宮
そこが消えない。
青木。
ガラッ。
青木「まだいたのか」
雨宮「うん」
青木、近づく。
青木「珍しく残ってるな」
雨宮「そう?」
青木「いつも先帰るじゃん」
雨宮、少しだけ止まる。
確かに。
でも。
昨日から。
少し違う。
雨宮「……たまたま」
青木「ふーん」
興味なさそう。
でも離れない。
隣の席、座る。
青木「俺も残るわ」
雨宮「なんで」
青木「なんとなく」
軽い。
雨宮、少しだけ見る。
その“なんとなく”。
前なら分解してた。
でも今。
しない。
沈黙。
青木、机に落書きしようとして止まる。
青木「怒る?」
雨宮「怒らない」
青木「じゃあやめとく」
雨宮「なんで」
青木「怒らないならいいかなって」
雨宮「意味わかんない」
青木「だろ」
少し笑う。
雨宮、ほんの少しだけ笑う。
雨宮、視線落とす。
ノート。
『寄り』
『選択』
青木、覗く。
青木「なにこれ」
雨宮「メモ」
青木「ふーん」
少し間。
青木「で、どっちなの」
雨宮「どっち?」
青木「先日のやつ」
ストレート。
青木「寄ってたのか、選んだのか」
沈黙。
逃げられない。
雨宮、少しだけ息吐く。
雨宮「……両方」
初めて。
曖昧にする。
青木「へぇ」
それ以上は掘らない。
でも。
青木、ノート見る。
『寄り』
『選択』
青木「なんで分けたいの」
雨宮「……混ざると」
少し間。
雨宮「わからなくなるから」
青木「何が」
雨宮「……自分が」
静か。
青木、少し考える。
でも。
深くは考えてない顔。
青木「でもさ」
間。
青木「自分で選んだやつって、
ちょっと寄って見えない?」
雨宮「……」
止まる。
青木「逆に、
寄ってきたやつも」
青木「自分で触らなかったら、
そのまま過ぎるし」
軽い。
本当に、
ただ思っただけみたいに言う。
でも。
雨宮、視線止まる。
先日。
振り返った。
戻った。
待った。
触った。
全部、
“自分でやった”
雨宮「……」
青木「だからさ」
青木、立ち上がる。
青木「たぶん、
どっちかじゃないんだろ」
軽い。
いつもの調子。
でも。
雨宮の中で、
一個だけ噛み合う。
世界は寄る。
でも。
人も、
近づく。
どっちが先か、
もう分からない。
雨宮「……」
青木「帰るか」
雨宮「……うん」
雨宮、ペン置く。
ノートを見る。
『寄り』
『選択』
少しだけ止まる。
でも。
何も書かない。
そのままノート閉じる。
カバンにしまう。
立つ。
青木、先に歩く。
雨宮、後ろついていく。
静かな教室。
夕方の光、
長く伸びる。
答えはまだ出ない。
教室の出口。
青木、扉開ける。
その瞬間。
雨宮、止まる。
青木「?」
雨宮「……ちょっと」
小さく。
戻る。
席。
カバン開ける。
ノート、もう一回出す。
開く。
『寄り』
『選択』
少し見る。
それから。
二つの言葉の間に、
短い線を引く。
繋ぐというより。
境界を曖昧にするみたいに。
雨宮「……」
小さく息吐く。
ノート閉じる。
今度こそ、
カバンにしまう。
振り返る。
青木、出口で待ってる。
急かさない。
雨宮、少しだけ見る。
それから、
歩き出す。
今度は止まらない。




