第十六話 違うはず
翌日。
朝。
教室。
雨宮、席。
静か。
青木、まだ来てない。
雨宮、ノート開く。
何も書かれてない。
手、止まる。
昨日。
思い出す。
振り返ったこと。
戻ったこと。
雨宮(……選んだ)
小さく。
すぐに。
雨宮(……違う)
否定。
雨宮(条件が揃ってただけ)
整理する。
* あの時間
* あの場所
* あの天気
成立しやすい状況
雨宮
納得する。
少しだけ、楽になる。
青木。
ガラッ。
青木「おはよ」
雨宮「うん」
青木、席に座る。
青木「昨日さ」
雨宮「うん」
青木「タイミングやばくなかった?」
雨宮「普通だと思うけど」
青木「いや絶対ちょうどだっただろ」
雨宮「そう?」
青木「そうだよ」
雨宮、少しだけ笑う。
雨宮「運いいね」
青木「だろ?」
満足げ。
雨宮、視線逸らす。
軽く流せた。
…… でもズレる
ーーー
昼休み。
青木、前方でクラスメイトと話してる。
青木「それ違うって」
笑ってる。
普通。
雨宮、少しだけ見る。
すぐ視線外す。
雨宮(……関係ない)
昨日のこと。
特別じゃない。
ただの一日。
そう整理する。
青木、後ろ振り向く。
青木「なぁ雨宮」
雨宮「うん」
青木「この問題わかる?」
プリント差し出す。
雨宮、受け取る。
見る。
簡単。
雨宮「ここ違う」
指差す。
青木「マジか」
少し近い。
距離。
昨日と同じくらい。
雨宮、ほんの一瞬止まる。
でも。
普通に離す。
雨宮「そんな難しくないよ」
青木「いや俺には難しいんだよ」
軽く笑う。
終わる。
何も起きてない
なのに
雨宮
さっきの距離。
昨日と同じ。
でも今日は
“寄ってない”
雨宮
小さく。
説明が合わない。
ーーー
放課後。
雨宮、一人。
廊下。
立ち止まる。
雨宮(……寄ってない)
今日は何も揃ってない。
偶然も少ない。
でも。
距離は縮まってる。
青木、普通に話しかけてくる。
自分も、普通に返してる。
雨宮「……」
考える。
出てくる答え。
「昨日の影響」
雨宮(……繋がってる)
そこまではいい。
でも。
その次。
雨宮
止まる。
一番触れたくないところ。
雨宮(……自分が選んだ、ってことになる?)
沈黙。
すぐに。
雨宮「……違う」
強めに。
否定。
でも。
昨日。
振り返った。
戻った。
あれは
“自分でやった”
雨宮、目閉じる。
雨宮
小さく。
ふと青木がたまに使っているセリフだと気づく。
……影響。
雨宮
全部説明できるはずなのに
一個だけ
説明できない。
青木。
後ろから。
青木「帰る?」
雨宮、目開ける。
振り向く。
青木、普通の顔。
何も知らない。
雨宮「……うん」
少しだけ間。
雨宮「帰る」
一緒に歩く。
前と同じ距離。
でも
少しだけ違う。
歩きながら。
雨宮(……戻れない)
小さく。
否定はできる。
でも。
なかったことにはできない。




