第十四話 ちゃんと
放課後。
雨。
強め。
昇降口。
人、少ない。
青木、立ってる。
傘、忘れた。
青木「……最悪」
スマホ。
電池、3%。
青木「……終わった」
ため息。
外。
雨、強い。
青木、しばらく見る。
……帰れない。
青木「……」
少し考える。
青木(小さく)「……待つか」
動かない。
ーーー
数分。
誰も来ない。
静か。
青木「……寄ってねぇな」
苦笑。
いつもなら
* タイミング合う
* 誰か来る
* 何か起きる
でも今日は
**何も来ない**
青木「……」
少しだけ顔上げる。
雨、強いまま。
青木「……まぁいいか」
カバン、持ち直す。
青木「行くわ」
外に出る。
雨、直撃。
青木「冷たっ」
そのまま走る。
びしょ濡れ。
青木「……バカだろ俺」
笑う。
少しだけ。
ーーー
角。
曲がる。
角の本屋から出てきた。
雨宮。
傘、さしてる。
青木「……は?」
雨宮「うん」
青木「なんでいるの」
雨宮「寄り道」
青木「そうなんだ……」
雨宮、少しだけ見る。
青木、びしょ濡れ。
傘、少し寄せる。
青木「……」
青木「……ありがと」
一歩、近づく。
傘の中。
距離、近い。
静か。
雨の音だけ。
青木「……寄ってた?」
雨宮「今日は寄ってないね」
即答。
青木「だよな」
青木、少し笑う。
青木「何も来なかった」
雨宮「うん」
青木「なのにこれかよ」
雨宮「青木が来たからね」
青木「……」
さっき。
待たなかった。
帰るって決めた。
走った。
ここに来た。
青木「……そっちかよ」
小さく。
雨宮「どっちもあるよ」
青木「……めんどくせぇな」
雨宮「うん」
青木、少しだけ笑う。
沈黙。
でも。
さっきまでと違う。
“自分で寄せた”感じがある。
青木「……なぁ」
雨宮「うん」
青木「俺さ」
一瞬、止まる。
でも。
今度は止まらない。
青木「もうちょい試すわ」
雨宮「うん」
青木「ちゃんと」
雨宮、その「ちゃんと」を聞いた瞬間。
少しだけ、まばたきが止まる。
一つだけ、ズレる。
“観測側の目”が一瞬だけ外れる。
青木の方を見る。
雨に濡れたまま立っているのに、もう「状況」にいない。
“選びに来ている側の目”をしている。
雨宮
雨宮(条件を揃えに来てる)
雨宮、目をそらす。
ほんの少しだけ呼吸が遅れる。
雨の音は変わらないのに、距離だけが変わった気がする。




