第十二話 未定
放課後。
教室。
静か。
机。
一枚のプリント。
端、少しだけはみ出してる。
風。
ヒラ、と揺れる。
廊下。
青木、歩いてる。
青木「……」
足元。
紙、落ちてくる。
足、止まる。
少しだけ振り返る。
青木「……」
教室、覗く。
誰もいない。
青木「……」
手、伸びる。
青木「……」
持ち上げる。
“進路希望”
名前。
見覚え。
視線、下。
“未定”
その横。
“変更”
青木「……」
少しだけ、息止まる。
青木「……関係ないだろ」
小さく。
近くの机に戻す。
一歩、下がる。
止まる。
青木「……」
青木「……関係ないなら」
青木「……あえて巻き込まれなくていいだろ」
でも。
視線、戻る。
青木「……」
ため息。
青木「……めんどくせぇ」
もう一回、取る。
青木「……ったく、忘れるなよ」
廊下。
足音。
少し早い。
青木「……」
青木「……俺が行ってるんじゃない」
青木「……行かされてる」
間。
青木「……でも」
ほんの少しだけ。
青木「……自分の意思で止まれたよな……さっき」
ーーー
階段前。
人影。
ちょうどいた。
青木、止まる。
プリント、見る。
顔、上げる。
青木「……」
青木「……あの」
声、出る。
相手、振り向く。
少し驚いた顔。
青木「……これ」
差し出す。
相手「……あ」
受け取る。
少しだけ気まずい。
相手「……ありがとう」
青木「……別に」
沈黙。
終わりそうになる。
でも。
青木「……それ」
言葉、出る。
青木「……大丈夫か」
相手「……え」
青木「……いや」
青木「……なんでもない」
引こうとする。
相手「……未定」
止まる。
相手「……にしただけ」
小さく。
青木「……」
青木「……変えたのか」
相手「……うん」
間。
青木「……なんで」
相手、少し困る。
相手「……なんとなく」
青木「……」
その言葉。
少しだけ引っかかる。
青木「……なんとなく、か」
間。
青木「……それでいいのか」
相手「……」
相手「……わかんない」
小さく。
青木「……」
言葉、探す。
でも。
青木「……じゃあ」
青木「……決まるまで、そのままでいいんじゃねぇの」
言葉、出る。
青木「……無理に決めるよりは」
一瞬だけ、真面目。
すぐ逸らす。
青木「……知らんけど」
相手、少しだけ笑う。
ほんの少し。
相手「……ありがとう」
青木「……別に」
沈黙。
でも。
さっきと少し違う。
相手、去る。
青木、残る。
青木「……」
小さく息吐く。
青木「……なんだよこれ」
手元、空。
青木「……そんな役目なんて欲しくなかっただろ」
でも。
青木「……流れが来たな」
間。
青木「……なんで」
少しだけ。
青木「……俺なんだよ」
ーーー
昇降口。
雨宮、いる。
青木、近づく。
青木「……来た」
雨宮「うん」
青木「……欲しくないやつ」
雨宮「うん」
青木「……でも」
少し考える。
青木「……来た方がよかったかもしれない」
間。
雨宮「うん」
それだけ。
青木「……なんでだよ」
雨宮「さあ」
青木「……」
青木「……めんどくせぇな」
雨宮「うん」
少し歩く。
並ぶ。
青木「……」
青木「……別に俺じゃなくてよかったよな」
雨宮「うん」
青木「……じゃあなんで」
雨宮「そこにいたからでしょ」
青木「……」
青木「……雑すぎるだろ」
雨宮、少し笑う。
雨宮「でも、それで足りる時もあるよ」
青木「……」
青木「……足りてたのか?」
雨宮「さあ」
歩く。
夕方。
光、長い影。
青木「……」
小さく。
青木「……なんとなくでいいのかもな」
誰にでもなく。




