第5話 悪魔と娘と父親と
本当に病院だ。病院の入り口に立っている。夕方。日が沈む。時間は21時頃だ。ノールボッテンからはだいぶ南に来たから日は沈む。
後ろからにょきっとメフィストフェレスがやってくる。
「ここか。」
「そうだ。」
玄関から入り、入院病棟に移動する。
・・・しかし、目立つ。メフィストフェレスの衣装が。
しかし、それに触れると恐ろしい目に合いそうなので、触れずに進む。
場所は三階。エレベーターに乗り、そのまま進む。
44号室。
ドアを開けると、娘が眠っていた。
別に何本ものチューブにつながってるわけじゃない。ただ、そこに寝ていた。
メフィストフェレスが指を指すと、娘が宙に浮き、服が勝手に脱げていく。
「お、おい。」
止めようとする私の言葉を無視し、そのまま続け、娘は裸になった。
「・・・これだ。」
私は娘の肩、足、胸から突き出した金属の結晶を指さし、メフィストフェレスに説明する。
「調べたところ、あれは銀だ。本物の銀。元素番号47。AG。」
浮いていた娘がゆっくりとベッドの上に戻される。
「骨から生えている。原因は不明。あらゆる検査で異常は見つけられない。銀の元素を食べ物や飲み水から摂取してるわけじゃない。
どう計算しても銀がここまで塊となって成長する量を摂取してない。明らかに物理法則を無視している。」
「黙れ。」
メフィストフェレスが言葉を遮る。
目を爛爛と光らせ、裸の娘を凝視する。
顎に手を当て、ふんふんと興奮した様子でせわしなく観察している。
「どうだ、治せるか?」
「わからん。」
恐る恐る聞いてみると、即答される。
「わからないって…」
「わからない!」
メフィストフェレスが満面の笑みになる。
「知らない!オレの知らない事!!面白い!面白いぞ!!!!」
どうやら、知らないことが嬉しいらしい。
「もうお前邪魔だから出てけ。」
「いや、娘と一緒にいる。」
メフィストフェレスはそれを無視し、しっしと手を振って、俺は魔法の力でつまみ出される。
もはや俺にできることは無い。俺はやれるだけのことをやった。
待つ。病院の待合室で。気が付くと俺は眠っていた。
目が覚めると朝の9時。寝過ぎだ。
部屋を覗こうとするが、開かない。中からは、工事のような音が聞こえる。
・・・心配だ。しかし、もう悪魔に頼るしかない。俺は一度家に帰り、飯を食い、風呂に入り、寝た。
次の日、その次の日も扉は開かなかった。
流石に不安が勝ち、ドアをバールでこじ開けようかと思ったとき、
扉があいた。
中からは、疲れ果てたらしい、ボロボロのメフィストフェレスが出てきた。
「どうだ、治ったか?」
俺はメフィストフェレスに聞く。
「ダメだ。」
たった一言、切り捨てるように答えるメフィストフェレス。
・・・ああ、ウソだろ。悪魔でもダメって、それはもうなんなんだ。どういう病気なんだ。
メフィストフェレスはこれまでの経過を説明する。
「なんだこりゃ。どうなってんだ。遺伝子レベルを超えて、原子レベルで解析したが、何の異常も無い。
原因がわからない。まるで、無から銀の結晶が成長していってる。マジでどうなってんだこれ。
完全に物理法則を無視している。それどころか魔力の作用すら超越している。呪いなのか魔法なのかすらわからん。」
メフィストフェレス、恐らく悪魔の中では博士のような立場なのだろう。
その悪魔がさっぱりわからない。とはどうなっているんだ。
「こうなったらもう最後の手段。」
おっ、と思った。まだ希望がある。いや、最後の手段。それはまさに、やりたくないから最後の手段になるわけで・・・
一抹の不安を感じながら俺はメフィストフェレスに聞いた。
「それは、一体なんだ。」
メフィストフェレスは答える。
「こいつを悪魔にする。」




