第13話 終焉
ガブリエル「全く。嫌になるね。自分の弱さが。」
ミカエル「同感だな。」
ガブリエル「はー、お前と同意見とは、珍しいね。」
卵は半分ほど削られ、食べかけのリンゴのような形になっている。
殻が破壊され、中身は半透明上のガラスのような赤い結晶。
ルビーが砕けたような断面。
ラファエル 海に擱座 沈黙
ウリエル 大破 沈黙
ガブリエル 左手切断 右足首損傷 腹部損傷貫通
ミカエル 下半身全損
天使の方が分が悪い。
ガブリエル「卵一つにこのザマとは。いや、認めよう。邪神は恐ろしい。恐ろしいよ。」
ミカエル「もはやこの空間ごと消滅させるしかない。」
ガブリエル「ダメだ。人間を巻き込む。」
ミカエル「それ以外に選択肢はないだろう。我々が負ければ、この宇宙は無に還る。」
ガブリエル「・・・」
選べない。選ぶ選択肢が無い。選ぶ自由が無い。選ぶ決定権が無い。
弱いとはそう言う事だ。圧倒的な現実に、自らの意思よりも、現実を優先せざるを得ない。
それが弱さの本質。
機械のミカエルの口が大きく開く。
ミカエルの最大破壊力。絶対消滅歌。空間そのものを消滅させる。
しかし、これは宇宙を縮小させることを意味する。その影響は計り知れず、
宇宙そのものが連鎖的に崩壊する可能性すらある。
だが、邪神を滅するにはもうこれしかない。
邪神が完全に復活すれば、宇宙は滅ぶ。
機械のミカエルの目が光る。ガチガチと体の装甲が展開していく。
その姿は、まさに、光り輝き、白き羽を広げる天使そのもの。
絶対消滅歌を発しようとしたその時、
ガブリエル「まて、見ろ。」
卵が、ひび割れていく。殻ではなく、卵そのものが。邪神の目から透明な液体があふれ出す。
泣いているように見える。苦しんでるようにも見える。
ガブリエル「まさか、やったのか。あいつら!?」
ミカエル「不味いぞ、爆発する!」
卵が突然光りだす。真っ白な光。
それが急激に強くなり、
それと同時に、卵の周りを、黒い線が取り囲む。
サタンの結界だ。
さらにミカエルとガブリエルが同じく結界を貼る。白い線が黒い結界の上を覆い隠す。
何重にも展開された結界の中で、卵が一瞬、点の様に小さくなる。
そして爆発。結界は物理衝撃を中和し、無影響化するのが限界で、激しい光が辺りを真っ白に染める。
太陽系どころかそれ以上の範囲の星々が吹っ飛ぶほどの威力を、
ミカエル、ガブリエル、そしてサタンの結界が食い止める。
人間の時間にして1秒、時計の針が一つ進むだけの時間。
たった1秒で地球が滅ぶか滅ばないかの攻防が行われていた。
当人たちは1000年分の力を一瞬で使い果たしたような疲労。
爆発の勢いが治まると、ミカエルとガブリエルは、空から海へ落下し、沈黙した。
全ての力を使い切ったのだ。
機能停止する四大天使。
卵が消滅したことで、世界中の邪神たちの鼓動は停止。
人間界は、何も知らないまま、日常が過ぎていく。




