第12話 炎
体が軽くなる。冷たさも無くなる。
これが死ぬってことか。明るい。あたたかい。
全身に血が巡るのを感じる。
眼を開けると、メフィストが居た。
俺はメフィストに起こされていた。
「起きろ。寝てんじゃねぇ。殺すぞ。」
「・・・あ?・・・お前、なんでここに。」
「いいか、帰りの分の力を全部使い切るから、失敗したらお前もオレもここで死ぬからな。」
「どうして戻ってきた。」
「喋ってる暇は無い。」
パン、と両手で手を打つ。すると、吹雪が消えた。
説明してる時間も無いらしい。
「方向はどっちだ。」
「あそこだ。」
声が聞こえる方向を指さすと、そこにはかすかに、光モノがあった。青い光が点のようになっている。
ものすごく遠いのか、それともものすごく小さいのはわからない。
メフィストは俺を持ち上げる。手をわきの下に、ちょうど、猫を掲げるような形で、
何をするんだ、と思った次の瞬間。
投げた。俺を。魔法とかじゃなく。力づくで。
まっすぐに飛ぶ俺。
飛んでるよ。
おお、すげぇ飛んでる。まっすぐに。
ずおおおと光るものが近づいてくる
これどうやって止まるんだと思ったら、
ちょうど光るモノの前に落ちた。
当然すごい勢いで落ちるから何度も転がり、バウンドし、体はボロボロになったが、
本当にちょうどぴったりの場所で止まった。
メフィストは出会ったとき、延々計算式を描いていたが、これも計算してやったのだろうか。
激痛を耐え、立ち上がる。
炎だ。青い炎。
その炎から、娘の声が聞こえる。パパと、
時間が無い。ためらう時間もない。これが本当に娘の声かもわからない。確証が無い。
しかし、俺は何も考えず。 その炎を抱きしめた。
熱い。当たり前だ。炎なのだから。俺の服は燃え、皮膚は剥がれ、体がどんどん炭になっていく。
死ぬほど痛い。氷の針で全身の神経をぶっ刺してるようだ。さっきまで冷たさに苦しんだが、
今度は熱さに身を焼かれている。
これが本当に正しいのかわからない。本当は、愚かな行為かもしれない。だが、もしがあるなら、
やるしかないんだ。もし、本当に娘が俺に助けを求めているのなら。
既に肘から先が炭化して、崩れ落ちている。もう目も見えない。
痛みを耐えるため、歯を食いしばるが、ばきんと歯が割れた音がした。
それでも、ただ、これは娘だと信じて、抱きしめるだけだ。
それしか、俺にはそれしかできないから。
おお、ハルよ。私の娘。愛している。




