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隣人は甘く囁く~透明な魂と祈りのうた~  作者: 奏 みくみ
『だから、駄目だと言ったのに』
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『だから、駄目だと言ったのに』8

 ***


 家に戻ってから、私はツイッターを開き、

『Starry Eyes』を検索してみた。


 その単語を入力すると検索候補に


『シングルマザー』

『メジャーデビュー』

『育児放棄』


 なんて文字が現れる。


「うわっ……マジか」


 思わず声が出た。


 『育児放棄』は検索出来なかった。見るのが怖かったからだ。この字の並びで、みんなの呟き内容は想像出来る。きっと、嫌な気持ちになるだけだろう……。


 記事を読んだ時より夢中で優海さんの話を漁っている自分に後ろめたさを感じつつ、でもこれは彼女を探す為に必要だし……と、私は自分に言い訳する。――人差し指を上下に動かしながら……。


 軽く調べるだけのつもりだったのに、気付けば小一時間経っていた。


 キリがないので、マグカップの中身が無くなったところで区切りをつける。


 残った印象は「朋絵が言ってた話の方が多いな……」。


 優音君の名前と詳しい情報は、まだ世間に漏れていないようだった。


 でも、最近は〇〇砲なんて言って掴んでいる話を小出しにするくらいだ。来週はどうなっているか……。


「……」


 誰かの呟きで優海さんが見つかるわけない。自己嫌悪がこれ以上大きくなる前にやめよう――。


 気持ちを切り替えようと、今度はグーグルでシーグラスの効果を検索してみることにした。


 奇跡の出会いを引き寄せる「運命の石」


 生命力を高める効果がある。


 今の自分に足りないもの、欲しているものが何なのかを知りたい時はお守りとして身につけるのも良。


「おお~……なるほど」


 浄化方法も分かった。日光浴、月光浴、塩、さざれ石どれでも良いらしい。


 よし。今度、パワーストーンショップにさざれ石を買いに行こう。


 ミツキさんの言うとおり、この石は今の私にピッタリだと思う。


「よろしくお願いします」


 私は柏手を打ってお礼をした。



 朝目覚め、スマホを見た私はげんなりした。また零さんからライン来てる……。


 しかも、丑三つ刻ってなんでだ。嫌がらせか! 熟睡してて良かった!


 小刻みな意味無しメールほど疲れるものはない。この前みたいなダラダラしたやつだったら断固拒否しなければ。


【俺の夢見てる~?】


「……」


 見てません。その前に寝てると知っていてこの送信はなんなのか――。


【色々言いたいことあるけど、今は要件だけにすんね】


(今だけじゃなく普段からそうであって欲しいんですけど)


 目を擦りながらあくびをした。昨日ツイッターを見続けたせいか、いつもより目がゴロゴロする。


 また出たあくび。……の、開いた口が塞がらなくなった。


【優海ちゃん見つけたぜ】


「――はっ⁉」


【でも問題発生~】

【ガキに会わせてやるって言ったら、拒否されちまった。ウケる】


「なっ⁉ いや、笑ってる場合じゃないし!」


 あらいぐまキャラのテヘペロ顔スタンプに絶叫。起き抜けで喉が乾いていたから、声は半分掠れ痛みが残る。


【ま、もう一度話してみるけどさ。あのコ色んな所ぐるぐる歩き回っちゃうんだよねぇ。今はどこにいるのやら】

【花音ちゃんさ、今日あの店来てくれる? 密会しようぜ】

【作戦会議。時間は昼にラインする】

【じゃ、おやすみ!】


 最後の一言が午前二時三十分ちょうど。まさに丑三つ時メールだった。一方的で、勢いが勢いだけに呆然とするしかない。


「…………」


 ちょっと待ってよ……どういうこと? 拒否された?


 もう一度、いや二度、読み返す。


 でも何度読んでも、私が思っていた事とかけ離れた事実がそこに書かれていた。


 迷子の子供と彷徨う母親。


 会いたい子供と会いたがらない母親。


 ――どうして……?


 疑問だらけだ。


 だけど、ここで一人考えていても始まらない。零さんに会えばもう少し詳しく聞けるのかな……?


(結城さんにも連絡した方がいいか………いや、まてよ)


 結城さんの連絡先って?


 私、携帯の番号知らないよな。そもそもあの人スマホ持ってるの? 


 いつもタイミングよく現れるから、電話とか考えたこともなかったよ。


「もしや……念力を……送れと……?」


 つい、ごくりと喉を鳴らしてブレスレットを見てしまった。


 電波じゃないけど、あの人達に繋がると考えられる手段は、これしかない。ほら、双子と縁が出来たというし。


 でも……。


 いくら部屋には自分だけとはいえ、ブレスレットに語りかけるというのは……無線ごっこや呪文を唱える魔法少女的なものを連想してしまうというかなんというか……。


「……」


 考えた末、昨晩と同じく柏手を打って拝んでおくことにした。


 多分これでもいける。いくと信じたい。頼む、いってくれ――!


 

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