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『貴女は透明』7


 ***


「…………やってしまった……」


 午前九時二十分。


 時計を見て、ベッドの上で頭を抱えた――。


(私……前も同じ事してなかったっけ?)


 あの時はお酒で失敗したけど、今回は大寝坊。ううん。大を三個くらい付けてもいい。


 朝は朝でも、翌々日の朝はヤバイでしょ!

 丸一日寝てたって? 一回も起きずに?


「あああぁ……やっちまった」


 朋絵と田所さんの名前がズラッと並んでいる着信履歴と、ラインの未読数に驚愕した。


 朋絵朋絵朋絵、田所さん、朋絵朋絵朋絵朋絵、田所さん、朋絵、田所さん田所さん、朋絵…………


 息継ぎせず読んだら、何かが召喚出来そうなレベル――そんなこと言ってる場合じゃない。


 すぐ朋絵に電話した。


『花音っ! 大丈夫なのっ!?』

「うん。ごめんね……寝てた」

『はぁ!? 寝てた!?』

「いや~、びっくりしたよ。起きたら一日過ぎてるんだもん」

『びっくりしたのはコッチだよっ!!』


 キン! と高音が耳に響く。


『どれだけ心配したと思ってんの!? 電話は繋がらないし、既読にならないし、ハートも来ないし!』

「ご、ごめん……」

『忌引で二日くらい学校とバイト休むよーって伝えようとしたら、まったく連絡つかないんだもん。まさか、花音にも何かあったんじゃ……って、もうホントすっごい心配したんだよ……』


 興奮していた朋絵の声が、どんどんか細くなっていく。


 ……朋絵が怒って泣きそうになるのも当然だ。


 忌引で休むと親友に伝えようとしたら、その相手がぱったりと音信不通になるなんて。


 タイミングの悪さにも程がある。


『体調とか大丈夫なんだよね?』

「全っ然! 大丈夫! 爆睡してただけ」

『そっかぁああ……良かった』

「本当に申し訳ない……。田所さんにも連絡しないと」

『私が大騒ぎしちゃったからなぁ。昨日の夜、花音の家にも行ってくれたんだよ』

「エッ!?」

『お互い田所さんに迷惑かけちゃったねぇ~。私もあとで電話しよ。じゃあね、花音。花音生存確認アプリ、ちゃんと稼働させてよ?』

「花音生存確認アプリ」


 友にもそう認識されていたか――。


(そうだ、忘れない内にって思ってたのに、結局そのまま忘れた)


 電話を切ってから思い出した。


 で、丸一日以上。習慣が途絶え、音信不通。


 心配されて当然だわ。


 田所さんの携帯は、何度かけても留守電だった。


 午前中にバイトが入っているのか、夜勤明けで眠っているのか……。


 数回留守電のガイドを聞いた後に「花音です。ご心配おかけしました。また午後にかけ直します」とメッセージを残す。


(シャワーを浴びたり色々していたら、午前中の授業は間に合わないかも……)


 寝坊で遅刻・サボりなんて初めてだ――。


 時計を見て、私は溜息を吐いた。


 

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