『必然に決まっているでしょう』3
書店の最寄り駅から二駅。由井まち駅は快速も急行も止まらない駅だけど、高校や専門学校、塾、予備校などが多いので、夕方から夜は駅も結構混雑する。
文化祭さながらの構内をくぐり抜け、私達は駅から少し離れたファミレスに入った。
バイト先を出た時は「寒い!」と言っていたのに、今はじんわりと背中に汗を感じる。リュックを下ろしながら、冷えて風邪ひいたら嫌だなぁ……と思った。
「駅前のファミレスは激混みだったけど、やっぱりこっちは空いてるな」
「田所さん、よく来るんですか?」
「高校生の時はしょっちゅう来てた」
「え~高校生で? お金持ち~」
朋絵がテーブルにメニューを広げる。そう言うのも無理ない。ファミレスの中でも、このチェーン店は他店より価格がやや高めで、私も朋絵も自然と選択肢から外しがちなのだ。
大学生の私達がこれなのに、田所さんは高校生から常連とか凄くないか? 私、高校生の時なんてファーストフードだって贅沢だったよ……。
「田所さんの奢りだし、ご飯もデザートも奮発しようっと!」
「朋絵……奮発するのは田所さんだからね?」
「遠慮しないでいいよ二人とも。俺の奢りで食事なんて、最初で最後かもしれねーぞ?」
そう言って田所さんは笑う。
「すごい……田所さんが言うと冗談に聞こえないよ。だよね、田所さんの給料日と休日と私達の予定がバッチリ合うなんて、今後起きる気がしない」
「朋絵っち。そこはちょいちょい声かけてくれれば、俺頑張る……頑張るから仲間外れにしないで。デザート二品頼んでいいから」
「おお! 太っ腹!」
メニューを見ている二人が微笑ましくて、自然と頬が緩む。
働いてるところしか見たことない田所さんのプライベートな姿は新鮮だった。ちっとも大学生っぽくない彼が、私達と一緒にファミレスでご飯を食べながら笑っている。
そんな他愛もない事に私はどういう訳か安心してた。仲は良かったのにどこか距離を感じてた人だったので、自分達とやっと打ち解けてくれた様な気がして嬉しいのかもしれない。
最初で最後なんて冗談言わず、これをきっかけに……となれば良いな。田所さんは忙し過ぎる人だと思う。
――そこでふと疑問がわいた。全くもって余計なお世話な話なんだけど……。
田所さんって、なんでそんなに沢山のバイト掛け持ちしてるんだろう?
私も色々事情があってのバイト生活だけど……田所さんは私以上の苦労人なのかな……。
――聞いてみたい気持ちがあった。でもそれは下世話でしかない話で。
(それに……)
なんでそんな事を聞きたいのだと問われたら、私は正直に答えられる自信がない。
(だって……)
「こちらセットのスープとサラダです~。Aセットは……」
「あ、俺でーす」
注文後あっという間に出てきた定番品。そこで一旦話は終わり、私も思考を止められた――。




