『油断しないで』7
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日に日に季節は進んでいく。昨日より今日、今日より明日。
毎日の変化は本当に気付かない程ゆっくりだけど、でも、やっぱり時間は進むものなのだ。
鮮やかな緑の世界から紅や黄、そこから風が冷たくなって寂しさと白の季節。寂しい季節は感傷的になるからか、私はあまり好きではない。
いつまでも明るい温度に包まれていたいな……と思うせいか、今の季節は感覚が鈍くなるみたいで、僅かな温度変化に対応できなかったりで風邪ひく事も多々あり。
――だからなのか? いや、そういうの関係あり?
最寄駅に着いて外に出てみたら、私は「あれ?」と思った。改札口にある時計を振り返ってしまったくらい。
思っていた以上に外は薄暗かった。
まだまだ日は長いなと思ったのは数日前。たった数日で、日ってここまで短くなるもんなの?
それともここ数日、私はあまりにもボーっと過ごしていたのだろうか……。
とにかく、外は日暮れ。それは想定内。
夕陽がビルの谷間に消えていて、オレンジ色はほとんど見えない。紫がわずか、ほとんど濃い藍色。
これは予想外。
むむ……、と思いつつ足早に駅前通りを歩いた。
ここまで来て引き返すのもなんだし。気持ちが行くつもりになってる分、そういう気も起きない。
私はパンが入った紙袋を持ち直し、真っ直ぐ前だけ見て。歩く。目的地まであと少し。
大通りにある数店のカフェのテラス席には、キャンドルやアンティークデザインのランプが灯っていたけど、そこに座るお客は二組しかいなかった。
それでも大通りを行く人はまだまだ多い。
いつものように見慣れたカフェの間の細い道へ入って。そこでふと足を止めた。
朋絵とここへ来た時の事を思い出したのだ。
あの時の不思議な経験。変わっていた景色。
「まさかね……」
また変わってたら? なんてよぎる考えに、あんなに早かった歩く速度が急にペースダウンする。
初めてここへ来た時みたいに周りを気にしながら小路を行けば、考えは杞憂だったと気付く。
いつも通りの景色がそこにあって、違う事と言えば、昼間は開いてるのか閉っているのか分からなかった小さなお店数店の看板や窓に明かりがあった事。
何処かのお店からは、賑やかな笑い声が聞こえてきていた。レストランか今流行のバールみたいな所なのかな?
いかにも居酒屋とか、路地裏にありがちなさびれたスナックとか、そういった雰囲気の店はこの辺には無いから。
あるのは外側からは一瞬何のお店か分からない様な、とにかくお洒落感満載なお店ばかり。
もしかしたら、「この辺りはそういう雰囲気でまとめましょう」っていう地域の決まりでもあるのかもしれない。
石畳の道を行きながら考えた。
昼間はとても明るく真っ白なイメージがある場所だけど、夜になると真逆のイメージ。
ぽつりぽつりとある背の高いガス灯。ぼんやりとしか辺りを灯さないから、これで霧でも出てたら、さながら十九世紀末の霧煙るロンドンの暗い夕闇といったところだ。
昼間との差が激しすぎる。
静かな薄暗い世界に背中がスッと寒くなった気がした。
逢魔が時……だっけ? こんな時間帯の事をミステリアスっぽく呼ぶのって。




