第2話 神能テストと神武顕現の儀式
俺らは教室から出て、神代学園最大の校庭へと移動した。校庭には他クラスも集まっており、みんなきちんと整列している。
「ほら1年A組も早く並びますよ」
クロウ先生の指示で俺らも2列で並んだ。
「カイが後ろかよ。静かにしてろよ」
「お!レオンお前が前かよ。へいへい静かにするよ」
俺ら2人が話していたらクロウ先生が前に出てきた。
「うげ〜こんなに1年生いるのか〜大変だなぁ。まぁいいや、君たちの学年主任になりましたクロウです。1年A組の担任をしています。みんなよろしくね〜」
クロウ先生が学年主任なんて初めて知った。
「なぁレオン、クロウ先生が学年主任だってよ。大丈夫なのかな?」
「俺も不安なんだよね。あの人なんかめんどくさがりやっぽいし」
「それではみなさん、これから神能テストと神武顕現の儀式を行います。ですがその前に、みなさんは知っていると思いますが、一応確認しておきたいことがあります。」
クロウ先生は話を続ける。
「神には主に5つの力があります。[神能]、[神技]、[神武]、[神域]、そして、[神力]です。神能とは、生まれ持ったそれぞれ固有の能力であり、その神の本質を表す力のこと。神技は2種類に分かれており、神能を使った〈神能神技〉と、誰でも覚えれば使える〈共通神技〉があり、まぁ言うなれば必殺技のようなもののこと。神武とは、神それぞれによって形が変わる神専用の武器のこと。神域とは神能を極めたその先にある極致のこと。そして最後に、最も重要なのが神力です。神力とは、神能や神技、神武、神域などを扱うために必要な神のエネルギーです。神力が尽きればそれらの力を使うことができません。みなさん理解していますね?」
「はい!」
返事をしたのは俺の後ろにいるカイだった。
「返事をありがとう、まぁみなさんへの確認も済んだことだし、そろそろ始めますかね。各クラスの担任の先生方よろしくお願いします。それでは」
クロウ先生の話が終わり、こちらへとやってきた。
「いや〜やっぱり大勢の前は緊張しますね。カイくんだったかな?返事ありがとうね」
「俺にとって返事は当たり前ですから!」
カイは少し誇らしげに胸を張っている。
「さて、それではA組のみなさん移動しますよ」
俺たちはクロウ先生の後ろについていき、校庭の端の方に集まった。
「それではこれから、神能テストを始めます。と言っても、みなさんあまり緊張せずに気楽に受けてくださいね。内容としては、神能そのものを見るわけではなく、神能をどれだけ扱えているかを見るテストです。そのため、神能を使った神技を使ってもらいます。簡単なやつならみなさんできるはずなので簡単でしょう。」
「クロウ先生!それ先生が危険じゃないですか?」
クラスの誰かが質問する。
「大丈夫ですよ、あなたたちのレベルなら私にかすり傷もつきませんのでね」
「おいおい、それは舐めすぎだぞ先生よ」
何人かの生徒を押し退けて、ガタイのいい神の子が出てきた。
「おや、君はアレスの子かな?」
「そうだ!俺の名前はグレン=アレス!戦いを司る神アレスの子だ!神能は《戦》だ!」
「では、グレン君から神能テストを始めましょうか。いつでもどうぞ?」
「舐めてると痛い目見るぜ!?神技《闘気解放》」
グレンの体が赤いオーラを纏う。そして、クロウ先生との距離を一気に詰め、殴った。
鈍い音と共に砂埃が舞う。砂埃が晴れると、そこにはグレンの拳を右手の人差し指で止めているクロウ先生がいた。
「グレンくん威力はなかなかいいですね。ですが、まだ神能の扱いが少し雑ですね。神力の流れをもっと安定させましょう。」
俺ら生徒はざわつく。
「な、なんだと……!?俺の今出せる全力の攻撃だったのに……」
1番驚いているのはグレン君だった。確かにすごい威力の攻撃のようだった。先生が立っている地面は凹んでいた。
「まぁ攻撃を受けるのにもいろいろとコツがあるんですよ、では次の人どうぞ。」
その後も多くの生徒がいろいろな神能を使った技を放っていく。炎に風、土などなど。だがクロウ先生は本当に傷ひとつない。そして、次にカイの番へとなった。
「カイ=ポセイドンです!神能は《海》です!」
「はい、ではどうぞ」
「神技《水流放出》!」
カイの攻撃をクロウ先生はしっかりと受けながら言った。
「カイくん、素晴らしいですね!まだ15歳でこの威力なら今後が楽しみですね。ですが、神力の消費が激しすぎます。長期戦を意識することが大切ですよ。では次の方どうぞ」
カイは神技を止めて、俺の方へと近づいてくる。
「あの先生化け物みたいに強いぞ!」
「やる気なさそうだったのにめちゃくちゃ強いな。」
カイの番が終わり、また数人の生徒がやった後、次はヒマリの番になった。
「ヒマリ=アマテラスです!神能は《太陽》です!」
「はい、ではどうぞ」
「神技《陽光》!」
「ヒマリさんも素晴らしいですね!とても安定した攻撃です。ですが、もう少し神能へのイメージを強く持てば、威力も伸びるでしょう。では次の方どうぞ」
「ありがとうございます!」
ヒマリもこちらに近づいてきた。
「やった褒められた!」
「ヒマリ良かったな」
俺はそう声をかけた後、先生の前に立った。
「レオン=ゼウスです。神能は《雷》です。」
「おぉ君がゼウスの子供ですか、これは楽しみですね。ではどうぞ」
生徒のみんながざわつく。
「あの子だよゼウス様の子供!どんな神技放つのかな?」
「ねー楽しみだね!すごく強いんでしょうね!」
俺はそっとため息をつく。そして、心を落ち着かせ、小さな声で自分に言い聞かせる。
「大丈夫、大丈夫、もうあんなことにはならない。練習してきたじゃないか。震えるな。耐えろ。クロウ先生なら絶対に怪我しないはず。大丈夫だ俺。よし」
俺はそっと手をクロウ先生に向けて構える。
「神技《雷撃》!」
…………しかし、何も起きなかった。やっぱりダメだった……
「ふむ……なるほど。レオンくん、大丈夫ですか?」
「はい……大丈夫です……」
「おいおいおい!あの神々の王ゼウスの子が神技の一つもまともに放てないのかよ!笑えるぜ!」
神能テストを最初に受けたグレンが俺に対して煽るように言ってくる。
「ねぇ、なんか期待外れじゃない?ゼウス様の子供だからすごいのかと思ったけど、なんか大したことないっていうか、弱すぎじゃない?神技すら放てないなんて」
俺はこの場からすぐに逃げ出したいと思った。
すると、
「おいおい、オメェら!レオンを馬鹿にしていいのはこの俺だけだ!レオンはすげぇんだ!今はなんか神能を上手く使えてないけど、昔はめっちゃ強かったんだぞ!」
カイが俺を庇うようにして、みんなに言う。
「まぁまぁみなさん、静かにしましょう。たまたま調子が悪かっただけなのかもしれませんし。」
クロウ先生が全体に対して言う。
「では、みなさんこれで神能テストを終わります。次は神武顕現の儀式を行うため、教会へと向かいましょう」
俺ら生徒はクロウ先生についていき、教会へと向かった。
「レオン、平気か?やっぱり神能使えないんだな」
「カイか……あぁ、やっぱり誰かに向けて撃とうとするとどうしてもダメなんだ……神以外に向けてなら撃てるんだけど」
「そうなのか?それを来る時に俺に言ってくれればよかったのに。まぁいいや、ちょっと待ってろ」
そういうとカイは先頭のクロウ先生のところに走って行った。
数分経って帰ってきたカイは笑顔だった。
「レオン!明日以降、クロウ先生が時間とってお前の神能のやつをもう一回見てくれるってよ!次は誰かに向けてじゃなくて、物に対して撃ってみろよ。それを見てくれるってさ」
「本当か?ありがとうカイ。俺のために」
「だぁーかぁーらぁ、これは俺のためだからな。」
俺らが話していると教会へと着いた。クロウ先生が教会の扉を開け、中に入っていく。それに続いて俺ら生徒も中へと入っていく。
「ではみなさん、1人ずつ前に出てきて、この祭壇に神力を流してください。すると、自分に合った神武が発現します。それでは、やりたい方から前に来てください。」
「はいはい!俺からやってもいいですか?」
カイが真っ先に手を挙げた。
「もちろんいいですよ、では神力を流してください。」
カイは祭壇に手をかざし集中している。
カイが手をかざし始めて数秒経ったとき、突然祭壇が青い光を放った。
「うぎゃっ!まぶし!」
カイはかざしている手の逆で目元を隠す。そして、次の瞬間、カイの目の前には三叉槍が現れていた。
「すっげぇ!これ親父のやつと似てる!」
「おぉ、カイくんはポセイドンと同じ三叉槍ですか、いいですね。すごくカイくんに合っていると思いますよ。それでは次の方どうぞ」
その後も何人かの生徒が続いて神武顕現の儀式を行った。みんな、いろいろな神武を手にしている。
そして次にヒマリの番がやってきた。ヒマリが神力を注ぐとすぐに神武が現れた。
「おや、発現が早いですね。そして、ヒマリさんは弓ですか。よく似合っていますね」
ヒマリがこちらへやってきた。
「どうよこの弓!かっこいいでしょ!」
弓の両端に太陽のような模様がついている。
「かっこいいな!俺もかっこいい神武がほしいな」
そして最後に俺の番がやってきた。
「レオンくん、落ち着いて神力を込めてくださいね。いいですか、落ち着いてですよ?」
「はい、分かりました。」
俺は祭壇に手をかざす。ゆっくり、ゆっくりと神力を流し始める。
「あれ?クロウ先生、神武が顕現しないんですが……」
すでに神力を込め始めて1分経っていた。だが何も起こらないでいた。周りの生徒からクスクスと笑い声が聞こえてくる。
「大丈夫ですよ、レオンくんはそのまま続けておいてくださいね。では他の皆さんは先に教室に戻っておいてください。私の仲間が案内してくれます。」
すると、クロウ先生の影から1羽のカラスが現れた。
「それでは、任せましたよアシキ」
「たっく、人使いが荒いんだよ!あ、今はカラスか。
それじゃあお前ら生徒たちは俺について来い」
……数秒の沈黙の後、
「カラスが喋ったぁぁぁ!?」
生徒のみんなが驚いて同じ言葉を言う。
「まぁまぁ、それはいいでしょう、ではアシキ生徒たちを教室に送り届けたら急いで戻ってきてくださいね?」
生徒たちはぞろぞろと教会を後にした。
「クロウ先生、どうして俺以外を先に教室に戻したんですか?」
「それはですね……まぁみてれば分かりますよ」
「クロウ先生答えになってませんよ?」
俺が言葉を発した直後、雷鳴が教会内に轟き始めた。
「レオンくん、神力を込めるのをやめて、私の後ろに来てください。」
クロウ先生が喋っている最中も雷鳴は絶えず鳴り続いている。
俺は言われるがままにクロウ先生の後ろへと移動した。
俺がクロウ先生の後ろへと移動した後、振り返ると祭壇の前には雷を纏った人影が立っていた。
黄金の雷が体中を駆け巡り、その姿は眩しく、神々しく輝いていた。そして、圧倒的な存在感を放っていて、ただ立っているだけで体が震えるほどの力を感じた。




