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女勇者(38)異世界帰還記  作者: すじお


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12/13

まずは、化粧水から。

 次の日。

 午前中に檸檬と不動産屋に行って次のアパートを選ぶと、すぐに引越し先が決まった。

「日当たりはとにかく大事なポイントです。冷え性になるから、北向の部屋は絶対だめです。あと、自炊がきちんとできるキッチンがついていること。広いお風呂があること……」

 檸檬は次々と条件を不動産屋に伝えていく。

 私はその横で、不安げにその様子を聞いていた。

「ねえ檸檬、私は引っ越すお金なんてないんだけど?」

 私が小声で不安を打ち明けると、檸檬が現金の袋を見せた。

「大丈夫です、ちゃんとこちらで現代のお金と換金できる両替商を見つけたので『未来のハマニスタのお金です』というと、結構なレートで買い取ってくれましたよ。それに、ボクの部屋も欲しいですしね」


 不動産屋で一番日当たりのいい、ふた部屋以上の風呂つき物件は相応の値段がするが、檸檬は難なく払ってくれたので、次のアパートが決まった。

 

 ルーツミにほとんど荷物はなかったので二日で荷物をまとめると、早速新居へ引っ越すことにした。


 簡単に部屋を掃除して、すぐに入居することができた。

 今度のアパートは2階建ての2階で、近くには川が流れていて、目の前は開けた公園になっていて、窓を開けると気持ちがいい。


 荷物の搬入が終わると、早速その日から檸檬による垢抜け指導が始まった。

「檸檬の乙女チェーック! これから、あなたの女子度を上げるためにいろいろ見ていきますよ。えーっと、ガサツに見えて一応化粧水は使ってるんですね。クリームもある……」

 檸檬は大きな浴槽のついたユニットバスに並んでいる化粧品類を眺めている。

「まるで、基礎化粧品すら使っていないとすら言いたげだが、何もつけてないと肌は乾燥するんだ。一応、旅の途中の修道院で買ったもので自然派のものらしいから」

「ふーむ。自然派だと案外効き目が緩やかすぎることもあります。見たところ、少し乾燥肌みたいですし、このヒアルロン酸配合のものに変えてください。クリームはレチノール入りのこれで……あ、仕上げに美容液もちゃんと使ってくださいね」

 檸檬はゴソゴソと例のポシェットを漁ると、私の化粧品を並べ替えた。


 次に、ボディメイクの指導だ。

 檸檬は見たことのない単位がついたはかりを出して、私の体重を測った。

「身長は168センチ、体重は…… 体脂肪率は15%。体脂肪率はやや低め、体重の重量は見た目にそこまで出ていないから、骨太なのと筋肉量が多いみたいです。骨格はストレートだから、服は少し首が開き目の、スカートの裾はマーメイドとか女の子らしいくびれのあるものをチョイスしましょう。ただ、今の体型だと男っぽすぎますから、もう少し先ですね」


 私の場合、ダイエットは垢抜けじゃなくて、筋肉のついた体を緩やかに落としていくことだった。


(あれほど鍛えた筋肉を落としたくないけど……そんなことを言ったらいけないのか?)


 そんなことを考えていると、檸檬が言った。

「多分、ある程度ダイエットしたらふくらはぎや肩の筋肉が残ると思います。そうしたらボトックスしましょう」

 私は、レベル89まで鍛えた自分の体を鏡に映して少し悲しい気持ちになった。

 女だからこそ、人より強くあろうと思っていた。だから、体を鍛えて文武両道に、強く、正しく生きようと思っていた。ダンジョンの重たい岩のトラップだって動かせるようになったのに、それは私の婚活にはなんの役にも立たなかったというのだろうか。


「あ、女勇者さん。ちょっとこれに唾液を入れてください」

 檸檬には試験管のような容器を渡される。

「なに? これ」

「遺伝子検査によって、体質がわかるんです。ダイエットのためにどの食材がいいかとか、病気リスクとか色々わかるんですよ。とりあえずその線まで入れてください」


 また”イデンシ”の話か。

 私はよくわからないけど、言われた通りに唾液を入れた。

「ありがとうございます。これを未来のラボに送って……二週間くらいで結果がわかるはずです」

 檸檬は私の唾液の容器に名前を書き込んでポシェットに入れた。檸檬は腕時計のようなものに向かって話しかけている。

「あ、もしもし? はい、主人の契約しているサブスクアカウントで遺伝子検査一つお願いします」

 私の唾液が未来に行くらしい、不思議な光景だ。


 その後も、檸檬のダメ出しが色々入って、私の爪の切り方とか、乾燥した手先に塗るオイルとか、一棚いっぱいになる化粧品とか、よくわからない「えすて」の機械とか、さまざまな身を整えるグッズで溢れかえった。


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