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女勇者(38)異世界帰還記  作者: すじお


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13/13

美容マラソンを走れ

檸檬が来てから怒涛の二週間が過ぎた。


(うーん、今日もいい天気)


ルーツミでも比較的便利な場所で築年数も新しく、私たちの部屋は日当たりのいい3階だった。

私の朝のルーティンといえば、朝は大抵日差しの悪い部屋でずーんと重い気分でようやくカーテンを開けていたのが、自然光の力で起きる時間が整ってきた。

カビでたまに咳き込むことも少なくなり、たまに嫌な匂いが服につくことも少なくなった。


私はキッチンに立って朝食の準備をする。

(昨日準備しておいたひきわり小麦に、野菜多めでチョップして…)


檸檬は私の部屋より女の子らしい高そうな自分用猫足ベッドから起きてきて、朝シャワーを浴びる。


お風呂でふんふんと未来の曲と思われる謎の鼻歌が聞こえて、その後バスローブ姿でキッチンに現れるのが定番だ。猫耳をバスローブと同じ色のターバンで巻いているのがかわいい。


「今日はクスルを作ってみたの。前に言われたじーあい? という指標だとどうなんだろう?」

私が尋ねると、檸檬はピッとリモコンのようなものを取り出してクスルに当てた。


「うーん、これは低GIではなくて中GI食品ですね。でも、野菜も多めで今までのドカ食いのように炭水化物を大量に食べるわけではないので、問題ないと思いますよ」

「うーん、栄養素も魔法の勉強なみに難しいわね」

「はい。体型はやはり毎日食べるものが大事なんです。でも、女勇者さんが自炊ができる人でよかったですよ。本当にジャンクフードばっかりの人はどうしようもないですからね」


毎日生活習慣について、このように細かく檸檬のチェックが入り、私はそのたびにメモを増やしていた。


「今日のメニューにはあと、鉄分が足りていないです。外用薬もそうですけど、肌は第二の内臓と言われているくらいですからね……あ、この鉄分の入ったこのジュースを食後に飲んでください、その肌のくすみの原因ですから」

檸檬は脇に置いてあったポシェットから、色の濃いジュースを取り出してテーブルに置いた。



有酸素運動で体全体を細くしたり、筋トレは腹筋に絞って継続している。

剣の素振りなどは、負荷を絶対に今のレベルで行わないことを条件に、檸檬に許してもらった感じだ。

曰く、「これ以上ゴリラのような体型になったら困る」とのことだ。

私がゴリラを知らなかったけれども、タブレットで檸檬に見せてもらったゴリラは、大型猿のモンスターのように見えて、顔はイケメンで穏やかだったが、未来の世界では「ごついもの、強いもの」の指標となる動物らしい。


(ゴリラ、可愛いのに……)


夜中まで魔法の勉強をしていることは禁止された。

理由は、睡眠不足と肌が美しくなるホルモンの出る時間が過ぎると、「美しくなくなるから」だそうだ。

筋トレも今までの負荷の半分以下、家事に追われていつも夜中にしていた魔法の勉強も、ほとんどしていない。

私のステータス「知力」は、このまま枯渇してしまうんじゃないか、というほど、今が一番人生で勉強をしていない。


(一人の人間として弱くなることが、「女性らしさ」なのかしら……?)


睡眠時間が増えたので肌は以前のような輝きを少しだけ取り戻しつつあるが、1日にできることは減ってしまう。

私はそれが残念だった。

自炊ができたのは、家が没落した時に母親が働きに出たので、せめて母の家事負担を減らそうと自発的に始めたのがきっかけだった。冒険時代はあまりしなかったけれども、パーティーがローレンと二人しかおらず、洞窟などでどうしても簡易的な調理が必要な時は大体私がやっていた。


(女性に必要なことは、どうしても魔物を倒すことより、家や自分の肌を守る知識に偏ってしまうのね)


午前中は軽くピラティスという運動をして、午後はAIによる画像診断で、私に最適な色の服を見つけてくれるというサービスを受けたりした。


「少しでも、明るく見える感じがいいですからね。しばらく土台づくりが終わったら、未来に行って必要な体のメンテナンスも受けられるといいですね」

「み、未来へ?」

「そうです。ただ、未来に行くのはものすごくエネルギーが必要で、エネルギーを貯めているところなんです。今ルーツミの海に隠してあるタイムマシンのエネルギーは回復段階にあって、もう少し経過しないと行くことができないので、こちらの時間換算でおおよそ、3ヶ月くらいかかるでしょう。3ヶ月したら、私の主人にも会ってください」

「は、はあ……」


私はその、「物好きな檸檬の主人」にも興味をもったが、なによりも美容の勉強をはじめてからというもの、時折檸檬の出してくれる未来の美容技術には驚かされることばかりなのだ。

肌も、檸檬の出してくれたスキンケアセットに変えてからというもの、洗顔後にお肌のつっぱりがなくなり、化粧水も以前より保水機能が高いように感じた。


(未来に行ったら、どれだけの美容が試せるのかしら?)


最初は檸檬の指摘をすべてこなすのは無理だと思っていたが、私は元来根がまじめ故に、今ではすべてのルールを守って、夜も「えすて」の謎の機械を檸檬にかけてもらったりしている。

以前は、体力をつけるためにルーツミの海岸のほうまでよく走っていたものだが、まるでこれは「美容マラソンのようだ」とすら思った。



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