第2話 ステータス
クラスメイト全員が共通の目的を持つ訳ではない。
これは分かっている事だ。
日本へ、あの町へ戻りたいと思う者が多くいるのは確かだが、命を張るくらいならばと考える者も居るのも当然だ、
戦おうと迷わずに思えるのは一部の人間だけだ。多くは覚悟が決まらずに立ち上がる事もままならない。
「…………」
晋達の前を歩くマルスは後方を気にする素振りなど見せずに大股で歩く。
「……何処に向かってんだか」
歩き始めて数分。
この城がどれほど広いかは理解した。庭の広さも、何も。
「金丸……いつまで本読んでるんだ」
「ん……額田か。ダメなのか?」
現状への理解等、金丸にしてみればどうでもいいのか声を掛けられて一瞬、反応を見せただけで再び文庫本へと視線を戻す。
「ちょっと……待ってよぉ」
歩く速度に光太郎が遅れる。タプタプと揺れる腹が原因か。ケラケラと下品な笑い声が聞こえてくる。
「…………」
結局は各々、話をするなどが見られる。或いは現状を深刻に考えていないのか。晋の右斜め前、数メートル先を茶髪の少女が独りで歩いている。
栗田莉緒。
高校1年生の頃は友達と一緒にいると言うのをよく目にしていたが、いつからか彼女は孤立する様になっていた。原因というものを追求するほど、晋は彼女との関係性は深くなかった為にどうするつもりもありはしなかった。
「まだか?」
晋の隣を女子が一人追い抜く。
峯崎香穂は黒い長い髪を後ろで縛っている凛とした顔つきの少女で、彼女こそ孤高という言葉が似合う。
彼女の一人は莉緒の物とは違う。
彼女は必要がないから他者との関係を構築しないのだ。この点は晋ともズレがある。
「──着いたぞ、ここだ」
マルスが振り返る。
開けた場所は学校のグラウンドを想起させる様で、何人かの騎士と思しき男が既に待機している。
「おい、ギャリッド……勇者達にアレを渡せ」
マルスの指示に従い、ギャリッドと呼ばれた甲冑の騎士は銀色の指輪を手渡していく。その様子を確認しながらマルスが説明を始める。
「それはステータス・リング。それをつける事で君達は自らの能力を数値化した物を知ることができる」
ギャリッドが渡した指輪を全員がマジマジと見つめて確認する。漸く晋にもステータス・リングが与えられる。
左掌の上に金属光沢で輝く銀色の輪。特殊な仕掛けなどは確認できない。
「ステータスはレベル、攻撃力、防御力、魔力、器用、体力、保有魔力量が表示される」
戦闘経験のない君達は皆、レベル1だと思う、とマルスが告げる。
「さて、早速ではあるが君達のステータスを把握したい。君達が戦う為にどの様な訓練をするべきか、騎士が見るか、魔法使いが見るかを判断しなければならないからな」
ステータスは情報の開示を口に出さずとも願うだけで確認できるとマルスが言うと、早速クラスメイトらはステータス・リングを思い思いの指に嵌めて確認を始める。
晋も右手の中指に嵌めて、情報開示を求める。
「ステータスは個人情報にあたる。我々も君たちの情報の取り扱いには細心の注意を払う。呉々も気をつけてくれ」
学生の成績情報の様な物だ。
知られても構わない者もいれば、知られたくない者もいる筈だ。
晋には余り関係はない話だ。
教師と己が把握していればいい。今回は国とクラスメイト個人という話だが。
「うぉっ……!?」
他の者には見えていないのだろう。
晋が周囲を見回しても己の前に現れたウィンドウの様な物以外は目につかない。
「あ〜、と……」
STATUS────────────
護仲晋
SUSUMU MORINAKA
レベル1
体力:200
保有魔力量:80
攻撃力:100
防御力:120
魔力:75
器用:125
技能:
────────────────
瞬間に晋の中に湧きあがったのは疑問だ。
このステータス値がこの世界でどんな物なのか。晋が首を傾げているとマルスの説明が響いてくる。
「レベル1の攻撃などのステータス平均は40から50であり、体力は100が基本だが……君達は勇者だ。強度が違う」
落ちこぼれではなかったかと晋は僅かな安心を覚えた。
もうステータスとか考えたくない。




