第8話 予告状を出した理由
英雄ボルザックの墓までやって来た俺たちはそこで夜まで待つことに。
「なんかたくさん人が集まって来たね」
わらわらと冒険者らしい人間たちが集まって来る。
恐らく町長が2つの目の予告状を公開でもしたのだろう。
「100人くらいいいそう。こんなにいちゃ盗掘なんて無理そうだね」
「そうだな」
盗掘団が何人いるかは知らない。
けどこの人数を相手にして盗掘をするのは難しいと思う。
「なんで連中は予告状なんて出したんだろうな? 盗掘がやりにくくなるだけなのに」
「もしかして冒険者を集めるのが目的、だったりとか?」
ユアリの言葉を聞いてハッとする。
もしかしたらそうなのかも?
けど、そうだとしたらなんでそんなことを?
理由にはさっぱり見当がつかなかった。
「おじさん、お腹空いたからなんか買って来てよ」
「なんでおじさんがパシリに使われるの。自分で買って来なさいよ」
「なんかおじさん臭いし」
「いや意味わかんない。なんで臭いとパシリに行かされるのよ? てか臭くないよおじさん。昨日、宿の風呂入ったからね。これでも綺麗好きなんだよおじさん」
「ごめん。訂正する。なんか臭そう」
「そっちのほうが傷つくんだけど……」
なぜか心を傷つけられたおじさんはしょんぼりである。
「あーお腹減ったなー」
「モグモグ」
「って、おじさんなに食べてんの? 食べ物あるならちょうだいよ」
「その辺にあるでしょ」
「その辺って……」
俺は食べているものを見せる。
「それ虫っ! えっ? 雑草? 石じゃんそれっ!」
「うん」
それらを口へ放り込みむしゃむしゃゴリゴリと食べる。
「虫はともかく、雑草と石は食べ物じゃ無いでしょっ!」
「キノコとかも食べるけど」
そこの木の根元に生えてた赤いキノコも食べる。
「それ毒キノコじゃねーのっ?」
「おじさんになるとなんでも食べて栄養にできるようになるんだよ。」
「そんなわけあるかっ!」
「そうなんだ……」
「なんで意外そうな顔してんだよっ! 当然だろっ!」
いつ盗掘者が来るかわからないからいつも王墓内にあるものを食べていた。そういえば子供のころからそうしてたし、おじさんなのは関係無かった。
「思い出してみればおじさんが普通に食事してるの見たこと無いかも……」
「そうだっけ。モグモグ」
周囲の奇異な目も気にせず、俺はその辺のものを食べ続ける。
やがて空が暗くなり、冒険者たちの警戒感が強まる
俺たちも警戒しつつ盗掘団が現れるのを待った。
「本当に来るのかな?」 こんなたくさんで待ち構えてて」
「さあね」
この人数を見て諦める可能性もある。
ともかく、夜のあいだはここを離れられなかった。
「やあ皆さん、ご苦労様です」
と、そこへ部下を連れた町長がやって来る。
「おつかれでしょう。部下に夜食と飲み物を用意させました。どうぞこちらをお召し上がりになってがんばってください」
部下が引いて来た荷車の上には水の入った樽や様々な食べ物が載っていた。
「うわーお腹空いてたんだー」
ユアリが一直線に荷台へ向かって行く。
他の冒険者たちも食べ物と水へ殺到した。
「はい。おじさんの分も持って来てあげたよ」
「おじさんもうお腹いっぱいだからいいよ」
「虫とか雑草とか石なんか食べてたら身体に悪いよ。ほらパンとかリンゴとか、水も持って来てあげたから」
「パンとリンゴ……」
人間の世界に来て何度か見たことはある。
そういえば宿でユアリが食べてたような。
謎の食べ物だったので食いたいとも思わなかったが。
「うまいのそれ?」
「食べたことないの? 1000年もなにしてたのおじさん」
「墓守ってた」
それしかしてない。
だから外のことはあんまり知らない。
「てか王族とか貴族でもない限り、魔族って虫ばっかり食べるから」
「わたし、魔族に産まれなくてよかった……」
なんか憐みの目で見られる。
「食べてみなよ」
「じゃあ……」
パンとリンゴという食べ物をもらっていただく。
「……俺は一体、1000年もなにを食ってたんだ」
これが本当の食べ物。
それを知った俺は側に置いておいた雑草と石を投げ捨てた。
「ふぁ~う……。なんか眠くなってきちゃった」
「これから盗掘団が来るんだよ? 大丈夫?」
「ダメ……」
ユアリはパタリと倒れる。
周囲の冒険者たちも次々に倒れていった。
「なんだ?」
なにか変だ。
どうしたんだ一体……。
ユアリと冒険者たち全員が倒れる。
起きているのは俺と町長、それと部下の男だけだった。
「こ、これは一体どういうことだ?」
「もしかして食べ物か水になにか入っていたんじゃ……」
そう俺が言うと、町長は部下へと目をやる。
「食べ物と水を用意したのはお前だろ? どういうことだ? お前、まさか……」
「……くくくっ」
町長に問い詰められた部下の男が低く笑う。
「どういうこともなにも、俺が水に睡眠薬を入れたんだよ。魔物も眠らせる強力なやつをな」
「な、なんでそんなことをしたっ!」
「決まってんだろ」
部下の男が右腕の袖をまくる。
そして肩からなにかを剥がす。
そこに見えたのはドクロのうしろに邪悪な形のスコップが描かれた入れ墨だった。
「俺はギエルモンド盗掘団のボスに仕える側近のひとり、ガデルよっ! 予告状通り、ボルザックの墓を盗掘に来てやったぜっ!」
「盗掘団っ!」
それを聞いた俺は部下の男……ガデルを強く睨む。
「なんでお前だけ眠らないんだ? 水は飲んでたよなぁ?」
「知らん。けど、たぶん毒に慣れてるからだ」
王墓にいたときもよくわからんキノコをバクバク食べていた。
だから毒的なものが利かないんだと思う。
「まあおっさんひとりくらいどうとでもなるか」
「おじさんはそんなに弱くないぞ。盗掘団退治は得意だしな」
「くくくっ。だったらおもしろいものを見せてやる」
そう言いながらガデルは懐から1本のスクロールを取り出す。
確かあれは魔法が込められているものだ。
開いて中身を読めば、魔力の無い者でも魔法が使えるとか……。
ちょっとやそっとの魔法ならなんとかなるか。
しかし強力な魔法が込められていたら……。
「くく、驚くぜ」
不敵に笑いながらガデルはスクロールを開き中身を読む。
すると俺や町長、眠っているユアリと冒険者たちの身体が輝き出す。
なにが起こるのか? わからないが、嫌な予感がした俺はユアリと町長を抱えて遠くへ離れる。と、身体の輝きは消え失せた。
「そういう勘の良い奴がいると思って眠らせたんだ」
輝いていた冒険者たちの身体からなにかが抜けていく。そしてそのなにかは墓の下へと吸い込まれて行った。
「なんだ? なにが起こるんだ?」
わからない。
けど、とんでもないことが起こる気がした。
「さあ目覚めよ竜殺しの英雄ボルザックっ! 強者の魂を生け贄にして、ふたたびこの世に姿を現すのだっ!」
「なに?」
墓が揺れる。そして……。
「うわあっ!?」
町長が悲鳴を上げる。
墓が崩れ、地面が割れていく。
そこから見えたのは大きな手。
それが割れた地面を掴み……。
「あっ!?」
巨大な人影が飛び出す。
飛び出たそれは、ズズンと地響きを立てて俺たちの前へ着地した。
「こいつは……」
通常の2倍はありそうな大剣を肩へ担ぐ大男。
竜殺しの英雄、ボルザック。
その人であると思った。
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次回、冥王を倒せる唯一の男。




