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第7話 キラーマの持つ強大な力

お読みいただきありがとうございます。


次回、予告状を出した理由が明らかに。

「……なんのつもりだ?」


 魔剣の切っ先を向けてくるドットを睨む。


「これ見てわかんねーの? あったまわりなーおっさん。さいっしょからこれ奪うことが目的だったんだよ」

「そのために町の外へ連れ出したってことか」

「くっくっくっ、その通り」


 他の仲間が俺たちを囲む。


「これを売りつけた野盗のボスがやられたって情報が入ったんでな。ボスの命令でてめえを追ってたんだよ。こいつを回収するためにな」

「俺を騙したのか? ラクサスの故郷で産まれたからって話も……」

「当たり前だろバーカ。ぎゃははっ!」


 豹変したドットの姿を前に俺はひどくがっかりする。

 こいつにではない。こんな奴を信じた自分にだ。


「おじさん見る目無い」

「おじさんは1000年間ほぼ人付き合い無かったし、生者に興味無いからしかたないの」


 とは言え、信じていた者から裏切られるのは普通に傷ついた。


「こいつは俺が盗掘した剣だぜ。なにがロイマーノの仲間だ。死んじまったらただの骨じゃねーか。墓石に小便かけてやったぜ。ぎゃははっ」

「墓石に小便?」


 それを聞いた瞬間、傷ついた落ち込みなど消え失せた。


「あーとんでもないこと言っちゃったね。このおじさん、お墓を汚すようなことするとめっちゃ怒るよ。墓好きの変態だから」

「墓好き? 気持ち悪いジジイだな。ラクサスの墓は俺が蹴り砕いてやったぜ。てめえの墓も同じようにしてやるぜ」

「……」

「女のほうは捕まえとけ。売れるからな。ジジイのほうは殺していい。ジジイなんかなんの価値も無いからな」

「ほら、やっぱり美少女は価値あるでしょ? おじさん? あ、聞いてないわ」


 周りでなにか言ってるけど聞こえない。


 拳は自然と握られ、次にやることを待っていた。


「それやっちまえ」


 盗掘団が一斉に襲い掛かって来る。

 それを待ってましたとばかりに俺の拳は動いた。


「……しぃましぇんへした」


 仲間たちはズタボロになって周囲へ転がっている。

 俺は一層にズタボロなドットの胸ぐらを掴み睨んでいた。


「謝って済むか。殺すぞ。骨を1本1本砕いて生きたまま埋めてやろうかこら」

「ひーっ! 許してくださいーっ!!」

「安心しろ。死んだらお前の墓も作ってやる」

「た、助けてくださいーっ!!」


 許さん。

 このまま絞め殺してやろうか。


「おじさん落ち着いて。まだ仲間がいるかもだしそれ聞かないと」

「ああそうか」


 盗掘団がこいつらだけとは限らないんだ。

 怒りに任せて殺してしまうわけにはいかなかった。


「おい、他に仲間はいるのか?」

「い、いやその……」

「どうなんだ? 嘘吐いたら骨折るぞ」


 指を掴んで反対側へ軽く反らせる。


「わ、わわ、わかった言うよ言うっ! 仲間は……たぶんいる」

「どういう意味だ?」

「俺たち……ギエルモンド盗掘団はいくつかのグループに分かれてるんだ。お互いのことは知らない。ボスだけが知ってて、各グループに命令を出してるんだ」

「ボスはどこにいる?」

「し、知らないっ。本当だっ。知ってるのは何人かいるらしいボスの側近だけだ。そいつらがボスの命令を伝えられて俺たちは動くだけだっ」

「……」


 思ったより組織体形がしっかりしている盗掘団だ。これならどっかのグループが捕まったとしてもボスが捕まることは無い。


「どうするおじさん?」

「とりあえずこいつらを町の兵士に引き渡そうか」


 しばらくして頭が冷え、殺す気は無くなった。


 ということで俺たちは盗掘団のメンバーを引き渡しに兵舎へ。


「いやーありがとうございます」


 盗掘団を引き渡すと、その話を知った町長がお礼を言いたいと俺たちは自宅へ呼ばれた。


「それじゃあこれ、報酬で……」

「いや、わたしたちは冒険者では無いので報酬はいりません」


 ユアリはきっぱりと言って報酬の受け取りを断る。


「そうなんですか? しかしお礼ですから。お持ちください」

「けど……」

「もらっときなよ。正義の味方にも活動資金は必要だろ」

「う、うん」


 少し迷うような表情を見せながらも、ずっしりとした袋をユアリは受け取った。


「なんかずいぶん多いですね」


 ユアリの手元を見て言う。


 中身は金貨だろうか?

 30枚はありそうだった。


「ええ。報酬は相場の2倍ほどになっております」

「そうなんですか?」

「はい。実は……」


 と、町長はなにやら紙を見せてくる。

 そこにあったのは……。


「予告状?」


 町にある英雄の墓を盗掘するという内容が書いてあった。


「1週間前にこれが届きまして。なんとしてもボルザックの墓を守らなければと高い報酬を出して冒険者のかたたちをこの町に集めたのです」

「けどなんで予告状なんて出したんだろうね? そんなことしたら冒険者がたくさん集まって来て盗掘がやりづらくなるだけなのに」


 ……確かにその通りだ。

 なんで予告状なんて出したんだ? 意味わからん。


「しかしまあもう盗掘団は捕まえていただきましたし、気にしなくてもよいでしょう」

「いや、まだ仲間がいるかもしれない。はっきりとはわかりませんが……」


 この予告状を出したのはあいつらか?

 確認しに兵舎へ行って聞いてみるか……。


「ちょ、町長っ」


 と、そこへ町長の部下らしい人が焦った様子で入って来る。


「どうした?」

「はい。門の前にこんな手紙が……」

「うん?」


 受け取った町長は中身を確認する。


「これは……っ」

「どうしました?」


 町長の青ざめた表情から、なにか嫌な予感がした。


「今晩、ボルザックの墓を盗掘に行くという予告状です……」

「!?」


 2枚目の予告状。

 やはり奴らの仲間も動いているということか。


「す、すぐに冒険者たちにこのことを伝えろっ! キラーマさん、ユアリさんもどうかよろしくお願いいたしますっ。ボルザックの墓を守ってくださいっ」

「もちろんですっ! 墓は絶対に荒させませんからっ!」

「安心してくださいっ! 勇者ですからっ!」


 ボルザックの墓を守るため、俺たちは急いで町長の家を出た。



 ―――魔王ミトロス視点―――



「なぜ冥王が死体など……」


 死体など肉塊か骨だ。

 持って行ってもなんの役にも立たないと思うが。


「冥王は死体を生者のように甦らせることができる。冥界へ行った魂をふたたび肉体へ戻し、生前とほぼ同じ状態へ戻すことが可能なんじゃ」

「しかしそれならばなぜ初代様はご無事で?」


 初代様の王墓も荒されていたはずだが。


「ここにあったのはわしの偽物じゃ」

「に、偽物?」

「こんなこともあろうかと本当の墓は別の場所にしておいた。これはキラーマでも知らんことじゃ」


 まさか初代様の墓は別にあったとは。

 それは魔王である俺ですら知らないことだった。


「では本当のお墓はどこに……?」

「それよりも冥王じゃ。奴の目的を防がねばならん」

「冥王の目的……それは」

「この世の支配じゃ」


 それを聞いた俺は目を剥く。


 冥界の王がこの世の侵略に動き出した。

 そんな話は今だかつて聞いたことが無い。


「しかしなぜ今になってそんなことを? 冥界はこの世界が創生される以前から存在していると聞きました。今になって冥王がこの世の支配に動き出す理由が解せません」


 支配が可能ならばとっくの昔にそうしているだろう。

 今になって動く理由がわからなかった。


「それはキラーマがここからいなくなったからだ」

「は?」

「わしも詳しく知らんがキラーマの一族は大昔からこの地を守っていた。冥界との出入り口であるこの場所をな」

「ここが冥界との出入り口……。そんな話は初めて聞きましたが」

「わしが魔王だったのもすでに2万年は前のことじゃ。いつしか忘れ去られてしまったのじゃろう。キラーマの一族もいつしか目的を忘れてしまった。じゃからキラーマ自身も自らが持つ本来の役目を知らんのじゃ」

「キラーマが持つ本来の役目……ですか?」


 あんなのは単なる墓守だ。

 そんな重大な役目を持ってるとは思えないが。


「あれはこの世と冥界のあいだに存在する出入り口の門番じゃ。あれがいなくなったことで門番が不在となり、冥王が動き出した」

「お、お待ちください。あれは単なる墓守です。そんな大きな力を持っているはずなど……」

「キラーマの一族は唯一、冥王に対抗できる強い力を持っている。本気になればあの世もこの世も支配できるほどの強い力をの」

「な……っ」


 そんな馬鹿な。

 あり得ない。


 そう口に出そうとするも、初代様の真剣な表情がそれを許さなかった。

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