第6話 初代魔王様が現れる
町の兵士へ野盗を引き渡す。
「ギエルモンド盗掘団? ああ、だったらシグの町あたりで見かけたって情報があったな。あそこにある英雄の墓を狙ってるらしいとか」
兵士から情報を聞き、次の目的地が決まった。
「次はシグの町へ行くんだね」
「うん。盗掘団は放っておけないからな」
元墓守として盗掘団は放置できない。
必ず壊滅させてやろうと俺は意気込んだ。
「その魔剣はどうすんの? なんだっけ? 魔剣ゼンラオジサン」
「なんで魔剣の名前がおじさんの全裸に引きづられてんの? 魔剣セルドカインだよ。全然、違うじゃん」
「そうそれ。それは返しに行くんでしょ?」
「うん」
埋葬物はご遺体とともにあるべきだ。
だからこれは墓まで返しに行く必要がある。
「けどまずは盗掘団だ。奴らを放って置いたら同じ被害が拡大する」
「そうだね。悪い奴らはわたしも放っておけないし。勇者として。おじさんも元ストリッパーとして盗掘団は許せないよね」
「おじさんの裸から離れて。てか元ストリッパーが盗掘団を許せないって意味わからんよ。元墓守だから俺」
ということで俺たちはシグの町へ。
シグの町へは馬車が出ている。
俺たちはそれに乗って目的地へ向かった。
「ここがシグの町か」
さっきの町より大きい。
ユアリによれば中規模くらいな町ということだ。
ここには竜殺しの英雄ボルザックの墓があるらしい。
「じゃあ早速、墓を見に行こうか。英雄の」
「いや、いきなりお墓? まずは宿取ってゆっくりしようよ」
「俺は墓を見たほうがゆっくりできる」
「変なおじさん。じゃあわたしあそこの宿に行って先に部屋取ってるから。おじさんはあとで来て」
「わかった」
「お墓で寝ないでよ」
「がんばる」
ユアリと別れ、俺は英雄の墓へ。
どうやら観光地になってるらしい。
墓の前には大勢の人がいた。
「これが英雄の墓か」
見上げるようにデカい。
そして立派だ。
当然だが手入れもされていて綺麗だ。
観光に来る人たちが多いのも頷けた。
「けど魔王様の墓のほうが立派だな」
魔王様の墓はもっとデカい。
手入れもしっかりされていて常に綺麗だった。
なんせ墓守は俺だったから。
今もちゃんと手入れされてるかな?
少し気になった。
「――その剣、もしかして魔剣セルドカインではありませんか?」
「えっ?」
声をかけられ振り向く。
そこには冒険者らしき男が立っていた。
「そうだけど……どうして知ってるんだ?」
まさか盗掘団の仲間?
そう思い少し警戒する。
「はい。実は僕、魔剣セルドカインの持ち主であったラクサスの墓がある町の出身で。盗まれたその剣を探して旅をしていたんです」
「ああ、なるほど」
声をかけてきた理由に納得して警戒を解く。
「失礼ですがあなたは……」
「いやその、俺は盗掘者じゃないよ。これは野盗から取り返したものなんだ。折を見て返しに行くつもりだったんだけど」
「ああいえ、疑ってはおりません。盗掘団に奪われたのち、どこかの野盗に売り払われたという話は知っていたんです。最近、その野盗が壊滅したという噂を耳にしまして、もしかしたらあなたがその野盗を倒した方ではと思いまして」
「ああ、ボスが持ってたこれを取り返したのは俺だよ」
「やはりそうでしたか。ありがとうございます」
「いや、故人の遺物を盗掘するなんて許せないからね」
盗掘は絶対に許せない。
これはもう俺の魂に刻まれた絶対的な思いであった。
「ではここへは盗掘団退治へ?」
「うん。ギエルモンド盗掘団ってのがこの墓を狙ってるって聞いてね」
「でしたら僕たちと組みましょう。」
「えっ?」
「町長が盗掘団討伐に高報酬の依頼を出してまして、ライバルが多いんですよ。手伝ってもらえたら幸いです。目的は同じですしいかがでしょうか?」
「まあ……そうだねぇ」
組むことで不利益になることもないか。
敵の強さ、人数も不明だ。誰かと組んで味方を増やすのは悪くない。
「わかった。組もうか」
「よかった。僕も盗掘団が許せないんです。ラクサスは故郷の誇りです。その墓が荒らされたことで、僕の誇りも傷つけれたようで……」
悔しそうに表情を歪ませる。
彼もまた墓荒らしを恨む者のひとり。
俺の同志であった。
「盗掘団が許せないっていうあなたと組めるのはとても光栄です。それじゃあ僕らは噴水広場の前にある、エルドムっていう宿屋に泊まってるんで、なにかあったらそこへ」
「うん。えっと、俺は……」
そういえば宿の名前は知らなかった。
「あーあとで教えに行くよ。名前わからなくて」
「わかりました。ではそういうことで。あ、僕の名前はドットです。10人の仲間と一緒に来てます」
「俺はキラーマ。こっちはあとひとりいる」
と、自己紹介を済ませ、ドットと別れた俺は宿へ。
ユアリの名前を出し、彼女の取った部屋へと向かった。
「えっ? 部屋ひとつしか取れなかったの?」
「う、うん」
部屋にはベッドがひとつ。
と、あとは机とイスが2つという簡素なものだった。
「なんか盗掘団騒ぎで冒険者がいっぱい来てるんだって。だから部屋がひとつしか空いてなくてさ」
「そっか。けど困ったね。ベッドひとつじゃ」
「ま、まあおじさんが変なことしないって言うなら同じベッドでもわたしは別に……よかったり」
「えっ? 嫌だよそんなの」
一緒に寝てもいいというユアリの提案を俺は却下する。
「こんな小さいベッドじゃ2人は窮屈だよ。君が床で寝なさい。若いんだから」
「いやそこは普通、慌てふためいたおじさんが床で寝るって自分から言うとこでしょっ! なんで真顔で嫌がってんのっ! なんでわたしが床で寝るのよっ! 女の子をベッドで寝かせるでしょ普通っ!」
「ああ、そういえば君、女の子だったね」
「女って認識されてなかったっ!」
「そういうわけじゃないけど、俺、生き物にはあんまり興味無いから」
死体には興味あるけど、生者には興味無い。
生者は墓と縁遠い存在なので。
「こんな美少女前にしてなんてこと言うんだこのじじいはっ! じじいなんて若い女にデレデレしてればいいんだよっ!」
「死体にしか興味無いから俺。とにかくベッドは俺が使うから」
「ふざけんなっ! 全生物の中でもっともヒエラルキーが上の美少女という芸術品であるわたしが床で寝て、もっとも下なおじさんという汚物がベッドで寝るとかあり得ないでしょっ!」
「なんてこと言うんだ君は。全生物の種はおじさんの金玉で作られるんだよ。言わばおじさんは神みたいな存在なんだ。おじさんがベッドで寝るのが当然だ」
「うるせえっ! この墓好きのド変態ジジイっ!」
「誰が墓好きのド変態だっ! この勇者オタクの暴走変態娘がっ!」
「なんだこの野郎っ!」
「なんだーっ!」
お互いに首を絞め合う。
その日はそのまま2人とも床で寝た。
「キラーマさんっ!」
次の日の昼。
宿の1階でユアリと昼食を食べている場へドットがやって来る。
「どうした?」
「は、はい」
ドットは俺の耳元へ口を寄せ、
「盗掘団のアジトが見つかりました。一緒に来ていただけますか?」
「わかった」
俺たちは急いで昼食を済ませ、ドットの仲間たちとともにアジトへ。
町を出て、やって来たのは深い森の中だった。
「この先か?」
「はい。あ、キラーマさん。もしよかったら、僕にその魔剣を預けてくれませんか?」
「えっ?」
「盗掘団はその剣を見れば必ず狙って来るでしょう。ラクサスは故郷の誇りです。僕の手でその剣を守りたいんです」
ドットは真剣な表情でそう言う。
彼の強い思い。
それに俺の心は打たれた。
「ああ、構わないよ」
「いいのおじさん? 昨日会ったばかりの人でしょ? 信用してそれ渡しちゃって大丈夫なの?」
「彼は墓荒らしを恨んでいる。だから信用できる」
墓荒らしを恨む者に悪い人はいない。
俺はドットを信じ、魔剣を渡す。
「ありがとうございます」
魔剣を受け取ったドットはそれを持ち上げる。
……そしてその切っ先をこちらへ向けた。
―――魔王ミトロス視点―――
「ゆ、幽霊っ!?」
声を上げたルロイがあとずさる。
幽霊……いや魂というべきか。
とにかく初代魔王らしき存在がそこにいた。
「あ、あなたは……」
「お前が当代の魔王であるなら、わしのことは知っているじゃろう」
「それじゃあまさか……本当に」
「わしはメリアードヴァイス。史上初めて、魔界を統一した王じゃ」
やはり。
しかしまさか初代魔王とこうして会話できる日が来るとは……。
「それよりもキラーマはどうした?」
「キラーマ?」
「そうだ。あいつはどこだ?」
「クビにして追い出しましたが……」
そう答えた俺の顔を見ながら初代様は目を見開いた。
「あいつを……追い出したのか」
「そうですが」
「そうか。いや、そうでなければこうはならなかった」
「どういうことですか?」
初代様は俺の問いに答えず、周囲を見回す。
「……すべて持っていかれたか」
「なにがですか?」
「死体だ」
「はあ」
死体など持っていかれたからどうだと言うのか?
しかし初代様の顔は深刻そうだ。
「冥王が動いた」
「め、冥王……」
冥王とは冥界の王だ。
それが動いたとはどういうことなのか?
嫌な予感しかしなかった。
お読みいただきありがとうございます。
次回、初代魔王が語るキラーマの役目とは?




