第4話 盗賊のアジトへ突撃
それからしばらく歩いて村へとやって来る。
「これはひどいな」
焼け跡の残った家。
荒された畑。
まさに野盗の被害であった。
「これは許せない。許せないよ正義の勇者としては。ねえおじさん」
「墓までボロボロだ。これは許せん」
「また墓かよっ! 墓はもういいっ!」
「直さないと」
「あとにしろっ! 野盗のアジトはどこにあるか聞きに行くんだからっ!」
と、俺は首根っこを掴まれ後ろ髪を引かれる思いでその場から離れた。
村長からアジトの場所を聞き、俺たちはその場所へ向かう。
「怖くないの君?」
「なにが?」
「野盗が。A級冒険者パーティを倒したのならすごく強いんでしょその野盗。もしかしたら殺されるかもしれないよ?」
まあこの子のことだし怖くないって言うんだろうけど。
「……」
しかしユアリはなにも答えず立ち止まる。
「……しょ、正直に言うとちょっと怖い」
意外な反応をされてちょっと驚く。
「けどわたし勇者だし、怖くても立ち向かわなきゃダメじゃん? 勇者だもんわたし。怖くても、困ってる人のために勇気出すんだから」
「……」
変な子だけど、普通な女の子な部分もあるんだな。
なんだか少し安心したような、妙な気分になった。
「まあでも、野盗のほうが昨夜のバケモノよりはずっとマシだけどね」
「昼間は出て来ないから大丈夫だよ」
あれは太陽が弱点だ。
夜にならなければ姿は現さない。
「おじさん詳しいね」
「墓守だったから死者には詳しいんだ。もしもまた出て来たら俺がなんとかするから安心していいよ」
「う、うん。おじさん、思ってたより強いね」
「相手が死人ならね。お墓が専門だから」
「じゃあ野盗のほうが怖い?」
「ちょっとね」
墓荒らしならともかく、野盗と戦うのは初めてだ。
だから少し怖い。まあ似たようなもんだろうけど。
「ここまで連れて来て言うのもなんだけど、嫌だったら引き返してもいいよ」
「うーん……」
俺は自分の顎を撫でつつ唸る。
「いや、ついて行くよ」
「死ぬかもよ?」
「俺は死なないよ。君の死体を持って帰って墓を作らなきゃいけないからね」
「嫌なおじさん」
「少なくとも良いおじさんではないね」
墓守をしていた普通のおじさんである。
「うおおしっ! それじゃ気合入れんぞっ! おりゃーっ!」
「いたーいっ! なんでおじさんの頬をひっぱたいたのっ!?」
「気合い入れるときって頬を張るじゃん」
「自分の頬を張るんだよそういうときはっ!」
「自分の頬を張ったら痛いし」
「なんでおじさんは痛くていいと思ったのっ!」
「うるせえっ!」
「ひどいっ!」
ということで俺たちは仲良くアジトへの道を歩いた。
やがてアジトへとたどり着く。
「見張りがいるな」
アジトらしい洞窟の前には矢を持った野盗が何人かいる。
村長の話では恐らく50人くらいはいるということだが。
「野盗って墓作るのかな?」
「知らねーよ」
「そうだ。墓を作ってそこに夜まで埋まる。夜になって墓から飛び出て夜襲をかけるのはどうだ? 名付けて死霊の襲撃作戦」
「墓に埋まりたいだけだろお前っ!」
「そうだったらどうする。ふふふっ」
「知らねーしふふふじゃねーよっ!」
「じゃあ普通に夜襲でいいんじゃないの」
「なんでちょっと不機嫌なんだよムカつくおじさんだなっ!」
けど知らない墓があったら怪しまれるなぁと思いこの作戦は諦めた。
「てか夜になったらまたあのバケモノ出て来るかもしれないじゃん」
「まあ出て来たらおじさんがなんとかするよ」
「それでも夜襲はダメ。勇者じゃない」
「勇者じゃないって?」
「勇者はこそこそ攻めないっ! 常に正面突破っ! 行くぞーっ! うおおっ!!」
そう叫んでアジトへひとりで突撃してしまう。
「臆病なのか勇ましいのかわからんなあの子」
しかたないなと俺はあとをついて行く。
「うん?」
「なんだ?」
「なんか変な女が剣を振り回してこっちに駆けて来るぞ」
外にいた野盗たちが一斉にこちらを向く。
「やあやあ我こそは正義の味方、勇者ユアリであーるっ! 野盗は全員、討伐してやるからかかって来ーいっ!」
ユアリは威勢良く突っ込んでいく。
野盗はユアリへ向かって一斉に矢を放つ。
「なんだこんなものーっ!」
矢を剣で叩き落とし、野盗をバッタバッタと斬り殺す。
「うおおおっ! ボスはどこだーっ!」
そのまま奥の洞窟へと入って行く。
俺もそれへついて行った。
「な、なんだてめえはっ!」
「悪党に名乗る名など無ーいっ!」
「あぎゃーっ!!」
野盗をばっさり斬り殺す。
「いやさっき名乗ってたじゃん……」
そんなこと気にせず剣を振り回し奥へ駆けて行く。
「がははーっ! 俺が相手だーっ!」
と、身体の大きな奴が出て来る。
「おりゃっ!」
「ぬわっ!?」
重い一撃を剣で受け止めるユアリ。
これはなかなか苦戦しそうであった。
「うん?」
大男の剣を受けるユアリを背後から別の野盗が静かに狙っている。
俺はそいつへ向け、
「ほい」
小石を摘まんで指で弾く。
それが男の額を撃ち抜いた。
「おいあいつ倒れ……ぎゃっ!?」
「なん……がっ!?」
他の奴も小石で倒していく。
これくらいでいいか。
あとは勇者様にお任せで。
「ふんっ!」
「うおっ!?」
大男の剣を上空へと飛ばす。そして、
「もらったぁっ!」
「ぎゃあっ!?」
ユアリの剣が大男の首を落とした。
「うわああっ! ゴンザさんがやられたぞっ!」
「あの女やべえっ!」
恐れおののいた野盗たちが奥へと逃げて行く。
「待て待てーいっ! 逃がさーんっ!!」
ユアリは逃げる野盗を追う。
やがて洞窟の奥へと到達する。
「ボスはここかーっ!!」
最深部らしき広間で大声を上げる。
広間には20人ほどの野盗。
その奥にいたのは……。
「へえ、威勢の良いお嬢ちゃんって聞いたけど、想像以上だねぇ」
肩に黒く長い剣を担いだ身体の大きい赤い髪の女だ。
「お前がボスかっ! ぶっ倒ーすっ!」
ボスへ向かって剣を構えるユアリ。
野盗たちはユアリを囲み、武器を向けてきた。
「待ちな」
ボスの女がイスから立ち上がり、ユアリへと近づく。
「あたしが直接、ぶっ殺してやる。光栄に思いな」
「ふふん。1対1の勝負。受けて立つ」
2人が睨み合う。
最初に動いたのはユアリだった。
「えああああっ!!」
「ふん」
剣を打ち合う。
「A級冒険者パーティを全滅させた腕にしてはぬるいっ!」
「まだ本気じゃないのさ」
剣の腕は互角くらいか。けど……。
「やるねぇ。けどあたしの勝ちだっ!」
うしろへ飛び退いたボスが大剣を大きく振り被る。そして、
「!?」
大剣を前へ振ると同時に黒い斬撃が飛び出す。
ユアリはそれを横っ飛びでギリギリかわす。
「くっ……」
「ひゃははーっ! こいつは魔剣セルドカイン! 勇者ロイマーノの仲間、ラクサスが使っていたものだよっ!!」
それを聞いて俺はやはりと思う。
魔剣だ。
まあ珍しくも無いが。
「う、嘘を吐くなっ! 魔剣セルドカインはラクサスの墓に埋葬されてるはずっ! ここにあるはずがないっ!」
「それがあるんだよぉ。信じようが信じまいがどーでもいいけどねぇ」
嫌な顔でボスの女は笑う。
故人とともに埋葬されているはずのものがここにある。
墓を……荒したのか?
それを悟った瞬間、俺の眉がピクリと動く。
墓荒らし。
それだけは絶対に許せなかった。
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次回、魔界で異変が。




