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第25話 男にも女にも追われるキラーマ

「キ、キラーマさん。お知り合いの方々ですか?」

「いや、知りませんっ!」


 女性たちは一目散にこちらへ向かって来る。


 目的はわからないが、ここにいてはまずい。


「い、行きましょうアーラスさんっ!」


 アーラスさんの手を取って走り出す。


「待てーっ!」

「あたしの男になれーっ!」


 なにがなんだかわからん。

 ……いや、もしかしたら。


 この事態が起こった理由の心当たりを考えながら、俺はとにかく逃げた。


 そしてアーラスさんを連れて町まで戻って来た。


「はあ……はあ……。もう追って来てないかな」

「そ、そうみたいです」

「すいません巻き込んで……」

「いいえ。あっ……」

「えっ?」


 アーラスさんの目が下へ。

 見るとそこにはぎゅっと握られた俺とアーラスさんの手があった。


「ああ、すいません」


 俺は手を離す。


 いきなりでびっくりしただろう。

 これは申し訳ないことをした。


「あ、いえ、けどひさしぶりに走ったので疲れました。はあ……」


 そう言いつつ胸を抑えて息を吐く。


 可憐な女性だ。

 ガサツなところが無い。

 きっと荒事に巻き込まれたことなどなく、今まで平穏無事に生きてきたのだろう。


「生活、大変じゃないですか? 国がこういう状態では?」

「はい。わたしだけではありませんが、最近は税金も上がる一方で国の皆さんは苦しんでいます。父も亡くなってしまい、これからどうなるか不安で……」


 悲壮感のある表情を見せるアーラスさん。


 そうだろう。


 なんとか助けてやりたいという思いはある。

 しかし原因が国の政治ではどうやって助けたらいいか……。


 そういえば2代目勇者イーメリアスが来てから皇帝に変化があったと聞いた。

 もしかすればイーメリアスが国民を苦しめる原因になってるのでは……。


「捕まえたぁ」

「わあっ!?」


 背後から知らない女に抱きすくめられて驚く。


「あんたは今からあたしの男。いい? わかった?」

「な、なんでですか? てか誰?」

「誰でもいいじゃん。気持ち良いことしてやるからー」

「ちょ、ちょっとっ!?」


 股間に伸びて来る女の手を掴む。


 なんなんだ一体?

 どういう状況だよこれ?」


「そ、その、あなたはキラーマさんのことが好き、なんですか?」


 俺が聞きたいことをアーラスさんが聞いてくれる。


「別に。こんなおっさん好きじゃないけど」

「じゃあどうして……?」

「これ」


 と、女が1枚の紙を見せてくる。

 そこに書かれていたのは俺の顔を描いた絵。それと……。


「これって……」


 俺を魅了で落とした女は王宮へ高待遇で迎え入れる。

 加えて金貨5000枚を報酬として与える。とあった。


「なんだこれは……」

「さっき町へ来た兵士が配ってたの」

「なんで兵士がこんなものを?」

「さあ?」


 女は首を傾げる。


 これって先日の淫魔となにか関係が?

 これを兵が配っていたなら、皇帝は冥王と関係があるということに……。


 いや、皇帝と関係があるのはイーメリアスの可能性が高いか。


「あんたなんかやったんじゃないの?」

「いや俺はなにも……」

「どうでもいいけどさ。とにかくあんたはあたしが捕まえたんだからね。もうあたしのもの。王宮暮らしも金貨5000枚もあたしの……」

「――それはさせないーっ!!」


 なんて大声が聞こえて振り向く。

 そこにはさっきの女たちがおり、こちらへ迫って来ていた。


「うわああああっ!!?」


 女たちに捕まりもみくちゃにされる。


「あたしが捕まえたんだからお前たちは引っ込んでろーっ!」

「捕まえただけで落としては無いでしょっ!」

「王宮暮らしと金貨5000枚はあたしのだーっ!!」

「いたいいたいっ! 助けてーっ!」


 踏まれたり引っ張られたりでもうめちゃくちゃだ。


 もう自分がどうなってしまうかわからなかった。


「キラーマさん、こっち」

「あっ」


 女たちが争ってる中、アーラスさんが俺の手を引く。

 そのまま連れ出され、どこかへと駆けた。


「なんとか逃げられましたね」

「うん」


 俺のことなど忘れて殴り合いを始めた女たちからなんとか逃げ出せた。

 あれはある意味、今までもっとも手強い強敵である。


「あ、ここうちなんですけど……」

「えっ?」


 気が付けば墓地の側まで戻って来ており、目の前には小さな家があった。


「少し休まれていきますか?」

「あ、はい」


 外を歩いていてはまた見つかってもみくちゃにされる。

 とりあえず隠れるという意味でも休ませてもらおうと思った。


 家の中はこじんまりしている。

 必要最低限のものしか無いという感じだ。


「父の物を整理したのでだいぶ中が寂しくなりました」

「そのようですね」


 奥にベッドはひとつ。

 父親のものは早々に処分してしまったようだ。


「ずいぶん急いで整理されたんですね。亡くなったのは今朝がたなのに」

「国がこのような状況です。治安も乱れていますし、わたしもいつどうなるかわかりません。だからなるべく早くと思いまして」

「そうですか」


 死体がその辺に転がっているような状況だ。

 身体が健康なうちにやってしまったということだろう。


「このままこの国はどうなってしまうんでしょう? わたし不安で……」

「この国に2代目勇者のイーメリアスが来たと聞きました。どこにいるかご存じでしょうか?」

「あ、はい。イーメリアス様でしたら2ヶ月ほど前に王都へ現れまして、それから皇帝陛下にお仕えしてるとか……」


 やはりイーメリアスが。

 ならばこれからどこへ向かうかは決まった。


「あの、キラーマさんはイーメリアス様に何かご用が?」

「はい。実は俺……」


 そのとき外に気配を感じる。

 ひとりじゃない。かなり大勢の……。


 気付けば外は夜だ。

 真っ暗な中に現れる来客なんて嫌な予感しかしなかった。


「どうかしましたか?」

「誰か外にいます。たぶん……30人以上は」


 瞬間、武器を持った男が窓を破って侵入してくる。扉は蹴破られ、武器を持った集団がわらわら入って来てあっという間に囲まれてしまった。


「イーメリアスの刺客か?」


 だが死者英雄ではない。

 ゴロツキの集団という雰囲気であった。


「刺客? そんな上等なもんじゃねぇよ」


 と、男はなにやら紙を見せてくる。そこに書かれていたのは、


「俺の首を取ったら金貨1万枚を授ける、か」


 そんな文字とともに俺の顔が描かれていた。


「おめえは金貨1万枚の賞金首だ。その首、もらったぜーっ!!」


 一斉に男たちが襲い掛かって来る。


「男にもモテモテだ」


 と、俺はため息を吐き……。


「あ、あがが……」

「つえー……」


 数分で全員を倒した。


「お、お強いんですね」

「墓を盗掘者から守るためには強さも必要ですから」

「あの、もしかして魔王様のお墓で墓守なさっていたキラーマ様、ですか?」

「えっ? 知ってるんですか? 俺のこと?」

「はい。以前まで墓守をされていて、キラーマというお名前だったのでもしやとは思っていたのですが。そうですかやっぱり」


 意外に俺って有名人?

 しかし魔族ならば知っていても不思議は無いか。


「わたしも墓守という仕事柄、魔王様のお墓を守っているキラーマ様には以前から憧れておりまして」

「お、俺に?」

「はい。あの、もしよろしければキラーマ様のお役に立ちたいのですが」

「お役にって……はっ!?」


 そのとき天井を突き破って槍が頭上から降って来た。

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