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第22話 英雄として迎えられるキラーマたち

 外に出たセラナがロイマーノの敗北を伝えると、援軍は撤退していった。


 これで王都が襲われるという危機はとりあえず去った。とは言え、冥王が健在な限りいつまた死者英雄の軍が来るかはわからない。


「わたしは虐殺をやめるよう他の英雄たちを説得してみます。無理だと思いますが、今のわたしにできることはそれくらいしかないので……」


 そう言ってセラナは去って行った。


 冥界へ戻れば転生するまで現世へは戻れない。その転生もいつになるかはわからないこと。だから死者英雄たちは皆、冥界へ戻るのを嫌がっている。

 仮に説得が通じたとしても、最悪、無理やりにでも冥王の命令に従わせられるのでセラナの説得は難しいように思えた。


 セラナは冥王の居場所を知らないらしい。

 冥王の居場所を知っているのは死者の中でも一部だけ。ロイマーノを含めた僅か数人だけとのことだ。


 恐らく勇者や魔王クラスなら冥王の居場所を知っている。

 奴らを探し出さなければ……。


「おじさん、早く王都に帰ろうよ」


 夜が明け、陽が高く昇るころ。

 俺は亡くなった冒険者たちの墓を作っていた。


 ご遺体を埋めたところに武器を突き刺すという簡易的なものだ。

 材料と時間があればもっとしっかりしたものを作ってやりたいのだが……。


「これで最後だから……よし」


 およそ100人分の墓を作った。

 亡くなった冒険者たちもこれで多少は浮かばれるだろう。


「じゃあ王都へ戻ろうよ」

「うん」

「ちっと待つのじゃ」

「はい?」


 メリアードヴァイス様に手招きされ、そちらへ行く。


「これは……」


 頭が転がっている。


 4代目魔王、ハルガディアス様。

 何度か王墓へ来たことがあるので知っていた。


「うう……ああああ……もうやめてくれぇぇぇ」

「こいつも冥界へ送ってやってくれ」

「はい。けどその前に……」


 俺はハルガディアス様の前へ屈む。


「ハルガディアス様、冥王の居場所を教えてくださいますか?」

「があああ……や、やめて……うう……ああああ」

「こやつの精神は壊れておる。なにを聞いても答えんじゃろう」

「……」


 俺は葬送術を展開し、ハルガディアス様を冥界へ送った。


 歴代最強と言われた4代目魔王ハルガディアス様をこうも無惨に倒してしまうとは。史上初めて魔界を統一した魔王の名はやはり伊達ではないようである。


「やれやれひさしぶりに疲れたわい。老骨には堪える」

「今は若いじゃないですか」

「気持ちの問題じゃ。よいしょっと」

「うわちょっとっ。俺の背中へ乗らないでくださいよっ」


 ぴょんと跳んで俺の背中に乗っかられる。


「王都までおぶって行くのじゃ」

「しかたないですね……」


 かなり助けてもらったのは事実だししかたない。


「あ、ずるいっ! わたしもおぶってよおじさんっ!」

「君は若いんだから歩きなさい」

「そっちのほうが若いじゃんっ!」

「わしはもう2万年以上は生きてる老人じゃ」

「嘘吐くなーっ!」


 ユアリが引きずり降ろそうとするもメリアードヴァイス様はがっしりと俺の背にしがみつき、離れようとしなかった。


「うん? 向こうから誰か来るみたいじゃぞ」

「えっ?」


 メリアードヴァイス様が杖で遠くを指す。

 その方向から集団がこちらへ向かって来ていた。


「し、死人の援軍が戻って来たのかな?」

「いや、違うみたいだよ」


 王都の兵士だ。

 数は少ない。

 十数人くらいだった。


 彼らは俺たちの前まで来ると止まった。


「冒険者か? ギルドの依頼で死者の英雄たちを討伐に来た?」


 隊長らしき男が馬上から俺を見下ろしつつ言う。


「いや違う。冒険者たちなら全滅させられたよ」


 俺は指で墓を指し示す。

 それを見た男は目を見開き、それからため息を吐いた。


「墓はお前が?」

「そうだ。俺は元墓守だからな」

「そうか……。しかし上級の冒険者をあれだけ集めてもダメだったとは……」


 悲観にくれた顔をする隊長の男。

 彼の目には明らかな絶望が浮かんでいた。


「この兵は死者英雄たちを討伐に来たのか?」

「いや、昨夜は攻め込まれなかったから、冒険者たちがやってくれたのかと思って確認に来たんだ。けどダメだったみたいだな」

「ここに死者英雄たちはいない。俺たちがボスを倒して他の支城にいる奴らも撤退した。だから王都はとりあえず安心だ」

「なに?」


 こいつはなにを言っているんだ?

 そうとでも言いたげな視線で隊長の男は俺を見下ろしていた。


「なにを馬鹿な……」

「本当だよ。ボスはおじさんが冥界へ送っちゃったから」

「冥界へ送ったって……まさか」


 隊長の男が目を見開きながら俺を見る。


「おい、城の様子を見て来い」

「は、はっ」


 命じられた部下が城を見に行く。

 しばらくすると慌てた様子で戻って来た。


「し、城はもぬけの殻ですっ! 誰ひとりおりませんでしたっ!」

「なんと……」


 隊長の男は場所から降り、俺をじっと見た。


「まさかあなたはシグの町に現れたという葬送術師では?」

「そうです」

「おおやはり。噂に聞いていた特徴に似ているのでもしかしたらと思いましたが」


 どうやら俺の噂が各地で広まっているらしい。


「あなたのおかげで多くの国民が救われました。ぜひ国王にお会いしてください」

「いやそんな大袈裟な……」

「いいじゃんおじさん。なんかおいしいものをご馳走してもらえるかもだし」

「うむ。旅の路銀も必要じゃ。礼としていくらかもらっておくとよい」

「そ、そうかな」


 ということで俺たちは兵たちと一緒に王都へ戻る。


 噂の葬送術師が死者英雄軍を撃退した。

 その話は瞬く間に広がり、俺たちは英雄として王都で歓迎された。


「あなたたちこそ英雄だっ!」

「葬送術師様ありがとうございますっ!」


 王都を歩けばそんな声があちこちから。


 国王様からも感謝の言葉をもらい、ユアリの予想通りごちそうもたんまり。

 謝礼金として金貨もたくさんもらった。


「いやー食った食った」


 こんなうまいものをこんなに食ったのは初めてだ。

 良い部屋まで用意してもらい、至れり尽くせりだった。


「今夜はゆっくり眠れそうだ」


 ふかふかの高級なベッドへ入って目を瞑る。

 明日の目覚めは良さそうだ……。


 そのままうとうとと意識が……。


「うん?」


 ベッドの中に違和感が。

 その違和感は這うように少しずつ脚、腹、胸へと上がって来て……。


「わしじゃ」

「メリアードヴァイス様っ?」


 顔を出したのはメリアードヴァイス様だった。


「なんで俺のベッドに……?」

「魔王とは言え、わしにも欲はある」

「なんの話ですか?」

「腹は膨れた。今夜はよく眠れて熟睡できるじゃろう」

「はあ」

「ならばついでに性欲も満たさねばならん」

「まさか……」

「さあ脱ぐのじゃ」

「ちょ、ちょっとやめてくださいよっ!」


 無理やり服を脱がされそうになって慌てる。


「女に興味を持たせるためにも必要なことじゃ」

「中身はおじいちゃんじゃないですかっ!」

「身体は女じゃ」

「い、いや、ですけど、男を抱くなんて嫌でしょっ!」

「安心せい。わしは昔から男が好きじゃった」

「そんな事実、知りたくなかったっ!」


 史上初めて魔界を統一した魔王様がホモだったなんて知りたくなかった。


「数多くの男を抱いてきた。すべてわしに任せろ。なにも不安に思うことは無い。女に興味無いなら中身男のわしが丁度良い」

「なにがどう丁度良いんですかっ! 助けてーっ! ホモの幼女に犯されるーっ!」


 自分でもなにを叫んでるのかわからんかった。


「もーおじさんなにー? 夜中にうるさいよ……って」


 部屋へ入って来たユアリと目が合う。

 彼女の目に映ったのは上半身を脱がされ、幼女に抱きつかれる俺の姿だった。


「お、おじさんやっぱり……」

「ち、違うっ! これは襲われただけで……」

「わかった」


 と言いつつ、ユアリはこちらへ来る。


「あ、うん。わかってくれてありが……」

「おじさんにはその……お世話になってることもあるし、お礼はしないとって」

「お、お礼って……えっ?」


 なにを思ったかユアリが服を脱ぎ始める。


「おじさんのダメな性癖は私が治してあげるからーっ!」

「わーっ!!?」


 半裸になったユアリまでベッドへ入って来る。


 ……いろいろもみくちゃにされる俺。

 しかしなんとか説得して今夜のところは部屋へ戻ってもらった。


「ようやく眠れる」


 しかし女の体と言うのも柔らかくて意外と悪くなかった。

 あれ? 俺もしかしてメリアードヴァイス様の思惑通りになってたりして? いやいやそんなまさか……。


 そんなことを思いつつ目を瞑る……。


「……ん?」


 それからどれくらい経ったか?

 またベッドに違和感を感じる。


 ユアリはメリアードヴァイス様か。


 どちらかがまたベッドへ入って来たのだろう。


 そう思いつつ掛け布団をめくる。


「えっ?」


 しかしそこにいたのはどちらでもない。

 どことなく妖艶な雰囲気を持つ知らない女だった。

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