↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/32

第21話 キラーマを救ったセラナの聖霊術

「セ、セラナ様っ!」


 隣でユアリが叫ぶ。

 そんなユアリをロイマーノと周囲にいる死者英雄が見た。


「まさかここでまで来ちまうとはなぁ。ラクサスもハルガディアスも、他の奴らも役立たずだ。英雄だ魔王だなんて聞いて呆れるぜ」

「あ、あなたがまさか……ロイマーノ、様?」


 ユアリの目がセラナのほうへ向く。

 その視線から逃れるようにセラナは顔を伏せた。


「そうよ。俺様が最強勇者のロイマーノ様だ。会えて嬉しいだろ? かっかっかっ」

「……っ」


 目を見開いてユアリはあとずさる。


 ここにいるのが本物だと思っていたのだろう。

 ならばこの反応は当然であった。


「あ、あなたはロイマーノ様じゃない……。偽物……偽物だっ!!」

「はあ? 本物だよ俺は。なあ?」


 問いかけに周囲の英雄たちが頷く。


 こいつは偽物だ。

 俺にはわかっていた。


「嘘っ! 絶対に偽物っ!」

「うるせえ。てめえが信じようと信じまいと俺は本物だ」


 偽物は本物だと言い張る。


 すでにバレていることだ。

 しかし奴はどうしても自分を本物だと思わせたいらしい。


「どうも妙じゃの」

「ええ」


 メリアードヴァイス様もやはり気付いているらしい。


 ロイマーノの気配がややぼやけた感じがする。

 しかしその理由はなんとなくわかっていた。


「ふん。ここに来るまでずいぶん魔力を消耗しただろ。俺を冥界へ送る分は残ってんのか? ああん? おっさんよ」

「ああ。お前の分くらいは残ってる」


 正直に言えばあと3人分くらいか。

 少なくともここにいる奴ら全員は無理だった。


「冥界へ行きたい奴からかかって来い」


 だが誰も向かってこない。

 ここへ来るまで多くの英雄を冥界へ送ったのだ。

 その事実がわかっているだろう英雄たちは動かなかった。


「行けよ。お前らが冥界へ行けばあいつはもうなにもできない」

「け、けど……」

「お、俺は嫌だぞ。冥界へ行くなんて……」

「俺も……」


 エントランスときよりも数は少ない。

 圧倒的多数という有利が無く、攻めあぐねている様子だった。


「だったら行かせるまでだ」


 と、そのときロイマーノの右目が赤く光る。

 瞬間、死者英雄たちの目からは光が失われた。


「冥王の目を借りていたか」

「冥王の目?」

「死者を強制的に操る目じゃ。……来るぞ」


 攻めあぐねていた死者英雄たちが一斉に襲い掛かって来る。

 俺は葬送術を展開しようとするが……。


「あっ!?」


 目の前で空間に切れ目が。

 その切れ目に刻まれ死者英雄たちの身体がバラバラになる。


「失せろ」


 そして身体のパーツごと死者英雄たち消え去った。

 ロイマーノとセラナの2人を残して。


「空間断絶に仕込んだ転移魔法でどこかへ飛ばした。これでわしの魔力はほぼゼロじゃ。火の魔法で灯を灯すくらいしかできん。あとは頼んだぞ」

「はい」


 俺はロイマーノへ向かい、葬送術を使おうと手をかざす。


「俺のを覚えてるか偽物」

「ああ? 俺はてめえなんか知らねーよ」

「よく見ろ。会ったことがある。700年前……魔界の王墓で」

「魔界の王墓……」


 ロイマーノがじっと俺を見る。

 その顔が少しずつ青くなっていく。


「て、てめえは……まさか」

「魔王様の王墓を守っていた墓守だ」

「……っ!?」


 ロイマーノがあとずさる。

 その顔は恐怖と怒りが混じったような複雑なものだった。


「な、なんでてめえがここに……っ」

「俺が葬送術師だからだ。言うまでもないだろ」

「まさか葬送術師がてめえだったとはな……」


 ロイマーノはニヤリと笑う。


「あのときの借りを返せるなんて嬉しいぜ」

「返せるか? 偽物が」

「俺は本物だって言ってんだろ。この剣が証拠だ」


 セラナの背に刺さっている剣を引き抜き構える。


「聖剣シェルマロード。魔族相手には大ダメージを与えられる剣だぜ」

「……」

「てめえとやったときはこれを当てることができなかった。一度でもこれで斬れば魔族のてめえには致命傷だ」

「当てられるのか?」

「勇者舐めんじゃねーぞ。勇者が二度も負けるかよっ!!」


 そう声を上げてロイマーノが斬りかかって来る。


「はっ!? ダ、ダメですっ! それは……っ」


 セラナが叫ぶ。

 俺はロイマーノの一撃をかわした。

 瞬間、


「ぐっ……なにっ?」


 背後から同じ聖剣を構えて突いてきたロイマーノの剣を掴む。


「馬鹿なっ!? なぜ……っ? 気配は魔法で消していたはずだっ!」


 ロイマーノが2人いる。

 この状況に俺は驚いていなかった。


「影武者の指輪じゃな。実態がある分身を作る指輪じゃ」


 そうメリアードヴァイス様が言うと、影武者のほうは剣とともに消えた。


「最初から言ってたろ。お前は偽物だって」

「て、てめえ最初から気付いて……っ」

「背後に隠れているのはわかっていた。目の前にいた奴は気配がぼやけていたし、わずかに俺の背後を気にしてる素振りがあった」

「く、くそ……っ」

「終わりだ」


 俺はロイマーノを冥界へ送ろうと葬送術を……。


「っ!? がはっ!?」

「おじさんっ!!」


 上空からなにかが飛び降りて来て俺の左胸を背中から剣で刺す。

 振り向くと、そこにいたのはロイマーノだった。


「か、かかっ。影武者の指輪がひとつとは限らないぜ」


 ……油断した。

 まさか本物は天井に張り付いていたとは。


「今度は俺の勝ちだぜ。かかかっ!!」

「……っ」


 俺は両手を背後にロイマーノの頭を掴む。そして、


「うおっ!!?」


 思い切り投げた。

 それから刺さったままの聖剣を左胸から抜いた。


「し、心臓を貫いたんだぞっ!? まだ生きてやがんのかっ!?」

「そ、そうみたいだな」


 どういうわけは俺は生きていた。


 なぜ……?」


 その理由はすぐにわかった。


「セラナ……?」


 セラナの手がこちらへ向き、なにかの魔法を放っているようだった。


「再生の加護。これをかけると一度だけダメージを無効化します」

「セ、セラナてめえっ!!」

「説得ができなかったわたしができるせめてもの償いです」


 後悔と満足。

 それが混ざったような表情でセラナは俺を見ていた。


「め、冥界へ送り返されてたまるかっ!!」

「むっ!?」


 突如、周囲に霧が発生し視界が遮られる。


「霧を発生させる魔法じゃな」

「ど、どこだっ!!」


 扉へ向かって走るロイマーノの足音。


「逃がすかっ!!」


 俺はそちらへ葬送術を展開。

 ぼんやり見えるロイマーノの背へ鎖が伸びて行き……。


「ぐあっ!?」


 ロイマーノを捕らえる。


「やめろっ!! 俺は冥界へなんて戻りたく……っ」

「冥界へ送る前に聞く。冥王の居場所を教えろ」


 こいつを倒したって終わらない。

 諸悪の根源である冥王を見つけ出して倒し、それでようやく終わるのだ。


「い、言うか馬鹿。言うわけねーだろっ!」

「ならお前にもう用は無い。冥界で本物に詫びろ」

「ぐあああああっ!! くそぉぉぉっ!!」


 蓋が閉じられ、棺は消失した。


「はあ……」


 終わった。


 俺は一気に疲れがきたような気がして膝をつく。


「おじさんっ!」


 ユアリが駆け寄って来て俺の身体を支える。


「俺の言った通り、ロイマーノは偽物だったろ?」

「う、うん。おじさんの言った通りだった」

「勇者ロイマーノは勇敢で心優しい男だ。あんな男とは違ってな」

「うん。うん……」


 ユアリは嬉しそうに笑う。

 その目端にはわずかな涙が見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。