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第五話「夢の覚める頃」

いつも通り、少しのオリジナルストーリーと、既存の話を別視点から書いたものです。

あれから、さくらはどんどん成長していった。

見た目は年齢に沿って成長し、心は年齢より少し進んでいた。


「今日の研究はこれで終わりだ。」

「さくらちゃん、今日もお話たっぷり聞かせてくれてありがとう。」

「あの・・・ この研究で、誰かの命を救えたりするの?」

「もちろんだ。まだ研究段階だから実用化はされていないけど、近いうちに医療で使われることになる。」


この研究でさくらの命が救われるなら、どれだけ幸せなことか。


「医療・・・ それは素敵ね。」

「浩美、悲しい顔してそういうこと言わないで。」


どうしても顔に出てしまう。私は、そのせいで場の空気を壊してしまうことが良くある。


「涼太?もうちょっと楽しいこともあるでしょ。映像技術とか。」

「ああ、そうだな。」

「そうだな・・・ じゃなくて!」


十五歳の頃までは何事も無かった。

寿命なんて嘘なんじゃないかって思うくらい。


でも、徐々におかしな症状が現れ始める。

そして、十九歳の頃。


「はぁ、はぁ。息が、苦しい・・・。」

「さくら!?」


まず、肺がやられた。

魔術での治療は、出来なかった。

細胞に限界が来ているからである。


ニ十歳からは病院暮らし。

明美がいる病院だったので安心はできる場所だった。

でも、さくらの死まで何をすればいいのか分からない。

私は、ずっとさくらに寄り添い、少しでもさくらが楽になれるようにした。



―――――さくらが二十二歳の頃



「浩美、さくらの病状がかなり悪化してる。」

「え!?今すぐいくわ。」


明美から魔術メッセージを受け取った私は、アラームに起こされる。

メッセージの内容で、眠気なんて一気に吹っ飛んだ。

私は、すぐにさくらの元へと向かう。


「さくら、大丈夫!?」

「ん・・・」


さくらは、生きてる。

さくらが寝たきりの今は「さくらが生きている」それだけが救いだった。


とりあえず、現状を周りに伝えた。

夕方になると、見舞いの客がやってくる。



「涼太だ。玲音も来ている。」

「来てくれたのね・・・!」


「ああっ・・・」

「さくら、さくら!大丈夫!?」

「う、うう・・・ 浩美、苦しい・・・」


涼太と玲音が、フルーツをたくさん買ってきてくれた。

でもさくらは、今は食べたくないと言った。

もう、まともに食事も取れないのだ。


「どうも、牧野です。さくらの病状はどうですか。」

「僕も一緒に来ました。さくらの体調は・・・」


私たちは、さくらのお父さん達とはたまに会う関係だった。

流石に魔術の森のメンバーは避けていた彼らだが、今は違う。

こんな状況で、敵も味方も因縁も、何も関係ないのだ。


医者によって、余命を知らされた。

生きられて、あと半年だろう。



―――――三か月後



今日は、さくらの誕生日パーティー。

涼太、玲音、瑠音も来てくれた。


「立派なケーキだな。早速ロウソクを立てようか。」

「二十三本。火を付けるよ。」


「さくら、ロウソクの火、消せる?」

「そんな、無理させないほうが・・・」


瑠音が止めようとするが、これは最後の誕生日パーティーなのだ。

さくらに、最高の思い出を残したかった。


「ちょっとまってね。」


さくらがそう言ってから三十秒ほど。

さくらが魔術によって起こした風によって、二十三の火は消えた。


「さくら、お誕生日おめでとう!今年で二十三歳ね。」

「すごい、まだ魔術を使えるんだね・・・。」


早速、ケーキを食べる。


「えっと、さくらの分はどれくらい残せばいいかしら?」

「私、食べれない・・・。」

「え、でも・・・。」


「浩美、ケーキが腐っちゃうよ。私達で全部食べよう。」

「うん、瑠音の言う通り。さくらは、みんなが幸せな顔を見たいと思うよ。」


幸せな顔を見せなきゃいけないのに。

ケーキを食べながら、私は泣いてしまう。


「まったく、しょうがない奴だな。後でたっぷり笑顔見せとけよ?」

「ぐすっ。うん・・・。」


私は、さくらが寝る前にとびっきりの笑顔を見せて、基地へ帰った。




―――――そして、その時はやってくる。



さくらが一週間前に意識を失ってから、さくらは一瞬目を覚ますことはあっても、状態が戻ることは無かった。


今ここには、私を含めて七人いる。


「さくら・・・ お願い・・・ 死なないで・・・ お願いっ・・・」


ついに、さくらに限界が訪れたのだ。

ニ十歳なんて言ってたけど、二十三歳まで生きてるじゃない、さくら。

きっと、これから先も、ずっと・・・



さくらの心臓は、止まった。



医者が悲しい顔をして、何かを話す準備をしている。

そして、皆は悟った。


嫌だ、嫌だ、嫌だ!



「嫌、嫌ぁぁああああああああ!」

「さくらちゃん・・・」

「さくら・・・ くそっ。」

「さくら・・・」



涙で前が見えなくなる。

かろうじて見えるのは、さくらの眠っている顔だけ。

私たち二人は、ずっと永遠に・・・






「こんな鍵、あったっけ?」


玲音が何か言っている。

涙の向こうに見えるさくらの胸の上に、鍵が一つあった。


「ぐすっ、ぐすっ。な、何?鍵?ぐすっ。」

「まさか、さくらの秘密の箱の鍵か?」


さくらの秘密の箱。

さくらが、ずっと大切にしまっておきたいものを入れるために作ったもの。

中身は、私にすら教えてくれなかった。

これは、その鍵に間違いない。



思いっきり泣いた後、私と涼太と玲音で、鍵を開けに行った。

一縷の望みを抱いて・・・。



「この引き出しの中にあるんだよな?どれだ?」

「箱は見えないのよ。」

「見えないものをどうやって開けるの?」

「そんなの、鍵穴に刺さるまで鍵を動かすしかないじゃない。」

「そんな作業が必要なのか・・・ まあ、場所自体は狭いからすぐだろうけど。」



箱は、鍵で空けるまでは見えないうえ、物体をすり抜ける。


でも、さくらの性格的に、場所は数か所に絞られる。

ならそこを優先的に探せば・・・



空いた・・・!



「本当にあってよかったね。一瞬箱なんてないのかと思っちゃったよ。」

「で、箱の中身はこれだけか?宝石二つと封筒一つ?」

「この封筒、遺書って書いてあるわ。宝石はきっとさくらの宝物ね。」

「遺書は浩美が読んで。私たちは一旦ここを出るから。」

「わかったわ。すぐ読み終わると思うから。」



私は別の部屋へ行き、恐る恐る遺書へと手を伸ばす。


読むのが本当に辛かった。

泣きながらも必死に読んだ。


「浩美に出会ってから不安もあった日々だったけど、それ以上に、幸せに満ちた日々を送ることができたよ。」


「愛や恋、感情には色々あるけど、私に恋してくれて、とても嬉しかった。」


「私が死んでしまって、浩美はとても悲しいと思う。でも、自殺だけは絶対にしないで。」


「白い宝石は、お母さんが私にくれたもの。そして、ピンクの宝石は、私から浩美へのプレゼント。」


「もし私のことが恋しくなったら、お母さんの前にピンクの宝石をかざして、私を思い出してね。」


「遺体は、私のお母さんの下に埋めてほしい。もしほかに骨があっても、掘り起こさないで一緒に埋めてね。」



さくらを埋める作業は、私には辛すぎてできない。

作業は咲人、涼太、そして玲音に任せて、私は宝石を眺めていた。

白いほうも、ピンクのほうも、とても素敵な輝きをしている。

まるで、魔力が宿っているかのように。

もしかしたら、宝石をかざすだけで、さくらがひょっこり現れちゃったりとか。

って、そんな訳ないよね・・・。


色々考えていると、埋め立て作業が終わったらしく、お祈りに呼ばれる。


私と涼太と玲音で、桜の木の前でお祈りをする。

私は、ピンクの宝石を手の中に握りしめて。



「浩美、お願い事を聞いてくれてありがとう。」



さくらの声!?

耳から聞こえている感じではない。脳に直接響いているような・・・。



「これは、祝福だよ。」



その時、三人をさくらの魔術が包んだ。



「誰!?さくらの魔術!?」


「さくらが私たちの祈りを感じて、祝福してくれたのよ!」

「これは、もう行くしかないな。この魔術が消える前に。」


涼太と玲音は、雲のボスを倒す計画を考えていた。

さくらもそれを感じ、支援してくれたのだろう。


「今なら雲のボスを倒せる!玲音、急ごう。浩美はさくらの元にいてくれるか?」

「ええ、わかったわ。私が行っても何もできないものね。」

「本当にやるんだね?ついにこの時が来た・・・!」



涼太と玲音が行った後、私は桜の木に、白い宝石をかざす。

多分、さくらはこれでお母さんと・・・



「浩美さん、聞こえていますか?」



知らない声が、脳に響いてくる。


「はい、聞こえています。」


「それは良かったです。私は、野伊(のい) 千夜(ちよ)。さくらのお母さんのような者です。」


さくらが時々言っていた、千夜という存在。

それが、ここに・・・!?


「えっと・・・ あなたはその・・・ 桜の魂とかですか?」


「いいえ、五百年以上前にこの桜の木の下に埋められた、人間です。」


つまり、今のさくらと同じ幽霊。別にそれには疑問は持たない。

一番の疑問は、彼女の名字だ。


「野伊さん・・・ ですよね?野伊晶と、何か関係はあるんですか?」


「私は、捨てられた子だったんです。そして、野伊家に拾われ、そこで育てられました。私が十六歳で死んでしまった後、この木の下に埋められました。」


「じゃあ、晶とは別の野伊ってことね。なんでこの木の下に埋められたのかは分かる?」


「晶は私を育ててくれた野伊家の祖先です。この木の下に埋められたのは、私が植物と公信できたからです。」


「植物と交信・・・ すごいですね。でも、なんで牧野家がこの桜の木を?」


「私は五百年以上この桜の移り変わりを見ていますが、牧野家に渡ったのは、ただの偶然です。」



千夜は、植物と公信できる。

つまり、死後もこの桜と公信しているはずだ。

だとすれば、この千夜とこの桜の関係はとても深いものとなる。


咲人は、この桜が大好きだった。

もしかしたら、咲人と晶が出会ったことすら、必然だったのかもしれない。


もし本当にそうだとしたら、さくらが生まれたことすら、必然となる。

全ては、運命・・・?


いや、この世は生き物達によって全てが動いている。


五百年前の野伊家が千夜を拾ったこと。

千夜をこの桜の木の下に埋めたこと。

牧野家がここに家を建てることを決めたこと。

咲人が晶と付き合い始めたこと。


そして、私がさくらを選んだこと。



全ては、魂の意志によってもたらされた結果。

全ては、愛によって紡がれた歴史。


そして、愛によって生まれた偶然は交錯し、のちに世界の理をも変えてしまうことになるのであった。

外伝だけでは書ききれない膨大な設定は、外伝を書き終えた後に、設定集として投稿しようと思います。

残るはあと一話。頑張ります。

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