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第三話「四獣の交錯」

若干、痛々しい表現があります。

本当はもっと痛々しく書きたかったのですが、さすがに読み手のことを考えて、抑えました。

ーーーーー人の少ない湖


今の拠点は、林の中の、湖の地下にある基地。

買い出しの場所が近い上、自然が多いという、素晴らしい場所。


「やっぱり自然がたくさんある場所は心地いいわね。さくらも魔術が捗ってるみたいだし。」

「この辺はまりょくが多いからね。でも、今日はいつもより少ない・・・」

「いつもより少ない?木々は伐採されていないし、魔力量の波がたまたま多いだけなのでは?」

「これは波なんてものじゃないよ、ひろみ・・・」


「その通りだ。さくら。そして、内池浩美。」


背が高く、髪をオールバックにした男。そしてその隣に金髪の少女がいる。


この男の顔、どこかで見たことあるような...。


「誰ですか?」


「とある悪い組織の一員だ。さくらの魔術に興味があってねぇ。大人しく身を渡してくれれば、命は保証する。」


さくらは私に刀を渡す。

魔術の刃は三本。

魔術の刃の振る方向は刀本体、および魔術の刃の振る方向に影響している。

当然規則性があるため、刀本体の振る方向が重要になってくる。

普段は二本が私の魔術、一本がさくらの魔術のため、私の魔術の刃を操作した上で、さくらの刃だけ気にすればよかった。

さくらの魔術で作られた刃は、私には操作できない。

今回の戦いは、私の成長がどこまでいったかが重要なのだ。


「もう一度言う。大人しくさくらの身を渡してくれれば、命は保証する。死んでから後悔しても遅いぜぇ?」


「さくら、全力で逃げるわよ!」


「最後にこいつだけ紹介しやろうか。こいつは瑠音るね。瑠璃のるに音色のねだ。俺が見た中で、世界一のキャスターだ。」


「うっ・・・!」


瑠音という名の少女が苦しそうに魔術を暗唱する。

すると、私たちの頭上に、魔術の巨大な透明の障壁が現れる。


相当な魔力を消費しているように感じる。

これだけ強力なら、触れたら即死くらいの強さがあるかもしれない。

林を抜けて逃げるしか無さそうだ。


「ひろみ、この人たちころしちゃうかもしれないけど、いい?」

「うん、いいわよ。」


十二歳のさくらは今まで、人を殺したことは一度もない。

そんなさくらが殺せると言ったのは、目の前の男の殺気ゆえだろうか。


「ごめんね。」


そう言い、さくらは向こうの二人に向けて、魔術の突風を起こした。

無音と共に、空気の槍が二人を貫く。


「くああっ!」


瑠音が魔術のバリアで必死にそれを守る。

その隙に、私たちは林へ逃げ込む。


「ひろみ、あぶない!」


さくらがそう叫んだ瞬間、無数の魔術弾が林の中から飛んでくる。


さくらがバリアで守っていると、魔術弾トラップで誘発した魔術弾トラップが発動する。

そして、四方八方から魔術弾が飛んでくる。


「このままじゃ追いつかれちゃう!さくら、魔術弾は私がなんとかするから、林の外まで一気に飛ばして!」

「ひろみ・・・ うん、わかった!ひろみを信じるよ!」


ありがとう、さくら。

さくらが魔術で私たちを風で加速させる。

そして、私は物凄い速度で前方から襲ってくる魔術弾を全て斬る。

さくらと居ると、何故か刃の軌道を全て上手く操れる。

さくらが後ろから来る魔術弾をバリアで防いでくれたので、一気に林を抜けることができた。


「魔力が不足していたのは、トラップにもの凄い魔力が使われていたからね。」

「うん・・・ あの女の子、あやつられてるみたいだった。」

「操られてる・・・ なるほどね。たしかに、言われてみればそんな気がする。とりあえず、建物に隠れましょ。」

「うん、あの廃墟とかいいとおもう。」



着いたのは六階建ての廃墟。

すぐに地下室を作り、私たちはそこに逃げ込んだ。


「あの人たちに追いつかれるのも時間の問題ね。別の基地を作るのも危ない気がするわ。」

「寝てる間にころされちゃうかもね。」

「なら、万全の準備を整えて迎え撃つしかないわね。」


廃墟の一~三階に攻撃トラップを仕掛けて、私たちは四階で迎え撃つ。

さくらの消耗を抑えるために、トラップは最低限のものにしておく。

相手が警戒して、無駄に強い魔術で守ってくれれば充分だから。


四階が戦場になるので、四階には特に厳重な防音トラップをしかける。

攻撃魔術にいちいち防音機能を付けると、さくらの攻撃力は弱ってしまう。

例え相手にも有利を与えるとしても、防音魔術の設置は必須だと判断した。


五階、六階はもしものための避難場所として、バリアのトラップを設置しておく。

一階の扉は、一般人には絶対に開けられないくらいの強度にしておく。


「そろそろかな。」

「そうね。向こうが休養を取らなければだけれど。」


既に準備は万全だ。

さくらのバリア魔術、そして私の刀。

今回の刀は、私の魔術刃二本と、さくらの魔術刃一本。

さくらが瑠音の相手をして、私があの男の相手をする。


「相手が一階にきたよ。」

「素直に一階から来るのね。しかも休養も取らずに。」

「止まったらしんじゃうとか?」

「止まったら死ぬって、マグロじゃないんだから。」


いや、本当に死ぬのかもしれない。

もし、あの強力な魔術になんらかの仕掛けがあるとしたら、瑠音は相当無理をしていることになる。

そんな仕掛けがかかった状態で長生きできるとは、到底思えない。


「遅いわね。準備しているのかしら?」

「トラップをはってるみたいだよ。」

「トラップを?うーん、他の敵が襲ってこないように、とかかしら・・・」

「そういう人が来たらどうするの?みごろしにするの?」

「何よりもさくらの命が一番大事なのよ。場合によっては、そうしましょう。」

「うん、わかった・・・。」


「準備万全、ってとこか。できれば生け捕りにしたいところだが、残念ながら殺す気でいかないと勝てねぇみたいだ。」


「なら、こちらも殺す気でいくわ。」


相変わらず殺気の強い男だ。

怯んでは駄目よ。私はあの男と戦わなければいけないの。


「早速戦闘開始、と行きたいところだが、さくらに関する最も重要な情報が欠けていてね。それを教えてほしいんだ。」


「何よ。教えるわけないでしょ。」


「教えてくれたら、瑠音の正体について明かす。ついでに俺の正体もな。」


正体について知ることができれば、圧倒的に有利になる。

こっちは逃がすつもりは無いし、向こうが嘘を付かなければ、教えるだけ得になるはずだ。


「いいわよ。で?何が知りたいわけ?」


「さくらの魂の足りなかった分はどこから持ってきたんだ?」


全く意味が解らなかった。

魂の足りなかった分って、魂は分量で計れるものなの?

持ってくるって、魂は渡すことができるの?


「私のお母さんからもらったの。あの桜の木から。」


「さくらから答えてくれるなんて、ありがたい。ただ、桜の木が与えるのは無理だよな?誰が手伝ったんだぁ?」


千夜ちよが手伝ってくれた。」


ちよ・・・?誰・・・?

さくらのことについての話は、今まで沢山聞いた。

でも、桜の木の話はあまり聞いていなかった。


「最後に一つだけ教えてほしいんだけどさぁ・・・ ちよの名字は?」


野伊のい。」


野伊・・・!?

あれは咲人の親の家であって、野伊家は関わってないよね?


「はーっはっはぁ!こりゃ面白い!満足したよ俺はぁ!」


「次はそっちの番よ。洗いざらい情報を吐いてもらうわ!」


「分かった。お前らが満足するまで教えてやろう。まず何が知りたい?」


この男の正体を、私はもう思い出していた。

次世代魔術研究所の・・・


「あなたの正体は、次世代魔術研究所の、折田おりたね?」


「いやぁ、勘が鋭いねぇ。大正解。でも、今は正式なメンバーじゃないんだ。」


「どういうこと?」


次魔研じまけんに裏組織があってね。そこのリーダーを務めている。」


「研究内容は?」


「まああまり細かいことは言えないが・・・ 人の脳を操って、強力な魔術を発動するっていう研究だ。」


「その被験者がその瑠音なのね。」


「その通り!こいつは大変優秀でねぇ。何百人もの被験者はくたばっちまったけど、こいつは生きてる。」


何百人も・・・!?

本当に酷い組織だ。


「何でその子が成功したのかは分かってるの?」


「まだ未完成の魔術は、被験者と魔術が適合していないと失敗しちゃうんだ。で、瑠音はたまたま適合してたってわけ。で、俺はこいつの管理をしている。」


「その子、適合しているとはいえ相当無理してるみたいだけど、その調子だといつか死ぬんじゃないの?」


「ああ、そうだ。だから手早く済ませたいんだよ。さっさとさくらを手に入れて、魔術起動装置を付ける。そうすれば、俺が世界の支配者になったも同然だ。」


「元からさくらを生かすつもりなんて無いわけね。なら、あんたを殺すだけよ。」


「よーし、じゃあ先手は貰うぞ。」


瑠音が、魔術の太いビームでバリアを破壊しようとする。

さくらはバリアを張ってから、反撃をする。

その隙に、私は折田を五階に誘導する。


「その程度のバリア、すぐ破壊できるわよ!」


さくらの魔術の刃は隠さずに使い、バリアを破壊していく。

あまりにもバリアは脆く、すぐに破壊できそうだった。

何か策略があるに違いない。


「破壊される前提の作りだからな。お前も上で戦いたいんだろ?」


「そうよ。五階で戦いましょう。」


「望むところだ。お前さえ潰せれば、さくらを言い負かすことができるだろうからなぁ。」


「逆に私があなたを殺せば、瑠音は攻撃をやめるかもしれないわね。」


「ああ、やめるだろうな。そういう作りになっているから。」


ここは、攻撃戦ではなく持久戦に持ち込む。

倒せそうな相手ならそのまま倒すし、倒せない相手ならさくらが勝つことを祈るだけ。



「お前が武器を使うなら、こっちも武器を使ってみようか。体術なんてものは使わんがね。」


折田がそう言うと、折田の後ろから私をめがけて無数の槍が飛んでくる。

魔術弾を斬るのには慣れているけど、槍を斬るのにはあまり慣れていない。


「とりゃぁっ!」


「大分苦戦しているみたいだねぇ。ずっとこれを続けてるだけで勝ってしまいそうだ。」


「それはさせないっ!」


私は折田との間合いを詰め、一気に斬りかかる。


「今回のバリアは本気だぜぇ?」


「あうっ!」


バリアに攻撃した時の反動で姿勢を崩しそうになる。

これは、ただのバリアではないみたいね。


「隙あり!」


折田は上から沢山の矢を降らせる。

私はやむなくバリアのトラップをさくらの刃で誘発させ、守る。


「設置魔術か。まあ、数に制限はあるだろう。何度不意打ちに耐えられるかだな。」


「悪いけど、ここからは持久戦よ。」



―――――二時間後



持久戦は二時間も続いた。

私は、そろそろ体力の限界が来ている。

折田は、かろうじて余裕を保っているように見える。


「そろそろ詰めと行きたいところだが、ちょっと邪魔者が入ったみたいでねぇ。」


「邪魔者を片付けるなら勝手にしなさい。それなら私は休憩するわ。」


「ほぉ、見知らぬ他人の命はどうでもいいってことか。お前も結構ワルに向いてるんじゃねぇかぁ?」


「そうよ。私はさくらのためなら悪にだってなれる。」


「そうか。期待しているぞ。じゃあ、三階にいる邪魔者を片付けてくる。」



一気に緊張がほどけ、疲れがどっと来る。

さくらはまだ戦っているけど、今行っても足手まといね。


休憩を取っていると、さくらから魔術メッセージが届く。

「倒したよ。早く来てほしい。」

さくら、やるじゃない。



―――――廃墟 四階



「特に怪我はしていないみたいだけど・・・ 意識はないわね。」

「無理しすぎて、しんじゃったんだと思う。」

「こんなところにいてられないわ。あの男を絶対に逃がしちゃいけない。」

「うん。」



―――――廃墟 二階



髪の長い男と、気が強そうな女。

折田が言っていた邪魔者は、こいつらね。


折田が邪魔者を仕留めようとした瞬間、さくらの魔術が発動する。


「二人とも、ここまで足止めしてくれてありがとう、感謝するわ。本当に強いのね。」


「俺たち・・・ 生きているのか・・・?」


「くっそ、あいつくたばりやがったか!悪りぃが退散させてもらう。」


折田は、煙の魔法で目くらましをして逃げようとした。

絶対に逃がすわけにはいかない。

大切な情報を教えてしまったし、なんといっても存在が許せない。


「逃がさないわ!」

「みつけた。」


さくらが折田に向けて、複数のビームを撃ち込む。

だが、瑠音は生きていたらしく、守られてしまった。


「あの子、生きてた。」

「防がれたのね・・・ まあ、逃げてくれたならそれでいいのかしら・・・」


「助けてくれて、ありがとうございま。す」


短髪の女の子が、丁寧にお礼をしてくれた。

この子、結構しっかりしているのね。


「ありがとうございます。」


それに続いて男もお礼をした。

見た目はちょっと不気味だけれど、結構しっかりしてそうだった。


「こちらこそ、あなたたちが折田を引き付けてくれなかったら、危ないところでした。ありがとうございます。」


「折田って・・・ あの身長の高い男の人のことですか?」


「そう。次世代魔術研究所のメンバーよ。折田おりた 真也しんや。」


「涼太、気付いてなかったの?」

「折田って、あの!?あいつ、整形でもしたのか?」

「どうみてもしてないでしょ。ファッションを変えてるだけ。涼太はそういうとこ鈍いんだから」


この二人、結構仲が良さそうだった。

見た感じは、ただのライターとキャスターのペア。

でも、色々と深い関係がありそうに感じる。


「何でそんな人が俺たちを襲ってきたんだろう?魔術の森がやっかいだとかなんとか・・・」


魔術の森・・・!?

咲人、晶が入っている「雲散霧消」の天敵じゃない。

でも、今となってはあの二人は関係ない。

もう、私たちは私たちの世界で生きているのだから。


「あなたたちは見ていないのね。瑠音のこと。」


「ルネ?」


「私たちが戦っていた相手よ。瑠璃の瑠に音色の音で瑠音。折田が研究している魔術起動装置を付けられて、無理やり強力な魔術を発動させられてるの。」


「上層部が隠蔽していたのはそれね。クラッキングの話も頷ける。」

「クラッキングってまさか、その起動装置とやらにか?」

「そりゃそうよ。そんな恐ろしい機械、早く外さないと。」

「でも、瑠音から装置を外しても、他の人が装置をつけられたら結局いたちごっこじゃないか?」

「瑠音しかつけられない、みたいなのがあるんじゃないの?」

「んなバカな。」


「そうよ。現状、瑠音しか装置をつけることができないの。」


「相性・・・の問題ですか?」


勘がいいのね、この子。


「折田は、次世代魔術研究所で秘密裏に行っている研究のリーダー。瑠音は、何百人もの人体実験の犠牲を出してようやく成功した一人なの。そして、折田はその瑠音の管理役をやっているわ。」



「なるほど・・・ で、あなたたちと折田の関係はなんですか?」


「さくらが折田に追われているの。研究対象にしたいって。ほら、さくら、自己紹介して。」

「さくらです。十二歳・・・ 魔術師です。」


さくらは緊張していた。

普段から見知らぬ人に追われている生活をしているのだから、当然だろう。


「さくらちゃんは、魔導書を読まなくても魔術を使えるの?」


「魔導書は、いらない。」


「記憶力がいいのね、さくらちゃん」


「うん・・・」


とりあえず、この方たちが誰なのかを聞きたかった。

まずは、私から自己紹介する。


「そういえば、自己紹介がまだだったわ。私は内池ないち 浩美ひろみ。さくらの保護役みたいなものよ。」


「俺は夏目なつめ 涼太りょうた。魔術の森のメンバーです。」

「私は野守のもり 玲音れおん。同じく魔術の森のメンバーで、涼太とパートナー関係です。」


「敬語じゃなくていいのよ。さくら、あんまり堅苦しいの好きじゃなくてね。」


雲の人達は上下関係が厳しい。

敬語は雲を連想してしまうため、あまりさくらの前で使ってほしくなかった。


「すいません、タメでいきます」

「すでにその発言が敬語なんだけどー?」

「急に変えるって難しいだろ!?」


「気にしすぎなくてもいいわよ。まあ、さくらがちょっと訳ありだから、仲間になるには気遣いが必要なのよ。」


「数時間前、私たちが別の場所で戦ってた時に助けてくれたのってさくらちゃんだよね?」


「うん。戦いの邪魔してごめん。」


「いやいや、気にしないで。私たちが気になるのは、さくらちゃんが雲散霧消とどういう関係にあるのかなーってこと。」


「それは、言えない。」


流石にそれは言えないと思う。

それは、さくらの正体に関わることだから。


「ひろみ、つかれた。」

「ごめんね、さくら。こんなに戦いを長引かせちゃって。疲れちゃったよね。今日は帰ってゆっくり休もっか。」


さくらはよく頑張ってくれた。

さくらの疲れ切った顔を見ると、早く帰って休ませたくなる。


「あの二人、追ってこない?」

「うん、大丈夫だよ。あの子は死んじゃったし、まだ基地はたくさんあるからね。」


あの状態で最後に強力な防御魔術を使ったんだから、生きてる方がびっくりするくらいだ。


「瑠音ちゃん、死んじゃったの?」


「分からないけど、生きてる可能性も高いわ。今度会ったら絶対に殺すけどね。」


「殺さなきゃだめなの・・・?起動装置を解除するとか、できないの?」


「できないわけじゃないけど・・・ 私たちは何よりもさくらの命を優先するの。瑠音や折田が死んでしまっても構わないわ。」


「そりゃ、当然よね・・・」


人命救助も行っている組織、「魔術の森」の人達だ。

命を大切にするのは当然だろう。


さくらの休息を取るために、ここは解散して早く帰った。

基地を作らせたくなかったので、林の中の基地に戻る。

もう設置魔術は全て消えていたので、安心して戻ることができた。




―――――睡眠に落ちた後。



「ここはどこ・・・?」


気が付いたら、私は暗い森の中にいた。

さくらは、どこにいるんだろう。


突然、周りから狼が何匹も襲ってきた。


「嫌・・・ 怖い・・・!」


空を見上げると、満月が二つあった。

これは・・・ 夢?


「そうだ、刀が・・・ 無い。」


狼が一匹、近づいてくる。

そして、私の体に噛みつく。


「があっ!痛いっ!!」


夢じゃない・・・!?

いや、これは現実でもない。


狼は去っていったが、痛みはなかなか引かず、私は悶えていた。


「うううう・・・ さくら、助けて・・・!」


しばらくすると、痛みが引いてくる。

傷は、かなり浅くなっていた。

やっぱり、夢・・・?




気が付いたら、私は暗い砂漠にいた。


沢山のライオンが襲ってくる。

そして、目の前にさくらが現れた。


「さくら!さくら!!助けて、お願い!!」


さくらは泣いていた。動かずに、ただただ泣いていた。

そしてライオンは私に噛みつく。


激痛が走る。


「があああああぁっ!いやああああっ!あああああぁぁっ!」


さらに傷を抉られるように噛みつかれ続け、私の意識は深い闇に落ちていった。





―――――目が覚めたとき



「ここは・・・ どこ?病院?」


「ひろみ、無事だったんだね、よかった・・・!」


さくらが泣きながら私の無事を喜んだ。

何があったのかさっぱり分からない。

悪夢を見て、気絶しちゃった・・・?


「ひろみはあやつられてたんだよ。ぐすっ。ちゃんと、助けられてよかった。」

「え、魔術起動装置に・・・?」


「浩美、お目覚めおめでとう。」


え、明美あけみ・・・!?

姉の明美が、ナース服を着てお目覚めを祝ってくれた。

どうしてここに?


「あら、明美じゃない!ここで働いてるの?」

「そうだよ。こんな裏組織で働くことになったの、あんたのせいなんだからね?」


裏組織の病院にしては、とても綺麗な内装だった。

明美も、さくらのせいで色々と面倒ごとに巻き込まれちゃったんだろう。

私の家族にも、たくさん迷惑をかけてしまった。


「えっと・・・ 何から謝ったらいいのか・・・。」

「気にすんなって!あたしが金に狂ってたの、知らないんでしょ?」

「金に狂ってた・・・?もしかして、ここで働いてるの、そのせいなんじゃ・・・?」

「荒れてた頃にさ、変な奴らに浩美の情報さんざん吐かされて、で最終的にここに入れられたってワケ。」

「それはむしろ、助かったのでは・・・?」

「まぁね。お互い様さ。」


明美が看護師なら、裏組織の病院でも安心できた。

どうやら私の脳に相当ダメージを受けたらしくて、もう魔術は使えなくなってしまった。

体も影響を受けていて、大分動きが鈍くなっている。

でも、折田がかなり重症を負わされたらしく、今は車椅子生活らしい。

魔術が無いとはいえ、これでしばらくは安心して暮らせそうだった。




―――次の日



「失礼する。」


涼太くんと玲音ちゃんだった。


「さくらちゃん、失礼するね。」

「あら、来てくれたのね、ありがとう。」

「症状はどうだ?」

「魔術はもうだめみたい。護身術なら前ほどではないけど、なんとかなりそう。」

「そうか・・・」


「そういえば、浩美は護身術は何を使ってるの?」


そういえば、この二人はまだ見ていなかった。


「刀一本だけよ。前は私の魔術で追加の刃二本とさくらの魔術の追加一本があったけど、今はさくらの一本だけ。」

「物理と魔術の両方で攻撃できるというわけか。同じ刃なら複合攻撃も可能ってことか。よく考えられている。」

「私たちも参考にしちゃう?」

「いや、これはさくらという最強のキャスターと共に行動するから成り立つものだろう。この戦法は一対一向きだ。」

「なるほどね・・・ 戦い方が全然想像つかない。」

「動画、あるよ。」

「さくらちゃんが撮ったの?見てみたい!」


さくらは、魔術で動画を撮ることができる。

見たものを脳で直接記憶するため、科学の世界で言う「画質」なんてものは存在しない。

それにしても、こんな古い記憶、よく覚えてるわね。


「浩美、すごいじゃん!こんなに強かったなんて・・・」

「さくら、このデータは何の媒体に保存されてるんだ?」

「私のあたまのなか。」

「記憶の仕方が普通と違うんだろうな。非常に興味深い。」


「そういえば、私たちがお見舞いに来たのは、ちょっと理由があるの。」


何か悪いことを考えてそうな顔でそう言われた。

多分勘違いだと思うけど。


「どうしたの?さくらは渡さないわよ。」

「さくらじゃなくて、浩美ごとというか・・・ 私たち組織を解雇されちゃって、それからの事を話し合っていたんです。それで、浩美とさくらと手を組みたいの。」


こちらも身を守ってくれる人が必要だったので、それは非常に助かる。


「それはこちらとしてもとても助かるわ。」

「ひろみ、二人きりじゃなくなっちゃうけどいいの?」

「お二人さん、とても仲が良いようで・・・ まあ、協力関係を結ぶだけで別に一緒の家で暮らすとかじゃないぞ。」

「あら、私たち、もう協力関係じゃない。」


この二人のことは、もう味方だと思っていた。

さくらと強力して私を助けてくれたらしいし、それはもう協力関係だ。


「そういうことじゃなくて、さくらの魔術や魔術起動装置など、未知の存在を知るための協力が欲しいんだ。」

「さくらの魔術についてはさくらに任せるわよ。悪いけど、身体検査とかはさせないからね?」

「医者でも科学者でもないし、別にそういうことは無理強いしないよ。」

「医者や科学者だからって必ずしも無理強いはできないっての。さくらちゃん、私なら大丈夫かな?」

「だめ。」


さすがに、さくらにも秘密があるものね。


「前から気になってたんだけど、浩美とさくらはどういう関係なんだ?」

「説明がとても難しいというか、私たちもよく分かっていないんだけどね・・・」


この質問には、非常に答えづらかった。

咲人とか晶なら、簡単に答えられちゃうんだろうなぁ。


「私はひろみのこと好きだよ。」

「え、ひ、ひゃぁっ?さくら!それはどういう意味で?」


いきなり告白されたかと思って、びっくりしてしまった。

さくらは、改まってこういうことを言うタイプではないから。


「・・・こい、びと。」

「ちょっと、今まで言わなかったわよね?それ!さくらも成長して、ようやく分かったのね!」


両想いだったのね。

それなら、これからもっと幸せな時を過ごせそう。


「・・・大体分かったわ。」

「ああ、俺も察した。」



こうして、平和な生活と、さくらとの新しい関係が始まるのでした。

花は咲き、そして・・・

外伝一作目で大変な過ちをしていたことに気がつきました。即修正します。

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