第二話「禁断の関係」
百合しながら、世界観を広げていく回です。
最初は、戸籍が必要ない裏仕事でも見つけて、何処かに泊まりで生活することも考えた。
でも、さくらは私のことを心配してくれた。
裏仕事は基本的に危険な仕事だ。
命の危険が常にあることは私もさくらも心配だった。
そこでさくらが提案した。
私が秘密基地を作るって。
前も秘密基地を作っていたけど、それは誰もいない林に少し魔術を施して小屋のようにしたものだ。
住めるほどの家を作ったら、さすがに管理者も黙っていないだろう。
廃墟も同じで、土地の所持者がいる人がいる以上、改装して住むなんてことはできない。
それをさくらに話すと、さくらは、じゃあ地下はどうなの?と提案する。
地上の建物を改装するのと地下に部屋を作るのでは、難易度が圧倒的に違う。
それでも、さくらなら出来る気がした。
「ここが例の廃墟ね。ゴホッ、ゴホッ。汚いし、変な虫が沢山いるし、何と言っても埃が酷いわ。」
「じゃあ、まずここをそうじするよ。」
さくらの魔術によって、あっという間に廃墟の中は綺麗になった。
不潔じゃないというだけで、見た目はただの廃墟なのだけれど。
さっそく今いる廃墟にさくらが防音魔術を施し、私が周りを監視しながらさくらが部屋を作り始める。
作業は難航していたようだが、無事完成したらしいので入ってみる。
部屋の内装は、緑を基調とした色の、柔らかい壁と床。
そして天井の魔術電球、そしてピンクのじゅうたんが敷いてある、というものだ。
壁、床、天井はコンクリートを基礎にしているらしく、耐久性は問題なさそうに見える。
さくらがここまですごいとは思っていなかった。
「すごいわね・・・ こんなに立派な部屋をこんな短時間で作れるなんて。」
「私はまほう少女だもん!」
「でも、一つだけ忘れていることがあるわ。このままじゃ、酸素が無くなっちゃう。」
この部屋には通気口が無かった。
それをさくらに伝えると納得した。
「つうきこう、どこにつなげばいいのかな・・・。」
「廃墟の通気口と繋ぐのはどうかしら?」
ただの思いつきだったのだが、さくらが出来ると言ったので、再び作業を開始する。
「できたよ!これで空気がきれいだね!」
「すごいじゃない。あとは増築して、家具を揃えたら完成ね。」
とりあえず一人ずつの部屋、居間、キッチン、風呂、トイレを作ることにした。
電気、水道は設置型の魔術を利用することで解決した。
設置型の魔術は持続時間が決まっているので、何度も再発動しなければいけない。
それでも、さくらにとってはスイッチを押す感覚でできてしまうのだ。
でも、不便なことには変わりない。
そのうち、ちゃんとしたライフラインを繋ぐ予定だ。
「ひろみ、おなかすいた。」
「さくら、頑張ったものね。何か食べよっか。」
私もお腹がすいていたので、すぐにスーパーマーケットに行った。
財布に数十万円は入れてきたので、生活費はしばらくは問題ない。
最近は農業への魔術利用も進んでおり、野菜がとても安くなっている。
肉や魚は相変わらず高いが、魔術で稼げる家庭では、はした金程度で買えるレベルだ。
せっかくキッチンを頑張って作ってくれたんだし、さくらに料理を振る舞うことにした。
「米を炊くのは時間がかかるから、温めるだけのご飯を買うわよ。」
「まほうで炊いたほうがおいしいよ?私ならすぐだし。」
手伝ってもらうのはちょっと気がひけるけど、お米はさくらに任せることにした。
あとはまな板、フライパン、食器、スプーン、包丁、ピーラー、サラダ油、卵、玉ねぎ、人参、ピーマン、鶏肉、塩コショウ、ケチャップ、そしてオイスターソースを買って、基地に戻る。
食器などは魔術で作れるのだけど、さくらにあまり負担を与えたくなかった。
作るのはオムライスだ。
肉と野菜を細かく切り、サラダ油を敷いてから、塩コショウで下味を付けた肉と、野菜を炒める。
そして、お米を入れる前にケチャップとオイスターソースを入れ、調味料を少し焦がしながら水分を飛ばす。
魔術による水分の調整、そして味の調整がないので、野菜を細かく切って、炒める時に水分を効率よく飛ばしたり、子供でも食べられるように野菜の苦味を感じにくくしたりと、工夫をする。
ある程度水分が飛んだら、さくらが炊いてくれたお米を入れてから、混ぜるように炒めて、チキンライスの完成。
味見してみると、丁度いい塩加減の美味しいチキンライスになっていた。
あとは、最後に薄焼き卵を乗せて完成。
ケチャップだけでなく、オイスターソースを入れることによって中華風の味になり、味付けにパンチが効く。
さくらは私のオムライスを気に入ってくれたみたいで、美味しそうに完食してくれた。
食べ終えた後はソファーやベッドを作り、生ゴミをさくらが魔術で処理した後、基地を完成させた。
そして、二人でお風呂に入る。
「あったかくてきもちいい。あれ、ひろみどうしたの?」
「いや、さくらは可愛いなーって。」
「そんなにかわいい?ひろみは大人っぽくてかっこいいけど・・・」
「さくらは、さくららしくいればいいのよ。」
やっぱり、さくらは可愛い。
どういう意味で可愛いのかはよく分からないけど・・・
これからの生活についてもう一度話し合う。
「お金は、私がかせぐよ。ひろみがきけんな目にあうのはいやだし。」
「ありがとう。でも、どうやって稼ぐの?」
「うーん・・・ 五百円玉をたくさん作るとか?」
「さくら、それはバレバレの犯罪よ。でも、金属を作るのは効率がいいと思うわ。」
話し合った結果、さくらがレアメタルを生成し、私が売りに行くことにした。
レアメタルを生成する魔術を使えるのは、ごく一部のエリートだけ。
どんなエリートでも、一度にたくさんは作れないので、かなりの価値がある。
さくらは一度にたくさん作れるので、お金に関してはしばらくは安泰そうだ。
私は、なかなか寝付けないさくらに昔話を聞かせた。
絵本は持っていないので、魔術系統の話の中で、私が覚えているものを選んだ。
「ある山里に、心優しい老夫婦、そしてその隣に欲張りで乱暴な隣人夫婦がいました。」
「優しい夫婦は傷ついた犬を見つけたので、飼うことにしました。」
「その老夫婦はその犬を我が子のように大切に育てました。」
「あるときは立派な木を見ながら『ここ掘れワンワン』と鳴き始めたのです。」
「驚いた老人がそこを掘ると、大量の大判、小判が掘り出され、老夫婦は喜んで近所にご馳走を振る舞いました。」
「それを妬んだ隣の夫婦は、無理やり犬を連れ去り、財宝を探させようと虐待しました。」
「しかし、指し示した場所から出てきたのは、魔女が魔術に失敗して出来た汚いゴミだったため、隣人夫婦は怒ってして犬を殺害し、飼い主夫婦にも悪態をつきました。」
「わが子同然の犬を失って悲しみにくれる夫婦は、死んだ犬を引き取って庭に墓を作って埋め、そして雨風から犬の墓を守るため、傍らに木を植えました。」
「ぐー、ぐー。すーすー。」
さくらは寝ちゃったみたいだ。
疲れていたのか、ぐったりした寝顔がとても可愛い。
薄明かりを消し、私も眠りにつく。
最初は慣れない環境に疲れる日々だったが、次第に慣れていった。
そして、そんな私たちを襲ったのが、怪しい二人組の男女である。
私がさくらと買い物に出かけているとき、途中の人通りの少ないところで、怪しい男に刃物を向けられた。
「何の用でしょうか?」
「さくらについて研究させて欲しい。大人しく身を引き渡してくれれば、乱暴はしない。」
「それはできないわ。そもそも、さくらの情報をどこで知ったの?」
怪しい女が、魔道書を片手に詠唱を始める。
「さくらの親が、悪の組織に入ったのは知ってるな?つまりそういうことだよ。」
咲人と晶が悪の組織に!?
きっと、裏があるに違いない。
とりあえず、今はここから逃げなきゃ。
私が剣を持つ構えをすると、さくらが刀を作ってくれた。
その瞬間、怪しい女が強力な魔術を私に向けて放つ。
さくらがバリアで守ってくれるが、女はさくらの体を掴み、離さない。
これでは、さくらは魔術を発動しにくくなる。
私は、長めのナイフを持って襲いかかってる男に、刀で相手する。
ここであまりやりすぎると、さくらの命が危ない。
ナイフだけ破壊した後、すぐにさくらの所へ行き、まず二本の魔術刃で女の腕を斬りつける。
すると女はさくらを離し、詠唱を開始する。
短い詠唱によって作られた三つの魔術弾は、全て私の刀で切り裂く。
その瞬間、さくらの詠唱が終わり、私たちは空に向かって一気に飛ぶ。
「あの山にいこう、ひろみ!」
さくらがそう言った後、私たち二人は更に加速し、遠くの山までひとっ飛びする。
逃げるのに必死だったが、空を飛ぶ気持ち良さもあった。
風圧による減速で降り立ったのは、滝の近くだった。
さっそく、さくらが地下に基地を作る。
魔術にはかなり慣れたようで、わずか十数分で基地を完成させてしまった。
「ここだと、外のニュースが入ってこないわね。」
「なら、私が回線をつなぐよ。」
「回線って、ネット回線のこと?そんなことできるの?」
「スマートフォンってものがずっと気になってて、しらべたの。」
「スマートフォンが使えるなら、とても便利ね。でも、元になるスマートフォンはどうやって調達するの?」
「これ、あの女のもの。」
「奪ったのね。でもそれを持ってると、居場所を特定されてしまうのよ?」
「一回こわしたから、だいじょうぶ。」
前から思ってたけど、さくらの成長って本当早い。私とは大違いだ。
さくらは一度壊したスマートフォンを修復し、私と協力して電波まで繋いでくれた。
山に何個も電波の中継点を作り、街に違法な電波を繋げる。
仲介場所を作るという発想は、距離に制限のある魔術メッセージの仲介が元だろう。
それから、山の中での生活が始まった。
最低限の食材と調味料は、山から降りてスーパーマーケットに行き、調達する。
家は地下だけど、外に出ると澄んだ空気が心を癒してくれる。
前の基地とはまた違った感覚で、解放感がとても心地良かった。
「さくら、ゲームしてるの?」
「うん、デイドリってゲーム、ずっとやってみたったから。」
Daydream Online、通称デイドリ。
可愛いアバターを着せ替えて、チャットしたり戦ったりする、大人気オンラインゲームだ。
「さくらは二刀流なのね。巫女服を着てるから、弓とか似合いそうだけど。」
「いや、私弓使いだよ?」
「弓は使わないの?」
まだ小さいさくらは、複雑なゲームシステムはあまり理解できないのだろう。
「この剣は、アーチャーのユニークスキルのマナアロー。武器を持ってない手は魔法の矢を持って戦うの。」
「今はユニークスキルなんてものがあるのね。たしかに、そこは敵が素早いから、二刀流が有利ね。」
「弓に持ち替えたよ。弓を持って魔法を使うの。私は魔法使いだからね。」
さくらは、ユニークスキルによって生成された魔法の矢と同時に、別の魔法を弓から射出した。
弓から魔法を射出するシステムは昔からあった。
物理と魔法の兼ね合いが難しく、見た目だけの職業だったのだけれど。
「もうボスを倒しちゃったのね。さくら、強いじゃない!」
「課金のおかげだよ。これでも補助職なんだけどね。」
さくらにオンラインゲームの才能があったなんて、意外・・・
とても饒舌にゲームを語るさくらは、とても九歳とは思えない。
「巫女服かぁ... 現代に巫女なんていないけど、ゲームならなりきれるからいいわよね。」
「ねえひろみ、こっちの服の方が可愛い?」
さくらのアバターは、キュートなドレスに着替えられていた。
「これも可愛いわね!これを普段着にして、戦うときは巫女服ってのはどう?」
「うん、そうする。でも、私は青い巫女服が欲しいの。」
青い巫女服。恐らく、月のマップに出てくる銀の妖狐が落とす服のことだろう。
私がやっていた当時は、二千時間狩りして一つ落とすという、伝説の服だった。
「オークションに売ってないの?」
「価値が二十億ゴールドを超えてるから、オークションにはないよ。」
二十億ゴールドは、プレイヤーが所持できるゲーム内マネーの最大値。
どうやら、私がプレイしていたときより、相当インフレが進んでいるようだ。
「百八〇万円で買えるから、買おうか悩んでるの・・・」
「現金トレードはやめておきなさい。」
このデイドリというゲーム、現金とゲーム内アイテムの取り引きが盛んなのだ。
運営は当然それを禁止してるけど、このゲームの時給はあまりにも良すぎる。
だからゲーム内の稼ぎが、社会からドロップアウトした人達の収入源となってしまっているのだ。
デイドリが時給八〇〇~三〇〇〇円。
魔術に関係の無いアルバイトが時給五〇〇~七〇〇円。
魔術関連のバイトが時給二五〇〇~八〇〇〇円。
ちなみに、さくらの稼ぎは時給六〇~八〇万円だ。
デイドリは、魔術を使えない貧民たちにとって、絶好の稼ぎ場。
だから当然、組織単位で稼ぎを出すところもある。
裏組織との繋がりが深い以上、目立つような真似は避けたいのだ。
「じゃあ、攻撃力五千くらいの両手剣を買って交換することにする。」
「私たちは生き残るために訓練しなきゃいけないんだから、あんまりのめり込みすぎるんじゃないよ?」
「魔術の訓練もちゃんとしてるもん。それより、今日の晩ごはん、どうするの?」
「山菜と、焼き魚と...」
「えー。山菜もう飽きた。」
「じゃあ、久しぶりに買い出しに行く?」
「うん!ケーキ食べたい!」
「もう、さくらったら。それはデザートでしょ?」
晩御飯を食べた後は、休憩してから生活の計画立て。
そして、布団につく。
「ねえひろみ、もっとくっつこう?」
さくらは甘えたいんだろう。
お父さんがいないから、相当寂しいはずだ。
「えっと、これくらいかしら?」
「もっと!ぎゅーってして!」
「えっと・・・」
大人びてるのにまだ子供なさくらが可愛い。
何故だろう。胸が高鳴って止まらない。
「ひろみ、どうしたの?」
ダメよ。さくらはまだ九歳なの。
「ぎゅ、ぎゅーっ。」
「なんか、ひろみ、恋してるみたい。」
十七歳の私が、九歳のさくらに恋なんてしちゃダメ。
駄目・・・?
何で?
恋は法律で制限されてないし、そもそも今の私たちに法律は関係ない。
じゃあ・・・
「ぎゅっ!ぎゅーっ!」
何で幸せなんだろう。
咲人と晶が大切にしていたのは、これだったのね。
「ひろみ、私もう寝るよ?」
「おやすみなさい、さくら。」
いつ怖い人が襲ってくるか分からない生活。
それでも、私たちは幸せを求めて生き続けた。
幸せを求める二人の関係は、言葉では表現できないほど複雑で、深いものになっていった。
複雑といっても、良い意味の複雑さ。
色々な関係性や気持ちが交錯して、かけがえのない絆が生まれる。
やがて散ることを知らない桜は、終焉に向かって咲き続ける。
そしてそれを見る者も、永遠を信じていたのであった・・・
wikipediaより引用、および改変させていただきました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%B1%E5%92%B2%E3%81%8B%E7%88%BA
花咲か爺 2017.5/18のデータ




