第一話「感情の激流」
やっと書き始められました!百合外伝!
百合だけでなく、世界観を奥深くする要素満載なので、期待していてください!
私、内池 浩美はコンプレックスを抱いていた。
私の父は、エリートキャスターの内池 光、
母は、エリートライターの内池 里見。
そして姉の明美は、若い頃からキャスターとして優秀な成績を残している。
なのに、私はライターとしてもキャスターとしても中途半端で、レベルも低い。
親に勉強や訓練を勧められ、必死にこなした。
それでも、あまり成長しなかったのだ。
そして、思春期が来た。
能力のコンプレックスもあるのだけど、それよりも辛いものがあった。
男性を恋愛対象として見れないのである。
私は女性が好きだ。
私は別に男になりたいとは思わない。
でも、可愛い同級生、背が低くて小動物のような彼女のことが好きで仕方ないのだ。
私が男だったら付き合えてたのかもしれないけど、女の私には想いを伝える勇気がなかった。
そして十四歳の時。
私は、剣道部に所属していた。
魔術はダメだし、科学やコンピューターも得意じゃないから。
本来、剣道は娯楽かあるいは、ライターの護身の特訓のものだ。
魔術による強化の無い剣では、魔術には全く太刀打ちできない。
それでも、私のキャスター能力が上がれば、レベルの低い治安部隊くらいなら入れると思った。
幸い剣道の才能はあり、学校一番とまではいかないけれど、強くはなった。
「はぁ・・・。今日は練習しすぎて疲れちゃったわ。帰ってゆっくり休まなきゃ。」
強くなろうと必死で、ついつい頑張りすぎてしまう。
そのせいで、幸か不幸か、その事故は起こった。
歩道橋の階段を登るときだった。
雨が降ったせいで地面が濡れていて、滑って転んでしまった。
まずい、このままだと階段から落ちてしまう。
受け方を間違えなければ死にはしないけど、怪我は免れない。
―――そんな時だった。
「あぶないっ!」
私の体が、繭のような地面に転がった。
何が起こったのかは、さっぱり分からない。
でも、これだけは言える。
私は誰かに助けてもらった。
これは、おそらく魔術なのだろう。
でも、こんなすごい魔術を一瞬で発動できる人がいるなんて知らなかった。
どんな人か気になっていた時、小さい女の子が話しかけてきた。
「お姉さん、大丈夫?」
私は最初、この子の親か誰かが助けてくれたと思った。
魔術は大抵、六~十二歳頃から習い始め、十五歳頃から熟練するもの。
「大丈夫だよ。この魔術はなにかしら?」
「私のまほうだよ!」
もう、子供は無邪気に嘘をつくんだから。
とりあえず繭から下りて、その子の姿をじっくり見る。
同級生の、あの小動物のような子とは違う可愛さ。
小学生になりたてくらいなのに、妙な凛々しさがある。
その子は魔術で繭を持ち上げ、高く舞い上がった繭は弾けて雪のように降り注いだ。
本当にこの子の魔術だったんだ・・・!
「助けてくれてありがとう、大怪我するところだったわ。すごい魔法じゃない。わたしもこんな魔法が使えればいいのに。」
「私がこわくないの・・・?」
「私のことを助けてくれたじゃない。それに、こんな美しい魔法、初めて見た。ねえ、もっと見せて。」
そりゃあ普通は怖がるだろう。でも、私を助けてくれた。
それに、熟練した魔術は私の憧れだった。
「みんな、私にころされるってにげてくのに・・・」
私には人を殺すような人には見えなかった。
とても優しそうな雰囲気が、見て感じ取れる。
「あなた、優しい子でしょ?人を殺すようには見えないけどね。名前は?」
「うん。私はひとをころしたりしない。私はさくら。」
「さくらって言うんだ!可愛い名前じゃない。私はひろみよ。」
ピンク色の髪と桜の花のような凛々しさはまさに本物の桜のようだった。
桜はもう散ってしまった季節なのに、彼女を見ているだけで、桜が満開に咲いているような気分になる。
見とれていると、そこに二人の男がやってきた。
「さくら、こんなところに居たのか。いくら魔術が使えるからって、一人で勝手にこんな遠いところまで来るんじゃない。」
「さくとお父さん、ごめんなさい・・・」
「あら、すいません。」
「気にしなくていいんです。この子、すぐどっかほっつき歩いては人を助けてるんで・・・」
お互いに対する目つきや仕草は、とても仲が良さそうに見える。
それは、ただの親友ではない、特別な関係に感じた。
「隣にいる方は?とても仲が良さそうね。兄弟って感じでもないけど・・・」
「僕の恋人です。」
「初めまして、野伊晶です。」
男同士の恋人関係は、女同士よりも差別されがちの今。
私に彼女がいたとして、初対面の人に恋人関係ですだなんて、私には言えない。
恥じずにそんなこと言えるなんて、なんてすごい方なんだろう。
「さくとお父さん、なんで言っちゃうの・・・?」
「さくら、これは何も恥ずかしいことじゃないんだ。皆の理解が足りないだけ。」
「やだ・・・ ひろみに嫌われちゃう・・・!」
「私の思った通りね。そう、なにも恥じることじゃない。私は女性が好きなのよ。」
「まさか・・・ さくらを誘拐する気!?」
何でこの人は偏見を嫌いながら、冗談とはいえ偏見的な発言をするんだろう。
まだ若そうだし、未熟なのかな。
「私はひろみについていきたい」
この出来事があってから、私はさくらの遊び相手になった。
さくらが魔術で秘密基地を作ってから、そこで遊ぶことが多くなった。
魔術を使ったおままごとをしたり、魔術で水遊びをしたり。
「ひろみ、鬼ごっこだよ!」
「魔術で飛ぶなんて、そんなの追いつけないわよ。」
「だって、ひろみ足速いんだもん。」
「怪我しないようにね?」
さくらの魔術をふんだんに使って、色々な遊びをした。
魔術がこんなに面白いものだとは、全く思っていなかった。
魔術といえば、仕事に使ったり、犯罪に使われたり、犯罪を守ったり、戦争に使われたり・・・。
大人が使う便利な能力だと思っていたのに、さくらはあまりにも無邪気で。
さくらという存在は、私の中の魔術に対する印象を大きく変えた。
お話も沢山した。
さくらの苦しかったことを聞いたり、夢について語ったり。
「私ね、まほう少女になって、人助けをするせいぎの味方になるの!」
「さくらは、もう魔法少女じゃない。」
「せいぎは、皆に好かれなきゃいけないの。あんなところ、バイバイしなきゃ。」
「なら、二人でどっか遠くに行っちゃう?」
私は冗談で言ったつもりだったのだが、さくらは本気にしてしまった。
「私、ひろみと一緒にどこか遠くに行きたい。私のまほうがあればだいじょうぶだよ!」
「さくら、冗談よ。大丈夫だけど、お父さん達が困っちゃうでしょ。」
「だって、お父さんたちがいると、私きらわれちゃうもん。ひろみといっしょがいい。」
「お父さん達だって、それなりに頑張ってるのよ。」
「でもさ。しんねんをつらぬきとおす?とかいうせいで、いつもまわりとけんかしてるよ?」
聞けば聞くほど思った。
さくらをあの家に置いておきたくないと。
最初は冗談のつもりで言ったことも、二人の中でどんどん本気になっていった。
そして毎日のように、遠くに行くことについて話すようになった。
もはや完全に冗談ではなくなり、本気でそんな計画を立てるようになった。
「きちを作るとしたらここだよね。このはいきょの地下に、きちを作るの!」
「ここで決まりでいいと思う。でも、もっと建築の練習をしなきゃいけないわね。」
「うん!たくさん練習するよ!そして、ひろみのおよめさんになるの!」
「お、お嫁さん・・・?」
「そうだよ!ひろみ、やさしいし、かっこいいもん!」
なんか、さくらを見ているとあの子に抱いていた気持ちと同じような・・・
って、そんな訳ないよね。
計画は本当に実行することになってしまった。
私はもう高校を中退したので、準備は万全だ。
もう、後戻りはできない。
「私はさくらをあなたたちの家から奪うわ。さくらもそれを望んでいる。」
「仲良くやっていけると思ったんだけどな。流石にそれは許さない。」
「追ってくるなら、この刀で相手するわよ。」
「そんな刀一本で何ができるってんだ。さくらだってまだ攻撃魔術は未熟だろう。」
「咲人、この女ただもんじゃないよ。あの刃、一本に見えるけど魔術の見えない刃がもう二本はある。」
最初はこんな本気になるつもりはなかったのに。
さくらを見ていると放っておけなくて。
やっぱり私、さくらのことが・・・
「みんなやめて!ひろみも、たたかうなんてやめよう?」
「ごめんね、さくら・・・ さくら、最後に聞くよ。本当に家出して大丈夫なんだね?」
「うん、ひろみとなら大丈夫。」
もう、決めたの。
私はさくらを守り続けるって。
「魔術も中途半端な十七のガキにさくらを預けることはできないな。お前はさくらを本当に幸せにできるのか?」
「あなたたちはさくらを幸せにできたの?出来る限りのことを本当に尽くしたの?」
「ああ、もちろんだ。」
「なら、なんでそんな若さでさくらを産んだわけ?あなたたちがもっと大人で経験をたくさん積んでいれば、もっと良い結果になってたわよ。」
「くっ・・・」
この二人は、妙な自信に満ち溢れている。
正論一つでこれだ。
相手が言い返す言葉を考えている時には、もう逃げる準備ができていた。
「いきましょう、さくら。」
「うん。どこまでもひろみについていくよ。」
さくらは魔術を使い、柔らかい素材でできた槍を向こうに降らせた。
さくらが戦闘のために魔術を使うのは、これが初めて。
人通りが少ないとはいえ、突然人が現れるかもしれない。
それも考えて、やさしい攻撃をしたんだろう。
でも、十分な足止めにはなるはず。
「ちょっと怪我するかもしれないけど、一度痛い目見てもらうよ!」
晶が魔術弾を十数発放ってきた。
こんなの、さくらがまともに受けたら大怪我じゃない。
通行人のことも考えてないのね。
向こうは防いでもらうことを前提で放っている。
ならここは、防ぐだけ。
こっちの刀の刃は向こうが思った合計三本ではない。
さくらが作ってくれた、もう一本があるから。
私は身に染み付いた剣捌きで、危険な軌道の魔術弾を全て斬る。
咲人の詠唱が終わろうとするが、私たちはさくらの魔術で一気に跳躍する。
それから無事逃げ切り、廃墟に着いた。
OVL大賞2が5/25締め切りなので、それまでに完結を目指します。
そして、カクヨムにて行われる異世界転生「以外」のコンテストが6/1から応募開始なので、6/1にカクヨムのほうにも投稿させていただきます。、




