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メインストーリーの、そのあとで  作者: 山楽かかし
第1章:月華の誓い
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第49話:青空と決意

 騒がしい『神剣の少女(カグツチ)』が剣の中に戻り、俺は大きく深呼吸をした。


「行こう、セレス。ここから離れよう」

「はい……!」


 俺はセレスに手を差し伸べ、泥だらけになった彼女の小さな手をしっかりと握りしめた。


 足場に気をつけながら、2人で崩落した岩壁の斜面を慎重に登っていく。


 一歩足を踏み出すごとに、すり鉢の底に溜まっていた血と肉の焦げた匂いが、少しずつ外の新鮮な空気へと混ざり合っていくのを感じた。


 そして、ついに岩壁の縁を越え、凄惨な死闘の爪痕が残る広場を抜け出した俺たちを待っていたのは、見渡す限りの広大な青空と、目が眩むほどに力強い太陽の光だった。


「あ……」


 セレスが、感嘆の吐息を漏らす。


 ざあっと吹き抜けた風が、彼女の金糸のような髪を美しく揺らした。


 土と青草の瑞々しい匂いが鼻腔をくすぐり、太陽の光が、ボロボロになった俺たちの身体を優しく、そして暖かく包み込んでくれる。


「やっと、空が見えたな……」

「はい。とても、綺麗な青空です……」


 俺は目を細め、どこまでも続く真っ青な空を見上げた。


 つい先程まで、自分たちは凄惨な命のやり取りをしていたのだという事実が、ひどく遠い昔のことのように感じられる。


「……セレス」


 俺は彼女に向き直り、改まって口を開いた。


「さっきは……ありがとう」

「え……?」

「君が抱きしめてくれなかったら、俺はきっと、人を殺した罪悪感に完全に押し潰されて、あそこで心が壊れてた。君が『一緒に背負う』って言ってくれたから、俺はこうして、また前を向いて立つことができたんだ」


 俺が真っ直ぐに伝えると、セレスはパッと顔を輝かせ、それから深く、深く頭を下げた。


「私の方こそ……本当に、ありがとうございます。ショウト様は、ご自身の心を犠牲にしてまで、私を守り抜いてくださいました。私だけの騎士になると言ってくれたあの約束を、命懸けで果たしてくれた……。ショウト様に出会えて、私は本当に幸せです」


 顔を上げた彼女の瞳には涙が滲んでいたが、それは死闘の最中で流していたような絶望の涙ではなく、確かな希望と信頼の光が宿っていた。


 俺たちは青空の下で互いの無事を喜び合い、心からの感謝を伝え合った。


 だが、感動的な空気に包まれても、俺の心にはまだ重く冷たいしこりが残っている。


「……でも、まだ終わったわけじゃない」


 俺が表情を引き締めて呟くと、セレスも真剣な顔つきになり、静かに頷いた。


「はい。私を狙い、アンナの優しさにつけ込み、使い捨てて命を弄んだ……ジェードと呼ばれる人物」


 ジェード。そして、アンナの両親が所属し、王宮の奥深くにまで根を張っているという謎の組織。


 奴らの目的がセレスの『呪い(ちから)』である以上、このまま逃げ続けていても、いずれ必ずまた追手が放たれるだろう。


 俺たちがこれから王都を目指し、彼女の家族の元へ帰ろうとするならば、奴らは最大の障害として再び俺たちの前に立ち塞がるはずだ。


「王都への道を進めば、あいつらを必ず現れる。ジェードってやつも出てくるかもしれない。……セレス、俺はもっと強くなるよ。カグツチの力も、俺自身の力も、全部使いこなして……俺が必ず打ち倒す」

「ショウト様……」

「君の騎士として、君の道を阻む奴らは俺が全員切り伏せる。……一緒に王都へ行こう、セレス」


 俺の強い決意を帯びた言葉に、セレスは一瞬だけ目を丸くし、やがて花が咲くような、今日1番の美しい笑顔を浮かべた。


「はいっ……! どこまでも、お供いたします!」


 それは、追われるだけの逃亡者から、自らの運命と向き合い、戦うことを決意した瞬間だった。


 俺たちは決意を新たに、輝く太陽の下でしっかりと頷き合った。

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