星の砦の再会、北海の修羅たち
氷の道を突き進んだ小船が、蝦夷地・箱館の浜へと乗り上げた。一行が降り立った大地には、清らかな白ではなく、道魄の呪詛が混じった不気味な「黒い雪」がしんしんと降り積もっている。
「……ありゃあ、ひどいな。空まで腐ってやがるぜ」
凱夜が吐き捨てると同時に、周囲の雪原から無数の「氷結の屍人」が這い出してきた。道魄の血を分け与えられ、生者への飢えに狂う傀儡ども。だが、凱夜を囲む女たちの瞳に、もはや怯えはない。
夕霧、お凛、白雪、緋糸、そして阿と吽。彼女たちは皆、凱夜に抱かれ、その荒々しくも深い情愛を芯まで刻み込まれた「凱夜の女」たちだ。極寒の地にあってなお、彼女たちの身体からは凱夜と分かち合った熱い生命力が、揺らめく陽炎となって立ち昇っていた。
「凱夜様、この程度の雑魚、わたくしたちだけで十分ですわ」
夕霧が九つの尾から放つ狐火で屍人の群れを焼き払い、お凛と緋糸は左右に跳ね、熱情を殺意に変えて敵を切り裂いていく。白雪が凍土をさらに凍てつかせて敵を封じ、阿と吽は凱夜の腕の中に一度だけ収まり、その熱を確かめてから影へと溶け、死の杭で大地を穿った。
「くかか、いい暴れっぷりだ。……行くぜ、トシが待ちくたびれてやがる」
女たちが切り拓いた死体の道を抜け、一行はついに星形の城郭、五稜郭へと辿り着いた。城門の前には、漆黒の洋装に身を包んだ土方歳三が、不敵な笑みを浮かべて立っていた。
「……遅かったな、凱夜。死神の野郎は、道に迷ったか?」
だが、土方の視線が凱夜の背後に控える面々――夕霧やお凛、そして凱夜にぴったりと寄り添う阿と吽に及んだ瞬間、その鋭い眼光がわずかに呆れたような色に変わった。
「……おいおい。わざわざ蝦夷地にまでこんな大勢、女を連れてきたのか。相変わらずだな、貴様という男は」
土方は和泉守兼定の柄に手をかけたまま、深く溜息をつく。戦場に不似合いなほどの美貌と、隠そうともしない愛欲の残り香を纏った女たち。しかし、凱夜は土方の呆れ顔を意に介さず、女たちを慈しむように見渡して不敵に笑った。
「……いいじゃねえか。こいつらは皆、俺にとって大事な女たちだ。どこへ行くにも、置いていくなんて選択肢はねえよ」
その言葉に、夕霧たちは頬を染め、一層力強く凱夜に寄り添う。土方はその様子に再び溜息を吐いたが、彼女たちが放つ、極寒を撥ね退けるほどの「熱」を目の当たりにし、口端を皮肉げに歪めた。
「まあいい。……この凍えた砦には、そのくらいの毒気があった方が丁度いいかもしれん」
凱夜は土方の横を通り抜け、禍々しい霊気が噴き上がる城の深淵を睨み据えた。
「道魄のジジイ、五稜郭を『腐った苗床』に変えるつもりらしい。……トシ、軍議は後だ。まずはこの城に巣食う不浄を、俺の女たちと一緒に掃除させてもらうぜ」
凱夜の一声で、女たちが誇らしげに、そして熾烈な殺気を帯びて五稜郭へと足を踏み入れる。会津で一度は凍りついた彼女たちの魂は、凱夜の熱と北の闘争を経て、より強く、美しく再生していた。




