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じゃ、探偵らしく 1

「話には聞いていたけど、依頼人の家庭はかなりヘコんでるみたいだなぁ」

()()()()()どころじゃないわよ。奥さんなんて、メンタル崩壊なんてもんじゃなかったわ」

「そんなに……ひどい?」

「半狂乱て、まさにあの事よ。もう、びっくりしたわ~」

「巷で精神の病がどこまで理解されてるか……その辺りは不明っすけど、悪霊云々とか噂されるのも、ここのご時世じゃ()もありなんっすよ」

「これで、心中は真実だったってなったらと思うと、気が重いわね~」

「コウさん、現場はどうだったっすか?」

「ああ。一応、発見されたところは見まわったんだけどね」

「町から出た直ぐの森を突っ切る、樹木のトンネルって呼ばれる鬱蒼とした街道のそばで首を括ってたって話でしたっすが?」

「警衛所に行って事件を担当した警吏に詳しい場所と、当時の状況を聞き出したんだけどね」

「最初はあまり……協力的……じゃ、なかった」

「解決済み事件の蒸し返しっすからねぇ。おまけに俺たち余所者っすし、あんまりいい感情はしないのも道理っす」

「だけど……」

「ん? なに、真鈴?」

「コウさんが……銀貨握らせたら……急に、機嫌がよくなって……」


 毎度おなじみの贈収賄工作。思わず苦笑いの由美・良介。


「王都も地方もその辺は変わんないね~」

「褒められたことじゃないっすけど、そうやって上手いこと廻ってんすねェ。探偵業(俺たち)としちゃぁ、悪い事ばかりじゃないっす。あ、ごめんすコウさん。続けて欲しいっす」

「んで、場所と、通報うけて駆けつけた時の状況も教えてもらったんだ。殴り書きに近いけど、二人が首吊った状況も絵で記してくれたよ。出動記録用にスケッチしたものを模写してくれたんだ」

「へ~。そんな記録残すのねぇ」

「遺体の、状況も……ちゃんと……窒息で、目や舌、が……異常に、飛び出てる、状況も……描かれてた……見る?」

「え~、マジぃ~。いやぁ、画でも食後に見るのは、ちょっと~」

「そうっすね。ちょいと時間置きたいっす。で、現場が?」

「あれから三週間がとこは経ってるから、草とかも伸びてるらしくてあまり良くは調べられなかったんだよな。一応、縄が括られていたらしい枝も見てみたかったんだけど、足場が悪くてね。真鈴に肩車してもらうワケにも行かなかったし、その逆も……」

「脚とか……触られるのは……ちょっと……」

「当然ね! どさくさに紛れて頬ずりスリスリしてくるかも!」

「いくらコウさんでも……そういうのは……いや……」

「おまえら~。ホンっトに、そう言う色眼鏡ヤメロって! おれがそんな手の早い性格なら未だ童貞に甘んじてねぇよ!」

「威張って言う事でも無いでしょ~? 全くもう~」

「他の、人に……聞かれたら、恥か……しい。慎ん、で」

「誰が言わせてんだ、誰が!」

「まあ、コウさんの性癖は置いといて……」

「性癖ってなんだよ、良さんまで!」

「とにかく明日、もう一度現場、行ってみるっす。やっぱり全員で現場状況とか共有しておかないと、齟齬が生じると見落としも出るっすからね。コウさん、真鈴ちゃん。案内お願いするっす」


 というわけで明日は全員、改めて現場を検証することになった。




「なんでこんな簡単な事に気が付かなかったのよ、アズマぁ!」

 由美さん、プンスカプンプン丸。

 翌日、探偵団一行は揃って心中現場へ赴いて、検証を始めていた。

 

 そこは"樹木のトンネル"と言われているだけあって、草木が高密度で茂っており、街道の両側からの枝葉が道を覆うように伸びまくっており、なるほどトンネルと言われるだけは有る状況だった。

 しかし距離的には町から近く、徒歩で30分程度。死出に向かう男女が選んでも別段、不思議ではない立地だ。ではあるが……。


「この樹で間違いないっすね?」

「描いてもらった図、二本揃って生えてる太さ10cmくらいのカランマ杉の横にあるトリアーノ松の枝らしいから……ほらこれ」

「特定に……一時間、くらい……かかった……」

「ふ~ん。位置的にはやっぱココっすね。で、地上から3mちょいの高さの、あの枝にロープが掛けられてた、と」

「結構、高い位置にあるのね~」

「太さも~、うん、大人二人くらいは余裕っすね、あれだけあれば……でも、なんでこんなところまで来たんすかね?」


 そう、不思議では無いのだが、なぜここなのか? と言う疑問には答えがハッキリとは出てこない。


「警吏は……逢引の、思い出の……場所、とか……街道の……往来、そこそこ、多いから……愛し、合ってた、アピールした、かった……とか、言って、た……」

「え~? 思い出の場所説はともかく、アピールなんか、するかな?」

「あと、街道から近いから、とも言ってたけど、それが一番マシかな?」

「そうかしら? 心中なんだしぃ~? 人目に付かない、もっと奥の方へ潜ってひっそり……じゃないかな~?」

「どれもこれも、スッキリしない説っすねぇ。まあ、自殺なんてする人ってまともに脳ミソ動いて無いと見るべきっすから、考えても無駄かもしれないっすね」

「ヴィータさんの豹変とか見てると……そう考えた方がいいのかなぁ~?」


 フィクションであれば探偵は殺人等、人の生き死にに絡んだ事件に対峙する事が多い生業ではあるが、巷の探偵はそこまでの仕事に携わるどころか、下手すれば得た秘密をネタに恐喝等、犯罪を犯す側へ転ぶ事例もチラホラ。まして殺人事件では無いモノの、死んだヒトの再調査など初めてのアーリウム探偵団。どう、思考を持って行くべきか、戸惑いは隠せない状態だ。


「その辺の心理も探りたいとこっすけど、取り敢えず今は……」


 現場の再検証だ。ヘンリーらの気持ちも、その死に方で読み取れる事象もあるかも、だ。


「この枝からロープを垂らして首を吊った、と……今んところ何も無いっすけど、踏み台にしていた何かがあったっすかねぇ?」

「そうね。二人、手を縛り合うくらい繋がり合って一緒に踏み出して……台とかは、警吏が片付けちゃったのかしら?」

「自殺用踏み台とか、わざわざそんなもん持ってくるかなぁ?」

「それに、警吏の人……そう言うコト、何も、言ってなかった……それに……実際、かなり、大きな幅の……踏み台に……なる……二人、並べる、くらい……」

「ああ。遺体を降ろしたって警吏も、肩車してやっとロープ切れたと言ってたな……あれ?」

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