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探偵っぽい 2

「遺族から『とても信じられない、詳しく調査してくれ!』ってなぁ」

「依頼人は、無くなった殿方側の妹さんだそうですが……」

「キュウビィとの国境寄りの町、ラマントか。詳しい事は現地で聞く事になっちゃった。J・V経由だし、他には大した仕事も無いから断る理由も無いしねぇ」

「その辺りはリョウスケさんが、上手く立ち回って頂けるかと」

(行き詰ったら我に念話が来るじゃろ。その時は相談に乗ってやれば、よいのでないかや?)

「ああ、その時は頼むよ。しかしフォンくんが来てくれてから連絡の勝手が凄く向上したねぇ。ホント、有り難いよ」

(こちらもな。お主らが現れるまで我も孤独が過ぎて、自我そのものが壊れるところじゃったしの。しかも所員のコらに憑依させてもろて、何十年、いや百数十年か振りに食事を楽しむ事も出来とる! 感謝しとるぞ~!)

「でも、食べる量はもう少し抑えて頂けませんかぁ? 私の番の時、お腹パンパンだったじゃないですかぁ~」

(スマンかったの~。リョウスケの作った『カラアゲ』じゃったか? 美味じゃった~。エールとの組み合わせで、真剣、止まらなんだわ、はっはっは)

「今まで睡眠しか無かったからねぇ。食欲も満たされるのは、たまんないよねぇ?」

(あとは性欲じゃな!)

「ちょ! それは絶対お断りです!」

(案ずるな。避妊に失敗するようなヘマはせん!)

「どこからそんな自信が出てくるんですか!? そう言う問題じゃありませんよ! どうしても、と仰るなら殿方に憑りついて遊郭にでも行ってらっしゃいませ!」

(我は女だと言っとろうが。男どもとは念話で繋ぐことは出来ても、憑依までは出来んわ。と言うワケでヘレナよ、ちょっくら勉強がてら……)

「イ ヤ で す !」

(にべも無いのう。しょーむない、一人で町の散歩でもして来ようかの。所長、なんぞあったら呼んでや)

「ほい、ごゆっくり」


 平蔵の返事と同時、フォンの気配が消えた。思わず息を突くヘレナ。


「イジられたねぇ?」

「所長~。他人事だと思ってぇ~」

「だよねぇ。記憶も無いのに勝手に貞操捨てられてちゃ、タチの悪い冗談とかじゃ済まないねぇ?」

「悪夢どころじゃありませんよ。これでも一応、王族の端くれなんですから! 夜な夜な歩き回ってその……い、いかがわしい行為の相手を探しているなんて……醜聞にしても酷過ぎます! 陛下にも母上にも顔向けできませんわ!」


 プンスカ収まらない王女殿下。気を落ち着けるかのように自分もお茶を頂く。


「そうだねぇ。僕たち平民でも大ごとだし、王侯貴族の様に異常に体裁に拘る方々だと……ああ、王族と言えば……」


 平蔵は茶を啜りつつ、話題を変えた。


「キュウビィの方は……あれから何か進展が?」


 問われたヘレナは、口に付けたティーカップを戻して答えた。


「……ジュドとルカの言によれば、内偵の進捗は捗々しくは無いそうです」

「ふむ。やっぱり、そう簡単には尻尾、掴ませないよねぇ」

「商人だけでは無く、貴族が絡んでいるのも間違いは無いのですが……特定するには()()が多すぎまして。問い質すにしても、確たる証拠も無く、容疑だけで審問を行うなど、却って相手に名誉棄損の口実を与えますし」

「なるほどねぇ……だとすると、商人をキツめに締め上げて口を割らせたとしても……」

「貴族が相手だと拷問による証言は、有効な証拠としては認められないのが原則です。それに下手な嫌疑は相手を硬化させ、仮に正鵠を得ていたとしても王室や他の領主らとの軋轢を生みます」

「難しいねぇ。ま、ウチとしては優秀な秘書さんに居て貰えるのは有り難いけどね」

「最初は、お荷物扱いだったじゃないですかぁ?」

「はは、ごめんねェ。あの頃はこちらの世界には不慣れだから余裕が無くってね~。でもホント、君たちには助かってるよ。今回みたいに若い子が皆、出張っちゃうと後は僕一人で全部こなさなきゃいけない所だったからね」

「うふ。じゃあ、このまま王宮に戻れなくて路頭に迷う、なんてコトにはなら無さそうですわね?」 

「そうならないように、真実がちゃんと解明されて欲しいもんだね……と」

「お待たせしました~」


 エミリーが自室から戻ってきた。ヘレナの前に進んで手製の小袋を渡す。


「ありがとう、エミリー」


 小袋を受け取ったヘレナは、それに仕分した分のお金を入れ始めた。


         ♦


 今回の依頼人エマ・フリージンは、普段は町の食堂で厨房員をしている年齢23歳の女性。今現在は独身だが、一年前までは結婚していたらしい。

 亡夫は国防軍の下士官候補生であったが、大規模な魔獣討伐作戦の任務中に殉職したとの事。

 その後は兄ヘンリー・フリージン夫妻の招きで同居することになり、夫の死からようやく立ち直ってきたところだったそうな。


 ラマント町に到着した光一らは依頼内容の詳細を聞くために、まずはJ・Vラマント支部に向かった。

 ラフロ町の時と同じで、支部長から依頼についての簡単な説明を受けた後、依頼人の希望で依頼人宅へ向かい、面談するように促された。


「夫の殉職から今こうやって立ち直れたのは、兄夫婦が自分に寄り添って力になってくれたからなんです、て(すが)られてなァ」

「確かに冒険者ギルドが請け負う内容とは、ちょいと路線が違うっすねぇ」

「旦那さんの死から一年かけて、ようやく普段の生活に目途も立ってきた矢先だったから……ショックだったってのは分かるんだけどねぇ」


 支部長のカメリアは、後ろで纏められた髪の生え際を掻きながらボヤくように話した。

 歳の頃40代半ば、支部長の肩書を持ちながら今尚、現役の冒険者でもある女性だ。


「落ち込んでいた彼女を自分の家に招き入れて、ずっとケアしてくれた優しいお兄さんが、職場の部下と不倫関係になったあげく心中しちゃったとか、受け入れたくないってのも人情さねェ」

「で、依頼人――エマさんはそれを再調査してくれって言ってるんすね?」

「町の警吏の鑑定でも、心中って結果出してんだけどねぇ」

「鑑定? 捜査じゃなくて?」


 光一が突っ込んでみた。詳しい捜査は不要で、鑑定だけで確定してしまえるほどのそんな状況だったのだろうか?

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