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恐怖の新人 4

 しかしながら、

「あ、あの~……」

蚊帳の外に押し出されてる感を抱えるものが約二名。

「ずいぶん話が進んでいるようですが……ホ、ホントに今ここに、幽霊の方が?」

 当然の事ながら、異世界人では無いヘレナやエミリーにはフォンを感知することが出来ないでいる。いや、厳密に言うと、

「狐族って気配察知とかのレベルも高いんじゃなかったっけ? 何も感じないかい?」

「た、確かに、お義兄さまの仰る通り、何かいつもと違う空気は感じますが……」

何らかの存在は察知している模様だが、当然声など聞こえてはいないようだ。二人ともそこはかとなくショボーン。

「うーん、ヘレナさんもエミリーも今は歴とした探偵団のメンバーだし。あまり事務所から出ないと言っても情報の共有は必要だよな」

「フォン? 何とかならない?」

「いや、こちらに来てから何度かこの二人にも話し掛けてはおるのだが……残念ながら反応は無しでのう」

「僕たちの魔力が授かり物(チート)だから、だけでお仕舞いにするのもねぇ。事実、念話なんて特戦隊の中でも、誰も出来なかったんじゃなかったかなぁ?」

「そうよねぇ。あたしたちだけで、それが出来てた、ら……」

 そこまで言うと、由美は何かに閃いたようにヘレナ姉妹を見た。

「え? な、なんです?」

「フォン? 鍾乳洞でアズマとやったみたいに、あたしたちと彼女たちって()()る?」

 お! 光一も即座に思い出し、人差し指をピーン。

「出来ん事はないが、結局我の話す言葉は……おお!」

「そう。こないだは、あなたを中継して念話したでしょ? だから今度は!」

「お主らを触媒と考えるワケか? うむ、やってみるか」

 由美は早速、試す事にした。姉妹に力まずリラックスするように指示する。

「よし繋いだ」

「あら!」

「お? もう聞こえたかい?」

「ええ。今、頭の中で『ヨシツナイダ』と!」

「我が名はフォン。ヘレナ、エミリー、我の言葉が聞こえるか?」

「き、聞こえます! 声質はユミさんに近いけど……」

「はい、あたしも聞こえました! これが幽霊さんの声なんですか?」

「さん、を付ければいいと言うものでは無いわ! 敬称は要らんがフォンと呼べい!」

「す、すみませんフォンさん! わぁ、ホントに聞こえます。耳や骨からの響きじゃなくて、頭の中に響いています!」

 フォンを交えた会話には入れない? ちょっと疎外感を感じ始めていたヘレナ姉妹は、若干の支障は有るものの、フォンとのコミュニケーションが取れる道が開けて、表情がパァッと明るくなった。

 やはり所員全員、思いを一つに出来ると言う事は、何よりも喜ばしい事であった。

「でも、フォンさん? なんで俺たちと組もうと思ったんすか?」

「ん? 何かおかしいか?」

「いやぁ、変とか可笑しいとかじゃなくてっすねぇ。え~、フォンさんて魔族なんすよね? なぜ、魔導国に行こうと思わなかったっすか?」

「なるほど。フォンくんにとってはここは外国。故郷は魔導国だもんなぁ」

「うむ。我も故郷に郷愁(ノスタルジ)を感じないわけでは無かったがな。なにしろ同族の謀反で滅せられたのも事実でなぁ。近寄りたくは無かったわ」

「あ~、そういや言ってたよね~。あげく霊体分離な運命だもんね~、呪いたくもなるわよね~」

「そう言う目で見るなと言うに。それに我の望み通り、ユミが母の形見を確保してくれたからな。故郷の思い出はそれで充分よ」

「そう言えば、あの指輪どうする? どこかに保管しとく?」

「う~む。出来ればユミ、お主が嵌めておいてくれんか? されば我はいつでも母の思いを感じることが出来るのだが」

「いいの? あたしがしてても? まあ、デザインもいいし魔石もキレイだし……うん、着けさせてもらうわ」

「感謝するぞ、ユミ」

「で?」

「ん?」

「おれたちと(つる)みたいって言うのは?」

「あ~、それは……」

「あ、支障あるなら無理に言わなくていいっすよ? 出来ればってだけっすから」

「……………………寂しかった……」

「ほ?」

「寂しかった……と言う理由では……いかん、か?」

 はにかむ口調のフォン。

 お互いの目を見合う探偵団。

 やがて、

「プ!」

「ククク!」

「アハ、アハハハハ」

みんなで笑い出した。

「そ、そんな笑う事は無いではないか! そんなに変か!?」

「ああ、ごめんごめん。うん、悪気は無いんだよ?」

「そうだよねぇ。何十年か何百年か、コミュニケーション取れる相手が居なかったんだもんねぇ」

「そうだぞ! 誰も我を感じてくれんから我の存在が怪しく……と言うか自我が壊れる寸前だったのだ。そこでお主らだ。また一人になるのが嫌だったんじゃ!」

「それは……そう、よね……ぼっち……寂しい、よね」

「当然っすね。納得っす」

「じゃ、じゃあ、なんでそんなに笑うのだ!」

「だって、フォンたらぁ~」

「な、なんだ!?」

「可愛いんだもん~」

「か!」

「そうですよね。生前は高貴な方の様ですし、何より私たちの誰よりも年長さんなのに、言っては何ですけど、愛らしいというか(いとけな)いと言うか」

「まんま……ギャップ萌え……ね」

「それですマリンさん。なんかホント!」

「もう、好きに言っておれ! で、結論は? 我はここに居ていいのか?」

 改めて尋ねるフォン。

 平蔵は未だ笑いを浮かべながらも姿勢を正し、そして宣言した。

「無論だ。わがアーリウム探偵事務所は、所員の満場一致を以て新所員、フォンくんを歓迎する旨、決定する! 宜しくフォンくん!」

「即戦力の新しい仲間だ。これからも当てにしてるぜ!」

「改めてよろしくね、フォン!」

「期待してるっす!」

「BLは、お好き?」

「私どもは、あまり外での活動は出来ませんが……」

「よろしくお願いしま~す!」

 新入所員フォンは、目出度く全員の歓迎を受けた。そして、

「そうか……そうか! 受け入れてくれるか! 感謝する、感謝する!」

感涙(?)に咽ぶフォンであった。

「うんうん、頼もしい新人だね。本来なら今夜は歓迎会、と行きたいところなんだけどねぇ」

「いいっすねぇ。でも確かに……」

「フォンさん……ごはん……食べられない……」

 霊体だからね~。

「お供えでも……意味ないかしら?」

「お供えした供物が減ったの、お主ら見たこと有るかや?」

 フォンのツッコミに、全員が一斉に首を振った。至極当然である。

「あ、そうだ。誰かに憑依するってのは?」

 あの、鍾乳洞で見せた憑依能力。それを思い出し、光一が提案してみた。

「おお! それなら飲食も楽しめるかもしれん。ユミ、済まんが身体貸してくれ!」

「は? ちょ! ちょっと待ってよ! その間て意識も記憶も無いじゃん!? あたし、参加した事にならないじゃん!」

「記憶も無いのに体重だけは増えてるわけだねぇ」

「そ、それは……めちゃ、恐怖……」

「冗談じゃないわよ! 誰か他の()()を!」

「ユミさんたら。そんな言い方なされると、フォンさんがホントの悪霊みたく……」

「今度は悪霊呼ばわりか! 勘弁せい!」

「あれ? て事は……由美さん、憑依自体は経験済みってコトっすか?」

「え? あ、まあ、鍾乳洞内であたしに憑依するの、アズマに見せたらしいんだけどね。その間の事は、それこそ記憶にない……んだけ……ど……」

 由美は急に何かを思い出した。そして訝しげな眼で光一を見つめる。

「アズマ……フォン……」

「はい?」

「なにかな?」

「あの時って……あんたら、何してたの? あたし、しゃがみ込んでたよね?」

「え? あ、あれは……その……」

「……なに……してた……の?」

「何の事は無いぞユミ。我が、お主の身体でコーイチに抱き着こうとしただけよ」

「はああああああああああああ!?」

 ――空気読め―――――!

 光一の血の気がまるでブラックホールに吸い込まれるが如き勢いで引いていく。マジで視界がB・O(ブラックアウト)しそうなくらいで。対してR・O(レッドアウト)級に頭に血が昇る由美。

「アズマぁ―! あたしに何をした―!」

 凄まじい怒声。ヘレナとエミリーが思わずケモ耳を塞ぐ。聴力敏感も善し悪しだ。

「な、何もしてねーよ! た、確かにフォンには誘われたけどさ! さすがに仲間の信用失うような、そんな真似出来ねぇっての!」

「ホントか―! 嘘じゃ無いだろーなぁ―! フォン!?」

「おおよ。こいつと来たら、とんだヘタレでな。記憶は残らんから触るくらいなんでも無いぞ、と誘ったんだが頑なに拒否してのう?」

「ざけんなよ、このサキュバスもどき! あ、でも手は出さなかった、てのは信じていいのね?」

「それは保障する。仲間になった以上、ウソは言わんぞ?」

「そ、そう……なら……い、いいか、な」

「どうやら、どうせ触るなら、もっと大きい乳の方が望みらしくてな?」

 ビキ!

「ちょ! 何言い出すんだフォン!」

「生前の我の胸はユミより二周りは大きいと言ったら何か、ときめいとったような、目の前の胸見ながら残念がっとったような……そんな顔つきだったが?」

 ギヌロ!

 三白眼、いや、ほとんど白目の由美が地獄の炎を背景に、ブラウン管から這い出た悪霊がそのまま古井戸に逃げ帰りそうな凶悪極まりない形相で光一を睨みつけて来た。

「アズマぁ……ちょっと体育館の裏……じゃない、事務所の裏、来いや……」

「お、落ち着け由美!」

 体育館の裏……事務所……ヘレナ・エミリーはキョトンとするも、特殊な意味に聞こえるのは光一が日本人だからか?

「いいからツラ貸せ。てか来い!」

「うわ―――!」

 もはや話の通じる状況では無い。光一はスキル透過を使い、脱兎のごとく逃げ出した。探偵事務所入り口から廊下、階段にかけて光一が脱ぎ散らかした衣服が散乱する事となった。彼のスキルの本領発揮ではあるが、どの面下げて戻って来るのか? しかも全裸。由美はその脱ぎ捨てられた服を手繰って怒り心頭で追いかける。

「出てこいキモオタァ!」

 そんな二人を平蔵ら探偵団一同は、(生)温か~い目で眺めていた。ニヤけて。


 幽霊所員第一号 フォン入団。

 アーリウム探偵事務所は異世界ならではの、ユニークな新人を獲得した。

第3話終了です。ご覧いただいてる読者の皆さま、

本当にありがとうございます。

異世界ならではのメンバーが参入して探偵団はこれから

探偵らしかったり、らしく無かったりの捕物長を紡ぎます。

変わらぬご愛顧のほど、よろしくお願い致します。

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