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恐怖の新人 3

「もちろんですわ。総額がどうなるかは分かりませんが、一割くらいはお納め頂けるかと?」

 ――掛かった

「ううん、鉱山の修復とか物入りなんでしょ? あたし、その指輪、気になっちゃってさ~。それだけ貰えりゃいいんだけど~」

「ん? これ?」

 言われてヨミは、右手に嵌められていた指輪を外した。

「う~ん、見たところ金の含有量とか少なめだけどなぁ。石も宝石じゃなくて……魔石結晶かな、これ? うん、純度は高いし綺麗は綺麗だけど、これで良いのかい?」

「ちょっと前に、お気に入りの指輪無くしちゃってさぁ~。代わり捜してたんだよね~。いい?」

「もちろんですわ。遠慮なくお持ちくださいな」

「あ~りがとぉ~!」

 首尾は成功した。


 やがて、遺体の物色を終えたヨミとメイスは、本部への報告も含めて一時撤収を提案してきた。

「本格的な調査と、残った遺体の回収で、また出向くことはございますが、タンテイさま方への依頼はこれで完了ですので」

「じゃ、依頼達成でいいんだね?」

「はい、報酬はJ・Vさんを通じてお支払いする事になると思います」

「そっか。じゃあ、宿に戻って帰り支度ね」

 と由美。とりあえず、依頼は滞りなく達成できた。

「ありがとな、タンテイさん? おかげで良い副収入も頂けたしなぁ」

 そう言いつつヨミは、腰にぶら下げた袋をパンパンと叩いた。その度、袋からジャラジャラとした音も響いた。

「え? 他にも金目のものが?」

「ここ来る途中まで、アンデッドの着てた服とか残ってたろ? あん中に結構、金子とか残っててよ」

「……」

「戦死者は値の付く武器や鎧等、身ぐるみ剥いで放置か、今回の様に纏めて埋める訳ですが、時間が無かったのか面倒だったのかは分かりませんが、懐中の銀貨とかは残ってましてねぇ、おほほほほ」

「まあ、街の予算に足しにもなるし、教会も修繕したいところだらけだしよぉ、助かったわ」

「……」

「んじゃ、帰るかぁ」

「ちょっと待ちなさぁい、ヨミぃ?」

「え? なに、オバハン?」

「なんか、あなたの胸周りが大きくなってるの、私の気のせいかしらぁ~?」

「え? ああ、そりゃあ、あたしも年頃だし? まだまだ成長期だし? 胸大きくなったところで……普通じゃね?」

 作笑のヨミ。つか、引き攣り笑い、プラス一滴の冷や汗。

「ふん!」

 気合い一閃。メイスの右手が背中からヨミの右胸を掴んだ。いや揉んだ。

 ――い!

 叔母による姪っ子へのバックアタック&お胸タッチ。ちょいとエロいシチュに光一と由美もドッキリ。しかし、

ジャラジャラジャラ……

揉んで響く固くて重い音は、エロとはかなり遠く離れた音質であった。

「ずいぶん色気の無い育ち方してるわねぇ、この お 胸 」

「あは~……いや、その~」


 要するにヨミは、回収した金子の一部をガメて、()()()()に隠していたようだ。で、しっかりと見透かされたと。

「右乳分、こっちに寄こしなさいな。それで黙っててあげる」

「あ~……4分6でどうかな?」

 そんな銭ゲバな叔母と姪のやり取りに、

「……」

「……」

言葉を失い続ける光一&由美。

(わかるか少年? ユミ?)

(光一だ)

(霊体もアンデッドも、死体に群がって追いはぎしたりはせん。我の様に意思疎通が出来ず気配だけで怖がらせる事は有っても、金目当てで人を殺めたり奪ったり搾取したり、麻薬の上がりで酒飲んだり、色欲に溺れて家族を泣かせるような事もせん。他者の弱みに付け込んでタカるなどと言う事もな。幽霊なんぞより、いま生きとる人間の方が、よほど厄介で恐ろしい存在ではないかな?)

 ぐうの音も出ない……。そんな光一くんと由美さんでありました。


       ♦


「採用!」

 イオタニア市北地区三番街の事務所に戻った光一と由美。

 依頼達成報告の後、議題に出したフォンの事情を話した結果、平蔵は即座に結論を出した。

「即答したわね~」

 平蔵はこう言うの面白がるんじゃないか? とは帰路でも話し合ってはいたがモロである。

「いや~、()()()ならさ、ホウレンソウの重要さは皆、十分に分かってるだろぉ? スマホ使えなくて不便な思いしてたの、僕だけじゃないはずだよ~。彼女にとっても僕たちが必要だって事らしいし、お互いウィンウィンでしょぉ?」

「そうっすね、ホウレンソウだけ考えても、仕事の効率が飛躍的に向上するっす。反対する理由、無いっすよ」

 良介も乗り気だ。

 確かに今までは、新情報など、いち早く伝えて対応を相談したいのに、それをするには待ち合わせ場所か、或いは事務所まで戻らないと出来なかった状態でもあるし、歓迎すべき人材(霊材?)だと考えたのであろう。

「でも、幽霊だぜ? 恐怖とか、抵抗とか無い?」

この世界(こっち)の人も怖がる方が多いみたいだし」

 一応、この辺りも聞いてみる光一・由美。

「だって、この世界は僕たちの世界には有り得ない、魔法なんて事象が至極、当たり前に有るんだよ? 幽霊みたいな非現実的且つファンタスティックな存在が有ったって別に不思議じゃないんじゃない? 寧ろ幽霊だけ別格って方が違和感だよ。君たちだってさ、アンデッドなんてモンスター相手したから、彼女の事も無意識レベルで受け入れられたんじゃないのかな?」

「ま、まあねぇ~、さすがに最初は驚いたけど~。そういや、ここってそう言う世界なんだよね~って妙に納得はしちゃったわよね~」

「それでもメイスさんや鉱山夫なんかは幽霊怖がってたし、特別っちゃ特別なのかもしれないけど。でもまあ問答無用で齧りついて来るアンデッドよりは、フレンドリーだったからな」

「なぁコーイチ? 骨折って貰っておいて言うのもなんだが、アンデッドなんぞと比較されるとか些か引っ掛り過ぎるんだがのぅ?」

「真鈴は~? 何か意見ある~? 不気味とか怖いとか感じる~?」

「はじめはちょっと、驚いた……けど、なんか、いい人……ううん、いい人格(キャラ)みたいだし……あとは……コウさんや、由美さんと、一緒……」

「じゃあ、真鈴も同意でいいんだな?」

「うん……纏わり憑かれるなら……幽霊より……ゴキブリの方が……イヤ」

「言うに事欠いて、今度はゴキブリと比べるとか! マリンとやら! いささか失礼すぎるであろう!」

「だって……ゴキブリ、キライ……フォンさんは?」

「あ、いや、我もゴキブリは苦手だ。て、そう言う事では!」

 あははははは~、などと笑い合う探偵団とフォン。

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