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恐怖の新人 1

「ちょ、ちょっとぉ! 部活の幽霊部員じゃあるまいし、マジで幽霊の所員とかシャレにならないって~!」

「そう言わんでくれ! 別に怪談話のように悪さしたり、人に祟って呪うとか、そんなことはせんし!」

「成仏すりゃいいじゃん! 天国でも地獄でも好きな方へ行きなさいよ!」

「なら、やり方教えてくれ! 我は、そんなとこの場所も行き方も知らんし!」

 いや、こっちも知らんし! と光一。事件が解決できたかと思ったが、どえらい悩み所が増えてしまった。

 しかしながら……

 ――早計かもだが……現状、ラフロでの怪現象を無くすための最適解は、唯一意思の疎通が取れる、おれたちが引き取る事なのは間違いない。しかし、こんな得体の知れないシロモノ……ヘイさんや真鈴が何と言うか? せめて探偵団に何かメリットが有れば……

「なあフォン? 一つ聞きたいが……」

「おう、なんでも言ってくれ」

「もしも、おれたちとの同行を認めるとして、お前は俺たちに何かを提供出来るか? してくれるのか?」

「提供? 対価とか、それに見合う労働力とかかな?」

「そんな感じで」

「ううむ……」

 フォンは、しばし考え込んだ。と、言ってもそんな雰囲気があるだけだ。なにしろ実体が無いのだから。

「いきなり、そんな事を言われてもなぁ。今のところ、我の意識があちこちに移動できるということ以外は試しておらん。他者と会話ができるというのもお主らが初めてで誰に話しかけても反応もしてもらえんで、そりゃもう……ん? 会話……」

「どうした?」

「……うむ、お主らほどの魔力なら……ちょっと試してみたい。お主らと()()ぞ」

「繋ぐ? なんだそ、れ? お!」

 光一の耳の後ろ辺りに何やら違和感、というか気配と言うか、騒めきと言うか、産毛が逆立つと言うか。

「え? なに? 耳の後ろ、何かしてる? やん! なんかくすぐったい!」

 由美も同様、つか光一以上の反応だ。思わず手で耳の後ろを擦っている。目を伏せ、体をくねらせて悶えている由美の艶っぽい仕草に光一くん、ちょっとドッキリ。

 ――由美でもこんな色っぽさ出せるんか!? 

 などと実際に口走ったら由美に、言い終わる前に鉄拳で強制終了させられそうな思いが過った光一。

 と、それはさて置き。一体、なにをやらかした?

「少年、声を出さずに何か話してみよ」

「声を出さずにって? なんだよ、テレパ……え? マジ?」

 テレパシー? 念話? コミックやアニメのファンタジー設定が脳裏を過る。

(由美、聞こえるか?)

「は!」

 由美が反応、目を丸くして光一を凝視してきた。つまり伝わった?

 光一は人差し指でクイクイっと手招きし、お前もやってみろ、と催促してみた。

 由美は目を閉じると、念を込め始めた。

(聞こえる? キモオタ?)

「誰がキモオタだよ!」

「通じた―!」

 由美に続き光一も目を全開にして、お互いを見つめ合った。マジで、念話・テレパシーの類である。

「こ、これってマジ……マジでテレパシー!?」

「きょ、距離は? どれくらいの距離まで通じるんだ!?」

「試した事は無いが……ここから町までは行けるんではないかの。魔素が流れる龍脈とか捉えれば遠方でも期待できるが……それ以上はいろいろと試さないとな」

 これは思いがけないスキルだ。

 今までは、平蔵の聴能力のおかげで、ある程度離れていても言葉にすれば平蔵はそれを聞き取れた。それで状況を把握し、平蔵は次の戦略を練るという運びが探偵団のスタイルであり、これでもこの世界の者たちよりかは迅速だと言えた。

 しかしそれでは所詮、受信オンリーの一方通行だ。指示は平蔵の声が届く範囲に限られる。スマホ、携帯電話が当たり前だった探偵団は、この状況に激しくイライラしたものだ。

 だがフォンの、このスキルが有れば、それと同様に双方向で連絡し合える、そんな運用が期待できる。

「うん!」

 光一と由美は頷き合った。これは使える! と。

 だが、即答は出来ない。

「そうだな、今のスキルは、おれたちの仕事にとって喉から手が出るほど欲しいスキルだよ! でもな、おれたちには他にも仲間がいるんだ。だから、みんなと話し合ってからでないと勝手には決められないんだ」

「その仲間とやらは、お主たちと同じくらい、同じ種類の魔力が有るのかや?」

「期待はできる。幽霊ってのは抵抗あるかもだが、可能なら受け入れてくれるかも!」

「だから幽霊はよせとあれほど! まあ、よいわ。ならば、ここの仕事が片付いたら一緒に付いて行って検討してもらう、と言う事で良いか?」

「ダメ出しされたら帰って貰う事になるけど……いい?」

「無体だのう。しかし、やむを得ぬか」

「他に何か出来る事は有るか? 有ればそれも材料に……」

「他? そうだな……こんなんはできるか……な?」

 こんなん? どんなん? などと二人が思った瞬間、

――あれ?

フォンの気配が消えた。

「あれ? フォン? フォン! え、あれ?」

 ドサ!

「あ! おい由美!」

 由美の身体がガクンと崩れた。

 尻もちを突き、胡坐をかいたようなしゃがみ方になる。

「由美! どうしたんだ、由美!」

 光一もしゃがみこんで、由美の肩を支えながら、軽く揺すってみる。

「おい、由美!」

「お? 出来た出来た! やってみるもんじゃの~」

 ――え?

 自分の手の指を動かしながらそれを笑顔で見つめる()()。だがその視線から来る雰囲気は彼女のモノとは異質であった。

「安心せい、何の支障も無い」

 ――え? あれ?

 光一はまたも顎が落ちそうになった。だが、今回も何が起こったか、なんとなく見当はついた。

「フォン? まさか……」

「うむ、この娘に()()()()もろうたのだ」

 ――やっぱり憑依――!

 マジ憑依である。乗っ取りである。

 正に霊現象である。

「お、おいフォン! 由美は、由美はどうなったんだ!?」

「無問題だ。意識は途切れるが何の影響もない、眠っとるのと同じ状態だ。ただ、この間の記憶は無かろうな」

「つまり、この会話も?」

「おそらく憶えておらんな、会話も行動もな。それが、どういう意味か分かるな()()?」

「あ、何のことだ?」

「とぼけるか? ()()()()()()()のだぞ? ならば若い男子(おのこ)が考えることの相場は決まっておろう?」

「だ、だから、な、なに……」

「この娘の身体、好きにイジっても本人にはバレんと言う事だ」

 ――そっちか―――!

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