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恐怖の襲撃 2

「ア、アンデッドだな、そりゃ」

「そうか! やっぱあの声はアンデッドの!」

「待て! そいつはおかしい! ここは鉱山だぞ!? 墓場(セメタリ)置き場(モルグ)もあるワケねぇよ!」

「元になる死体が無いのに! 野獣のアンデッドならともかく!」

「先生! 数は!? 数はナンボですかい!?」

「う~! やだ! 5体や6体じゃないわよコレ! 20? 50? それ以上!?」

「そんなに?」

「なんでや!? なんでそんな数のアンデッドが!?」

 由美の透視結果に、作業員たちは各々が好き勝手に推測を並べ立てた。外部から入り込んだのならまだしも、墓地も無い山の、それも地下深くにそんな大量の死体など。

 いや、それよりも。

「アズマ! アンデッドが調査班に気付いたわ! 襲って来る!」

「謎解きしてる場合じゃねぇな!」

 光一は背負っていた雑嚢から得物を取り出した。そのアンデッドの正体や原因などは今は後回しだ。坑道調査班がアンデッドらしき彼我不明物体(アンノウン)に襲われる可能性、それの対処が最優先事項だ。



「くそ! こん腐れ魔獣がぁー!」

 昨日の地震による坑内の崩落や、安全柵等の確認のために先行した調査班5人は、本来の懸念事項とは全く別の、正に予想外の危機に陥っていた。

 いや、実際に坑内の一部が、崩落を起こしていたのは確かだった。

 掘り進んだ坑道には要所要所、内壁や天井に落盤防止の補強が施されていたのだが、奥の、特に地下水脈と交差する部分で崩落が起きていた。そしてその崩落した向こう側には、未知の空洞がお目見えしていたのだ。そしてその中から……

 ぐおおおぉぉ……

 ぼぶあぁぁぁ……

アンデッドの大群が現れ――這い出してきたのである。

「うらあぁー!」

 バキャ!

 作業員たちは持っていた検査用の丸棒――槍程度の長さと太さを持つ棒で、迫りくるアンデッドと抗戦していた。他にも、ツルハシや猿臂(エンピ)(スコップ・シャベル)持ちも、それらを武器にして撃退していた。

 しかし、

カイン!

「畜生! ここじゃ狭すぎるぜ!」

狭い坑道内では、3人も4人も横に並んで戦うには、思うように間合いが取れず、全力が出せない。

 もしも相手が幽霊・亡霊の類ならビビってしまう鉱山夫たちも、魔獣扱いのアンデッドが相手なら力技で立ち向かうのに何も問題は無かった。

 だが地の利が無い。間合いが狭すぎるので得物を思いっきり振り回せない。すなわちアンデッドの弱点である頭部や頸椎への打撃力が不十分に過ぎるのだ。短く構えながらでは力が満足に込められない。

 更に……


ズズズズズズ……


「ん!?」

「く、来るぞ!」

「くそ! こんな時に」

ガタガタガタガタ! ビキ! ビキビキビキ! ゴゴゴゴゴゴ!

 昨日の余震か? 更なる地震が襲ってきた。

 ガコ! ガラガラガラ!

「崩落だ!」

「空洞の穴が広がったぞ!」

 新たな地震は、アンデッドが湧いて出てきた穴を更に広げた。アンデッドの進出速度が倍以上に速まってしまった。

「退却だ! 脱出するんだ!」

 調査班長は即座に撤退を決断、班員に指示を飛ばした。 

 体力には自信のある鉱山夫たち。場所にさえ恵まれれば、アンデッドの撃退くらいは何とかなるのだが、状況は極めて不利であった。しかも相手はもう、巣を突っついたアリの如く次から次へと現れ、坑道内に殺到して来るのだ。全て撃退するには手勢の数はあまりにも少なく、体力も当然持たない。逃げの一手である。

「主坑へ急げ!」


 ごわあああぁぁぁ

 ぼえええぇえぇぇぇぇ


 あの声だ。このところ、ずっと鉱山夫たちを悩ませていたあの声が、より鮮明になって追いかけてくる。

「例の声って、やはりアンデッドだったのか!? しかし何でこんなところに、こんな大量の死体が!?」

「そんなん後だ! とにかく逃げろ! 捕まったら体中齧られて、臓物引き摺りだされて喰われながら死んでいくんだぞ!」

 うわあ――――!

 調査班員は外を目指して全力で走った。右に左に支坑を駆け抜けていく。

 やがて視界に、主坑への出口が見えて来た。

 ダダダ―! 全速力で走る班員たち。主坑に出ると、すぐさま転進して鉱山出口方向へ。

 だがここで、

「わ! わわわ!」

「ヂョロ!」

 ヂョロと呼ばれた班員が小石に足を取られて転倒してしまった。

 ぼおぉぉぉぉ

 アンデッドがヂョロを捕捉、襲い掛かって来た。ヂョロは必死に立ち上がろうとするも、

――あが!

折ったか、捻挫でもしたか、右脚に激痛が走り立ち上がれなかった。迫るアンデッド!

「ヂョロー!」

 他の班員たちも彼を助けようと足を止めたが、

ぼぅええええぇぇ

ごがぉおおおぉぉ

アンデッドどもが次から次へと殺到する。だが、同じ釜の飯を食い、危険ながらもお互いを助け合っていた仕事仲間を見捨てることなど出来ない。

「聞け!」

 班長が叫ぶ。

「俺とスタッキーで奴らを抑える! ハッチとファーガスはヂョロを担げ!」

「合点!」

 うおおおー!

 班長とスタッキーが先頭のアンデッドに突撃する。同時にハッチとファーガスはヂョロの下へ。

「うりゃあああ!」

 パッカアァーン!

 班長渾身の猿臂が先頭のアンデッドの首を弾き飛ばした。

 ガシャァ!

 途端に力が抜けて崩れるアンデッド。

「うおおおぉぉ!」

 続いてスタッキーのツルハシが彼奴の脳天に振り下ろされた。

 どしゃ!

 これも一撃だ。アンデッドの弱点は周知済みなので、倒すこと自体は造作もない。特に鉱山坑夫たちは仕事柄、パワーには秀でている連中だ。だが……


ぼぅえええぇぇ


余りにも数が多すぎる。一撃必殺では有るものの、一体片付けているその間に二体、三体と後続が迫って来る。

「掴まれヂョロ!」

 ハッチとファーガスがヂョロの肩を持ち上げる。

「す、すまねぇ……あが!」

 バランスを崩すヂョロ。右脚の負傷は思ったより重度の様だ。

「早く連れてけー!」

 班長がハッチらにハッパをかける。しかし、班員の中でも大柄なヂョロ、それがほぼ歩けない状態。二人掛かりでもその速度は遅い。

「くそ! なんて数だ! 班長、こりゃ時間稼ぎも出来ねぇぞ!」

「仕方ねぇ! わしたちでヂョロの足を抱えて4人で全速出す……うおわー!」

 4人掛かりでの搬送、後は脱兎のごとく撤退――班長が、そう指示しようとした途端、アンデッドの勢いが増した。

「畜生、抑えきれねぇ!」

 見た目、緩慢な動きのアンデッドどもであるが、とにかく数が多すぎた。パッと奥を見ただけでも追従してくる数は20や30程度では無かった。

 ――なんとか……なんとかヂョロを担ぐ時間を……

「耳(ふさ)げ―!」

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