恐怖の襲撃 1
ガタガタガタガタ…… 店全体が震え出した。初期微動が短いところからして震源は近そうだ。
「結構、揺れるな」
「震度3……4てとこかしら?」
ガタガタゴトゴト ミシ ミシ……
「収まったかな?」
「火山帯も近いそうだし、多いのかな?」
「へ~。二人とも結構落ち着いてるね~。余所から来た人は、地震に会うと大抵パニクるんだけどな」
「ああ、おれたちの故郷も地震が多……げほ!」
光一は、思わず故郷の地震大国ぶりを口にしてしまいかけた。
そこに由美が、光一の横腹に肘を食い込ませて止めた。
「え? あんたらの故郷も?」
「ああ、違うのよ。ここに来る時に、地震が多いところだから気を付けろよって上司にじっくり注意されていたもんでね。あ~、これかぁって思ったのよ~」
「ほ~。その上司さんは、ここいらの出なのかな?」
「さあ? あたしたちの職場は、お互いの出自とかは穿らない風潮だからね~」
などと言いながら、光一を軽く睨む由美。
いきなりの肘鉄に光一も一言くらい、言い返したい気持ちも擡げたが、自身の出自を口にする――つまり異世界からの召喚を表ざたにしかねない軽はずみな発言だったと即座に反省、自重した。勘のいい奴が、どこで点と線を結ぶか分かったものでは無い。特戦隊計画が公になるまでは慎重にも慎重を重ねるべきであった。
「まあ、あんたが言ったように、昔の文献を見ると火山が噴火して結構被害出した記録が残ってんのよね。ここ何十年か噴火とかは無いんだけど、地震自体は明らかに他の街より多いね」
「そっかぁ。あ、じゃあ、火山性のガスとかで中毒症状になるなんてことも? それで幻聴とか幻覚とかってセンも……」
「は? がすって?」
再び首を傾げるヨミ。
――ぐふぉ!
今度は脇腹を抓られる光一。
「ああ、瘴気の事か? そうだな。高温の温泉が湧くところじゃ、偶に噴き出る事も有るけど……鉱山内で出たって話は聞かないね」
「何考えてんのよ、迂闊でしょ!」
宿に戻った光一と由美は今日の反省会を行っていた。まずは光一の軽はずみ発言に関してだ。
「ったく! ここぞとばかりに知識自慢したがるんだから! これだから頭でっかちなオタは白目で見られんのよ!」
「悪かった! マジ悪かったってば。自重するって!」
平謝りの光一くんである。
別段、悪意やら、承認欲求やら、知識マウント取ってやろうとか、そんな邪な気は無かったのだが、もしかしたらクセになってて自然とやってしまっていたかもしれない――由美の言う通り、マウント取りたがりの同好の志は、ちょくちょく見かけていたので「自分も同じことやってた?」てな可能性は否定しきれない。
我が身を抓って……ではないが、今回の案件でも、一層気を付けるべき。探偵業が結構順調で、経験値の積み重ねが上々でもあり、気が緩んでいたのを自覚せねばなるまい。
故に、由美の諌言には一切、口ごたえせずに反省する事しきりな光一くんでありました。
さて、次は本業の反省、というか検討である。
「当然だけど霊現象はナシ。幻魔草の乱用の線も消えたし、有害ガスによる状態異常でも無し、と」
「残る可能性は……魔獣・野獣の類よね~。でも、それもほぼほぼ否定されてるよね~」
「でも、今んところ、それだと仮定した方がいいかな? 感知されてない風穴や、地下空間とか、可能性ないかな?」
「町側だって、透視能力とかのスキル持ちくらい、いるんじゃないの?」
「おまえ、鉱山内とか透視しなかった?」
「え~、してないよぉ。まずは証言とかから始めようって言ったじゃん?」
「まあ、そうだけどさ。どうかな? 山の中を透視とか出来るか?」
「漠然とし過ぎでしょ、それ~。でも、未知の空洞の可能性は否定できないわね。明日、明るくなったらやってみよっか」
「今は……やっぱ無理だよな?」
「無茶でしょー。地下なんて、ただでさえ光量不足で見にくいんだから~。昼間でも、見られるかどうか怪しいよ~」
「ま、やらんよりマシではないかな?」
「そうだよな。とにかく、どんな小さな可能性でも潰していって、最後に残ったモノを怪しんでみるしか無いね。じゃあ、明日は頼むよ由美」
「ん、出来る限りの事は、やらないとね」
明日の調査の指針も決まり、衝立を直して二人は、それぞれの床に着いた。
♦
翌日の朝。
千里眼による透視のため、再び鉱山を訪れた光一と由美だったが、入り口でストップがかかった。
昨日、作業終了後に発生した地震の影響で、坑内に崩落等の不具合が発生していないか等の、安全確認調査が行われているのだ。それが終り、安全が確認されるまでは入坑は不許可である。
まあ、由美のスキルはその特性上、多少離れていた方が有効なので、このまま外からスキャンしてもらう。
「や~、やっぱり地面の中を透視しても真っ暗よねぇ。あ、でも小さな風穴とかは、あちこちにあるみたい」
「じゃあ、風鳴りの可能性も?」
「いや~、どうかな? せいぜい鼠が通れる程度の穴だし、長さも大した事なさそう」
「空振りかな?」
「まだ始めたばかりじゃん。魔力切れに気を付けながら、じっくりスキャンするべきね」
「当てがあるワケじゃないからなぁ」
「そりゃそうだけど、あんたも夕べ『やらないよりマシ』って言ってたじゃん? 可能性は一つずつ潰すって」
「え? あれって……お?」
ゆさゆさゆさ……
「ん? また揺れてる。余震……か!」
ゴゴゴゴゴ……
「うお!」
「で、でかいな」
作業員たちからも声が上がった。同時に警戒し始めるも、それほど慌てたり、パニクったりはしていないところを見ると、デカいとは言っても慌てるほど大きいとは思わない程度の震度なのだろう。
「中は無事かな? 落盤とかしてなけりゃいいけど」
「地下は比較的安全、て言うけど、坑道となるとどうだろ~……え! あれ!?」
「どうした!?」
「なんか、いきなり明るくなった所が! え? え? わ! なにこれ、なにこれ!? キッショ!」
――キショ?
透視している由美の顔が険しくなる。と言うか、嫌悪感を表情に出す見本のような顔だ。
「由美?」
「どうしたい、先生!」
「何よこれ……死体? 死体なの!?」
――死体? 死体……それって調査班……いや、アン……
「アンデッドですかい? 先生!」
「な、なんかヒト型してんだけど、うわ! 目玉無いんじゃないのコイツ! げ! 舌も! キショ! めっちゃキショ!」




