恐怖の鉱山 1
第三章突入です。
ライトにオカルト系な内容ですけど恐怖の欠片もございませんw
小難しい事は苦手ですんで気軽に楽しんで頂ければ幸いです。
駅馬車の速度は精々自転車とどっこい。いや、それよりも遅いくらいだろう。
とは言え一日走れば道路状況にもよるが100km前後程度は進むことができる。
で、我らがアーリウム探偵団メンバーの光一と由美は、3日半日ほど馬車に揺られて王都イオタニアの北西方面、魔導王国との国境も近い鉱山の街、ラフロに到着した。
馬車の乗り心地にも大分慣れてはきたが、舗装なしの街道に申し訳程度のサスペンションで足掛け4日も揺られては、尻っぺたが悲鳴を上げるのもやむを得ない。
「あ~、早くお風呂入ってマッサージしたい~」
到着後、まずはJ・Vラフロ支部に寄って到着の報告を終えた後、支部長に紹介状を貰って二人は町の役場に足を向けた。
「確か温泉湧いてるって言ってたよなぁ、支部長さん。鉱山の街だし採掘作業で汚れた身体洗うから、王都よりも入浴回数は多いってさ」
「ソンニ村の時はバスタブで何とか、だったから楽しみよね~。でも今回の依頼って、あたしたち向きだけど、これって探偵の仕事かしらね~?」
「鉱山で怪現象が起こってるからその原因を解明してくれって、確かに探偵の仕事とは相性悪そうだな。イタコや霊媒師でも有るまいし。ま、ウチは『何でも屋』で売ってるからなぁ」
「怪現象ってのが、いわゆる霊現象の類なら、あたしたちや冒険者じゃなくて教会とか聖職者の出番よね~」
「聖水撒いて事が収まるなら、とっくにやってると思うけどね。それが出来ないから冒険者ギルドへ。そしておれたちへ、だ」
「シオンさんの話だと、魔素の関係で発生する動く屍とかゾンビィの類ってのは居るらしいけど、そいつらは魔獣扱いなんだってよ? 日本人からしたらゾンビィも幽霊も同じく怪現象だけど、こっちは違うみたい」
「おれたちにとっちゃ、おれの『透過』おまえの『千里眼』とかの魔法も怪現象だもんな。それでいてシオンさんみたいに『幽霊なんているワケないでしょ!』なんてビビっちゃうところだけは一緒だ」
「シオンさん、めちゃ怖がってたねぇ~。百物語でもやったら泣いちゃうかな?」
「まあ、幽霊がそんな程度の認識なら、その怪現象とやらも物理的っつーか現実的つーか、何らかの原因は有るんだろうな」
「科学の先生が言ってたな。『幽霊の正体見たり枯れ尾花』だっけ?」
「謎解きと言えば聞こえはいいけど、確かに冒険者の仕事でも無いだろうし」
「こっちのJ・V支部も、隊商護衛や魔獣駆除等の依頼で手一杯みたいだったよね。王都本部より閑散としてたし」
「かと言って探偵が受ける様な案件かっつーと……これも、なぁ?」
「ヘイさんとおじさんが受けてる商社員の素行調査ってのは、まんまだけどね~。横領とか、帳簿に乗らないヤミ取引の洗い出し? 西地区の倉庫街とか周辺らしいけど、ザーラと手打ちが済んだからまあ、大手振って動けるのは良いよね」
光一たち探偵団の初仕事、今は事務所内で雑用や賄いをやってくれている少女エミリーの救出で、西地区の大手反社組織・ザーラとの大立ち回りをやってのけた光一たち。
その後、召喚儀式を担当した組織の一つである国防軍特務部の副部長トクアンの仲介により和解が成立した。
金銭的にもメンツ的にも損耗が激しかったザーラとしては、探偵団の殲滅を叫ぶ者も少なくはなかった。
しかしザーラがやらかしたことは同盟国との結束に影を落としかねない事案である事も事実。エミリーを非合法に拉致監禁した連中に対し、実の姉に請われて(非公式とは言え王族の要請)奪還した探偵団の方に理が傾くのは当然。
トクアンが提示した「ザーラもある意味、尻尾切り宜しく利用された側」と言う、こじつけに等しいお題目で王国側が刑罰等を免除すること自体、十分すぎる条件である。ザーラも手打ちに応じるより最適解は無かった。
多少の遺恨は残るが、取り敢えず光一らはザーラの連中に着け狙われる事は無くなった。
で、とある商社から社員の中で私腹を肥やしている不届き者がいるかも? と言う事で平蔵と良介が、その真偽調査を担当する事になった。
そんな流れで、こちらの調査に割けるメンバーは必然的に光一と由美、となったワケである。
因みに真鈴は、ソンニ村盗賊団討伐の一件でパイプが出来た魔族軍の将校、ソネット・バンカー中尉の要請でBL絵草紙の執筆業務にかかりきりである。もちろん報酬も支払われるので、平蔵は毎月の安定収入は魅力的と快諾。更に、以前サークルで執筆していた真鈴も同好の志がこちらにもいることに感激、気合い十分で取り掛かっている状態だ。
「似顔絵、上手いな~って思ってたけど、同人サークル入ってたのね~」
「その辺かな? 同世代の女なのに、誰かさんみたいにおれの事、オタオタ貶すとかしないもんな~」
「同類相哀れむ? なぁにぃ~、真鈴ちゃん口説く気、アズマぁ~?」
「ハハハ、BLのオカズにされちまうよ」
などと苦笑する光一。
やがて2人は、依頼主であるラフロ町の役場に到着した。午後の休憩も終わり、終業まであと一息、そんな頃合いだった。
「遠路はるばる、ようこそおいで下さいました。私が担当の鉱山開発部部長補佐の任に就いておりますメイス・バートレットと申します。宜しくお願いします」
ラフロ町役場の執務室で光一と由美に応対してくれたのは、齢30代中盤ぽい、比較的筋肉質な女性だった。肩幅も広く、とてもガッシリしていて腕相撲したら光一は勝てる気がしない、そんな印象だ。
「冒険者ギルドJ・Vから紹介されまして、今回の件、調査させていただく事になりましたアーリウム探偵事務所のコウイチ・アズマと申します」
「同じく、ユミ・キタガワと申します。宜しくお願いします。さて、今回のご依頼内容ですが……」
お定まりの挨拶を交わすと、2人は早速本題に入った。執務室の椅子は馬車の座椅子よりかは座り心地が良かったが、痛めつけられた尻は早く温泉でケアしてくれと泣き叫んでいるようで、前置きやら雑談やらはすっ飛ばしたかったのが本音でもある。
「え~と。聞いた話によると、鉱山内で怪現象が起こっているとの事ですが……」
「まるで呻き声の様な音が聞こえるとか。かと思えばカラコロという、固い木でもぶつかり合っているみたいな音とか……でしたっけ?」
光一と由美は確認のため、依頼書に書かれていた事象を思い出しながら問いかけた。




