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王都へ還れ 1

 ソネット隊を送った後、探偵団一行は帰りがけでもあり、メノウ一家を見舞った。

「ご主人……いかが……です?」

「はい。まだ意識は戻ってませんが、状態は安定しているそうです。近いうちに目も覚めるだろうと回復士さんが……」

「回復士……マギさん?」

「そうです。昨日の夕方、王都に帰る前に診察して頂きました」

 J・Vの両パーティは、昨日のうちに出立したと言う事は村長から聞いていた。

 事情も事情、村に長居するのにはバツが悪いと感じたのか?

 光一たちは内心、安堵していた。行先は同じなので、出発が同じなら着かず離れず野営地も一緒では、ストレスの積み増し待った無し、となるところだった。

「おねえちゃん、かえっちゃうの~?」

「うん……お仕事……終わった、から……」

「む~」

「ダメよメノウ。皆さんもお忙しいんだから」

 むくれるメノウを母親が、やんわりと諫める。

「また……近くに、来たら……きっと、お邪魔する、わ……」

「ホント?」

「本当よ? ……だから……お父さんの看病……しっかり、ね……」

「うん!」

 メノウの満面の笑顔。真鈴はその笑顔がとても嬉しかった。

 自分の仕事で喜んでもらえる人がいて、その人が笑ってくれている。真鈴は心地よい充実感を感じていた。

「みなさん、こちらでしたか。馬車の出発準備が出来ましたぞ」

「村長」

 村長が探偵団を迎えに来た。

「皆さんには大変お世話になりました。村民を代表して御礼申し上げます」

 ペコリ。村長は深々と頭を下げた。

「いえ、こちらこそ。被害ゼロには出来なかったし、何より実質的に魔族軍が掃討したようなもんでしたっすから」

「あれだけの盗賊団、皆さまが引き付けて時間を稼いでくれなかったら、討伐隊が到着するまでに今の2倍、いや3倍以上の被害が出ていた事でしょう。J・Vの方々は……思うところもあるのでしょうが結局は何も……」

 村側としてはもっともである。真鈴は治療を手伝ってくれたマギの件もあり、彼女だけでも認めてほしいと言いたいところだったが、今は波風を立てることは控えた。

「じゃあ、出発するっすか?」

「そうね。それじゃメノウちゃん、バイバイね」

「元気でな」

「お父さんと……お母さんの、言う事……よく聞く、のよ?」

「はーい! おねえちゃんたちも、げんきでねー!」

「お世話になりました。どうか道中、お気をつけて」

 メノウ母子とお別れした光一ら探偵団は、そのまま村中央に待機していた馬車に乗り込み、村人たちの見送りを受けながらソンニ村を後にした。

 

        ♦


「着きましたぜ、みなさん」

 お日様が山の陰に隠れ、周りの空気がひんやりし始めた頃、探偵団一行は道中、何の障害も無く街道沿いにある野営地に到達した。

 野営地と言っても専用で設営されているわけでも無く、どの隊商も目的地間の距離や水の確保(河川等の近く)の関係から概ね同じところで展開することが多く、踏み固められた地面は草の丈も低く、石を積んだだけの簡易なコンロがそのまま残っていたりもしている。

 それゆえ、自然と定番野営地になっていったらしい。


 食事も終わり、一日馬車を走らせてくれた商人さんは食事中の酒も回って早々に就寝。で、その間、荷台で寝そべるくらいしかしていなかった(馬を操る技術は今現在、誰も持っていないので)探偵団は反省会も含めて駄弁っていた。

「あ~。まだ、お尻痛~い~」

「本来なら歩きで帰るとこだったから贅沢言っちゃ、いけねぇんだろうけどなぁ。ねえ良さん? 自動車(くるま)とか、『再現』出来ないもんかな?」

「いいわね~。ミニバン……だっけ? ああいうの再現してくれたら長距離移動とか、楽よね~」

「再現できるほどのインパクトがある車となると……難しいっすねぇ。やっぱ自動車学校の教習車辺りなら、初めて運転したって事もあるし出来るかもしれないっすけど……あ?」

「なに?」

「めっちゃインパクトのある車、覚えがあるっす」

「どんな……くるま?」

「フェラーリっすよ」

「フェラーリ!? 良さん、そんな高級車乗れる身分だったのかい!?」

「んなワケ無いじゃないっすか。社長が持ってたのを運転させてもらっただけっすよ」

「へ~。高級車って事は、そんなに記憶に残るほど凄い車だったの~?」

 フェラーリと言われても今ひとつピンと来ない真鈴と由美。だが、光一の驚き方からしてかなり優れた車なのだ、くらいは感じているようだ。

「そりゃもう。家、建て替えるくらい余裕の値段っすからね」

「わお!」

「そのフェラーリは、社長が子供の頃に憧れてたモデルだそうで古いMT車だったんす。『回転数低いとエンストするぞ~』と言われたもんでクラッチ繋いで、動き出すと同時にアクセルをちょいと強めに踏んだだけのつもりだったんすけどね~。そしたらもう、一気にグルン! と、あっと言う間にスピンすよ。ビックリしたっす」

「ああ、それで……強烈に……」

 そんなハイパワーな性能をいきなり体験したのなら、そのインパクトは確かに強いだろうなと、光一は解釈した。が、

「そりゃもう、『ぶつけたらン千万弁償だぁ~!』って気が気じゃ無かったっすよ!」

――あ、そっちか。まあ、それはそれで恐怖だったろうな~

と苦笑。

「ホント寿命が縮んだっすよ。社長は大笑いしてたっすけどね」

「でも試してみてもいいんじゃない? 有ると便利よ」

「ダメっすよ。特にスポーツカーはこんな未舗装の街道は苦手っす。地面は固くても細かい砂や砂利が多い道ではタイヤがまともにグリップしないっす。電子制御満載の最新型ならともかく、あの時代のスーパーカーはラリードライバーでもないと……いや、とにかくもう、俺じゃそんなハイパワースポーツカーなんてこんな道、まっすぐ走れないっす。それに、なにより燃料が無くなったらそれまでっすよ」

 なるほど~ と、光一ら三人が、なんとなく納得したところで話題は今回の件の検討会に移行。

「でも今回の依頼ってさ~。随分話が違っちゃったよね~」

「討伐戦、というのは織り込み済みだったけど、一応表向きは戦闘不参加って契約だったのにな」

「結局……戦ったの……あたしたち、だけ……」

「最初目指した冒険者らしいっちゃそうだけどな~」

「探偵、としては、なぁんか違うよね~」

「まあ探偵つーのも苦し紛れに付けただけの何でも屋っすからね。今までは偶さか探偵らしい依頼が続いてたってだけで」

「村長がコッソリ砂金の分け前、出してくれたの嬉しかったな~。ポテンタやクァラームはどうか知らないけど、ウチ的には赤字は回避よね~」

「おまえが撃ち抜いた宿屋の備品分、弁償無ければ黒字だったくらいだよな~」

「ご め ん! 悪かったってばぁ~」

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