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勘のいい魔族はキライ、かも? 1

 光一たちは真鈴も含めて銃器の扱い等、良介の指導を受けていた。

 良介には戦闘時、相手を撃つ時は腹を狙えと何度も言われた。腹部・腰近辺を撃たれると、致命傷にならなくても、手足を動かそうとしただけで激痛が走り、動きが鈍くなると。腰に「要」の字が付いているのは伊達では無いと。

 さらに、直径は矢より小さくても音速を越える弾速からの衝撃波や、弾頭の重心位置が後方に在る事から起こる被弾後の転倒(タンブリング)での損傷は相手の戦意を著しく下げる。

「民家に押し入ったオーガは更に凄まじい。一人は腰骨が完全に潰されていた。アレでは一命をとりとめたとしても、歩くどころか二度と立つことすらも叶わなかったであろうな。しかし解せん。これほどの戦闘力を持ちながら、なぜ冒険者の下請けなんだかな?」

 話題が光一らの素性に変わってマギの肩が若干委縮した様な気が。宿屋で由美がガチギレ起こした時の恐怖がフラッシュバックしたか?

 そんなマギをフォローする、と言うワケでは無いが光一、

「実はおれたち、トリアーノに流れて来たのが最近で……それで実績が認めて貰えなくてね」

やんわりと受け流した。まあ、「流れてきた」ってのは、あながちウソでも無いし、なにより、

 ――特戦隊の事を、勘繰られる訳にはいかない……

この懸念があった。

「そうなのか? トリアーノの冒険者たちが持つ、基本的な戦闘力では無い、と言う事か?」

「いえ、あたしたちのパーティも驚いている次第なんです。正直、あれほどの能力持ちだったとは……」

 マギも挟んできた。特戦隊の事は知らないだろうが、ギルドの入会を断られたことは聞いているはずなので、今回の戦績は意外であったろうし、何より由美がレッドホークを乱射したあたりで植え付けられた恐怖は……

「ふむ、そうか。我らも、トリアーノの軍や魔導士がこんな攻撃をするという情報は上がって来ておらなんだでな。ちょっと意外に思って居るワケでなぁ」

 と、ここで光一も気を引き締めた。

 思わぬ経緯で慣れ合ってしまっているが、彼らは敵国の正規の軍隊だ。もし自分たちが特戦隊から落ちこぼれていなければ、正面切ってぶつかり合う筈だった相手である。

 自分の言動から、機密事項である特戦隊計画に関して勘付かれることは絶対に避けたい。袂を別ったと言っても、気心知れた同級生たちも居るのだし。

「話は……聞いてる……」

「ん? 何かな、マリン殿?」

「トリアーノと……魔導国の間は……対立……してるって……」

「……そうだな。残念ながら、両国の緊張は高まりつつある。特に中北部の国境沿いは魔素石を含む地下資源が豊富な地域、そこから南下すると肥沃な穀倉地帯が始まる。この利権を独占したい連中はいくらでもいる。それらを巡って建国以来――いや、それ以前から常にいがみ合ってきた歴史もある」

「そういうのって……国境線とか、ちゃんと線引きして折り合おうとか、しないのかい?」

「もちろん考えられた。先の紛争が終結した後、その近辺はお互いが政府直轄――いわゆる天領化して管理者が暴走しないようにしているのだが……相手国の方に新しい鉱脈が発見されたりすると担当の貴族や官吏しだいでは、越境・占領しようとしたりな。そんな事の繰り返しだ」

「だから……今回の越境、も……?」

「うむ。最初は躊躇したのだが何しろ盗賊どもは数が多い上、我らの同族だ。この村を見殺しにしたとなると、それを理由に宣戦布告されても大儀はトリアーノ側にあり、となるのは明白だ」

「なるほど。越境自体は褒められたことじゃ無いけど、自国の盗賊による村への被害を防ぐためだった、という理屈が成り立つってわけか」

「些かあざといが、まあそんなところだ。我が領地と、この近辺の街や集落とは商取引もあるのでな。出来るだけ禍根を残さないような策を選ばねばならんのだ。もしもこの越境が問題になりそうだったら、貴公らが口添えしてくれるとありがたいところだ」

「問題にならないのが一番だけど……もしもの時は、出来る限りの事、させてもらうよ。危ないところ、助けてもらったし」

「お互いにな」

 本来は敵味方になるはずの、この集まり。しかし笑いながら双方を称え合い、助け合おうとする思いが一致するとか、光一の心持はまっことビミョーでもあった。


「ソネット様! 本国から伝令です!」

 光一らが敵味方を交えて和んでいる中、ソネットの従卒兵が駆け込んできた。

「おい、作戦中は隊長と呼べと言っておるだろう!」

「も、申し訳ありません、つい……」

「全くもう。で、内容は?」

「は! 発は領主様、バンカー伯爵であります」

 ――領主から……え? バンカー……伯爵?

「中央から、月末に行われる魔王府指定大演習に参加せよ、との通達があったそうです。バンカー中尉は速やかに帰営し、本演習に参加するように、との事です」

「急だな! 帰営しても兵を休ませる暇すら無いのか? ……返信だ。『本隊は目標盗賊団の殲滅に成功せり。なれど負傷者多数につき、帰営は明日夕刻以降の予定』以上だ」

「は!」

 従卒は敬礼すると、早馬の伝令兵に伝えるべく天幕を出て行った。

「あ、あの、バンカー伯爵ってもしかして……」

「ん? ああ、この国境周辺の領地の主、バンカー辺境伯は私の父だ」

 ――げ! 貴族の令嬢! こんな突撃隊長が!?

「なんだ? 『こんな突撃隊長が貴族の娘か?』とか思ってそうな顔しおって?」

 ――図星ー! てかキャティといいソネットといい、異世界(ここ)の女って勘、鋭くね!? いや、顔に出ちゃってる?

「伯のお子様は5人いらっしゃいますが、全員女性なんですよ」

 と副官。

「で、隊長は4人目のご息女だったのですが、伯は『今度こそわ!』と”は”と”わ”が入れ替わるくらいの勢いで男子誕生を期待されておられたもので」

 ――……日本語でしか通用し無さそうな比喩だけど……召喚時の言語スキルで上手いこと翻訳されてんのかな?

「そのショックと、隊長の産声が3人の姉上と比べモノにならないくらい力強かったと言う事で『軍人として育てよう!』とまあ、伯としても半ばヤケクソであったそうですが……隊長はそんな期待に応えるかのようにメキメキと才覚を表されまして」

「昔のことなど良いだろう、アース! 彼らには関係の無いコトだ!」

 若干頬を染めて副官アースの口を止めるソネット。対してアースは目を明後日の方へ向けてニヤ付いていた。

 ――仲、良いのか?

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