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戦い終わって 1

「連中は、あちらこちらにアジトを構えておる。出動が空振りになる事も少なくはないのだが……」

 話を聞く村長もかなり微妙な顔をしていた。

 想定外に大勢の盗賊団に襲われ、少なくない死傷者が出てしまったのは甚だ遺憾であった。

 しかし、それらは全て退治されたので、当面の間は唐突な襲撃に怯える事も無いだろう。

 それでも素直に喜べないのは退治したのが盗賊と同じ、日増しに緊張が高まる魔導国――魔族の兵隊だったと言う事であろうか? 

「つい最近、いくつかの盗賊団が合流して戦力を増強するという動きが有ってな。その時点で総勢は20に届くかという情報もあった。これ以上、勢力が大きくなる前に対処せねばならんと考え、尻尾を掴んだら次は無いつもりでの討伐作戦であった。故に越境の上、村内での作戦行動に及んでしまった次第だ」

「は……事情は承知いたしました。思うところはございますが、盗賊を軒並み退治していただけたこと、これには心より感謝させて頂きます」

 彼らの軍事行動が無ければ村民は最悪、皆殺しにあっていたかもしれない。盗賊が魔族領内に戻るまで待っていたら、それに近い結果になっていたのは明白だ。

「それと……」

 ソネットは副官に人差し指を振って合図した。

 副官は抱えていた革袋から更に小袋を一つ取り出し、テーブルの上に置いた。小袋と言っても大きさは男の拳ほどの大きさがあった。

「これは? ……な!」

 ビクッと、肩を震わすほど驚く村長。それを見て光一も目線を袋の口に合わせる。

 ――さ、砂金!?

「それをお納めいただきたい。これで死者が帰ってくるわけでは無いが……魔導国としてせめてもの償いと思ってもらえると……」

「わ、わかりました。壊された家屋の修復や犠牲になった家族への弔慰金に使わせて頂きます……」

 その後ソネット他、負傷した討伐兵の養生も兼ねて村はずれで一晩、幕営地を展開する許可をもらい、談合は終わった。光一たちはもちろん、治療に参加したマギ以外、事実上の傍観を決め込んでいたサントーやエンリイは、何も口を挟むことは出来なかった。



「わかってんのか? 連中は敵国兵なんだぞ!?」

「知ってるっすよ。でも、彼らのおかげで村は被害を最小限に留めれたっす」

「生意気言うな、下請けが!」

 J・Vの二組は荒れていた。特にポテンタ。

 襲撃が入村翌朝であり、今回はロクな対処も出来ず、少なくとも剣を交えるどころか一矢すら報いる事も無く終わってしまった。

 更に今回の件は『契約時の状況説明と著しく相違がある事が……』という条項を宣言する事も出来ずにいたところ、由美たちが応戦してしまった。これが依頼遂行の承認に該当してしまったのだ。

 それで事前の契約事項に則り、往復の道中経費の内、ある程度は支払われるが討伐に掛かる報酬は受け取れないことになり、不機嫌さらに倍! となっているわけである。

「大体が、ソネット隊が来なかったら村は壊滅してたでしょ? あんた達だって皆殺しにされてたかもしれないでしょうに」

 と由美。偉そうなこと言える立場かよ、と言わんばかりだ。

「ほざけ! 俺たちだって二階で迎撃するつもりで構えてたんだ!」

「それでホントにどうにかなったか? 1人2人までならともかくさぁ、20人が順番に殺されに来るはず無いだろ?」

「取り囲まれて……宿ごと放火……される、のが……オチ……」

 光一・真鈴も指摘。仮にも札付きの盗賊どもが、最後の一人になるまで同じ戦法を繰り返すなど、さすがに有り得ない。

 やはりサントーらは当初、光一らが予想したように、ここの二階に潜んでやり過ごそうとした、と言う方が正解だろう。

 多勢に無勢、素直に「勝ち目が無いから」と仲間の無事を優先して隠れる方を選んだ、と吐露した方が潔いと感じるのは光一たち探偵団がこちらの世界に来て、まだ日が浅いせいであろうか? 先だってのザーラ宜しく、メンツが大事?

「ギルド入会も断られたハンパもんが随分と偉そうじゃん! 身の程、わきまえるじゃん!」

「そのハンパもんは盗賊6人仕留めたけどぉ~? あんたらはぁ~?」

「ぐぬぬ~!」

 はい、シーラちゃんの負け。

 てか、探偵団の手に掛かって実際に絶命にまで至ったのは、良介がメノウの家で対峙したオーガ2人の内の1人のみ。もう一人は腹を抉られて身動きできなかったが死んではいなかった。

 光一・由美が銃撃した4人のゴブリン。光一らは良介の指導通りに、頭や手足に比べて動きが少なく、面積の大きい腹部を中心に狙っていたので、戦闘力は奪ったがオーガ同様、持ち前の体力・持久力の所為か死亡してはいなかった。ソネットが参入した時でもまだ息は有ったが、兵たちに情け容赦なく始末されたのだった。

「なぁ、もうやめよう。不毛だよ」

「エンリイ! おまえまで!?」

 クァラームのエンリイが止めに入った。心持ちとしてはサントーやアソートに近いものが有るが、今回は分が悪いと言う事も自覚していた。

「今回の件はこれ以上、言い争っても何の解決にもなりそうにないだろう。とにかく、前情報と違う盗賊の数や魔族軍の乱入とか、予想外の事が度重なってしまった。しかもそれが大きすぎた。で、僕たちは依頼を果たせなかった。それだけだよ」

「~~~~」

 アソートはまだ何か言いたそうであったが、自分たちの言い分が八つ当たりに等しい事への自覚も多少はあった。エンリイはその辺りを突いて落としどころを作ろうとしているようだ。

「タンテイたちもそうだ。確かに、君たちの今回の働きは驚くに値するものだったよ。でもやっぱり君たちは僕らの指揮下にあったのに勝手な行動をした。これは事実として認めあうべきじゃないかな?」

「あ~ん?」

 調子好すぎじゃね? と言わんばかりの由美。片眉吊り上げてメンチ切るの図。

 エンリイはそれに構わず、

「今回の報酬は契約に則って往復の経費以外は無し。タンテイ諸氏は命令違反・勝手な行動を取ったと言う事で経費も自腹で……こんなとこでどうかな?」

「はあ? 尻尾巻いて籠ってたくせに、お金(おぜぜ)だけは頂くってぇ? セコいにもほどが……」

「わかったっす。この場で契約解除っすね?」

「ちょ、おじさん!」

 良介が割って入った。

 エンリイやサントーの言い分には返したいところもあるが、相手は仮にもJ・Vの正規メンバー。シオンやガルムの手前、これ以上の軋轢は探偵事務所としても好ましくない。落としどころとしては甚だ偏り過ぎだが良介は受け入れる気だ。

「そう言う事だな。じゃあ、荷物持ってさっさと出て行ってもらおうか」

「あ?」

 サントーが被せてきた。由美のみならず、光一の目尻も吊り上がった。

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