表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/150

戦場は地獄だぜ! 3

 今の銃声は、メノウの両親の救出に向かった良介たちが戦闘に入った証左、と光一も由美にも分かった。 

「始まったな」

「無事に帰って来てよね……と!」

「うおおおおー!」

 盗賊の一人が突撃してきた。鉄板を貼り付けた盾を構えている。

 由美の放つつぶて(銃弾)を、その鉄板で跳ね避けようと言うのだろうが……

 バシィッ! バシッ、バシッ、バシィッ!

「ふご!」

 ドドーン!

 盗賊はあえなく被弾、転倒した。

 いくらM4の5.56mm×45が軽量の小口径弾と言えども20~30mの距離では、鉄板の板厚が10mmくらいでないと防ぎきれない。

 鎧にしろ、こちらの装備だと板厚は精々が4ミリ5ミリ程度であり、5.56mm弾でも容易に抜けてしまう。

「うがああぁ」

 盾を貫通した分、威力は衰えるが肉に食い込ませるには十分だ。光一は転倒したところを狙って冷静に、

バシィッ! バシィッ!

良介の指導通りに、ダブルタップで腹部を狙う。

「がは!」

大盾を持って走れるだけあって大したガタイの盗賊だが、身動きが取れなければ逆に良い的だ。光一の放った銃弾は一発は背中を掠め、一発はその(ぶっ)とい大腿部に命中した。

 光一は、由美や良介に比べれば銃の扱いはまだまだ不得手。当たったのは腿のド真ん中では無く、端っこであった。しかし、

「おがぁ!」

そのせいで光一の放った弾は、付近の筋肉を抉って飛散させる結果となった。とても立ち上がれる状態ではない。

 無力化完了。光一と由美はサムズアップでお互いを称えた。

「後ろ!」

 誰かが叫んだ。思わず周りをキョロキョロ見回す光一。

「後ろ! 後ろよ!」

 声は光一の上からだった。住民が二階から由美に向かって、後方からの賊の接近を教えてくれたのだ。

 ――回り込まれた!?

 バシィ、バシィッ!

 光一は反転すると、由美の後方に忍んできた賊に向けて引鉄を絞った。

「うわ!」

 光一の銃撃を受け、賊は家屋の影に引っ込んだ。更に、

「アズマ! そっちも!」

由美が警告。自分の後ろにも賊が来ていた。

「ちーぃ!」

 バシィッ、バシィ、バシィッ!

「ふが!」

 すかさず三連射。こちらはヒットした。

 盗賊は被弾した左腹部を押えて苦痛に水掫(もんどり)打っている。

 は~っと安堵する光一。だが、

「く!」

西側に回り込んでいた盗賊の一派6~7人が呼び戻され、迫ってきていた。伝令が届いたのだろう。

「由美! 前は任せる! 俺は後ろ……」

「えー! あたしだけで10人以上なんて……え?」

 ドドドドドー!

 東から多くの馬蹄らしき音が聞こえてきた。光一はまたも振り返った。

 ――な、なんだぁ?

「うおおおおー!」

吶喊(とっかーん)!」

「蹴散らせ―!」

 鬨の声を挙げ、十数騎の騎馬兵が突撃してきた。

 更に、その後方からは20人以上の歩兵が続いている。

 盗賊どもと違い、多少の差はあれど、ほぼ似通った兵装で統一されている集団だった。

 ――ぐ、軍隊か?

「うわあー!」

「ず、ずらかれー!」

 盗賊本隊側は、いきなりの乱入者に、蜘蛛の子を散らす以上に散り散りに分断されてしまった。

 統制・連携の欠片も無いありさま。これでは、どうぞ各個撃破してくれと言う様なモノ。

「半数は西を追え! 残りは反転して東組と挟撃するぞ!」

「「「「サー!」」」」

 指示を受けた騎兵は素早く命令通りの行動に移った。十分な練度を誇り、その一糸乱れぬ纏まった軍隊の動きは、初めて見る光一の目には感動的ですらあった。

「アズマ! 大丈夫だった!?」

 由美が駆けつけてきた。

「なにあれ? 国防軍?」

「援軍、出してくれたのかな?」

 口にしながら光一は同時に、

――いや、果たしてそれはどうか? そいつは考えにくいな?

と言う思いも同時に過った。大体が、盗賊がこれほどの大所帯であることが判明して、まだ一時間と経っていないのだから。

「それにしても……」

 乱入した騎士団の動きは目を見張るものであった。

 盗賊どもを次々馬で蹴り飛ばし踏みつぶし、大剣で首を薙ぎ払い、逃げ出して距離が空いた賊には弓兵が確実に仕留めていく。しかも生かして捕らえる気はさらさら無いようで、全ての盗賊が剣に槍に突かれ切り裂かれていく。まさに虱潰(しらみつぶ)し。

 ――これが本職(プロ)かぁ。容赦無ェ~……

「隊長、東組より報告! 民家5~6件が賊どもに襲撃されており、民間人に重傷者が出ております!」

 伝令の騎兵が東より注進してきた。

 ――民間人? 自警団……まさかリョウさん?

「回復士を向かわせろ! 出来るだけの治療を施せ!」

 隊長と呼ばれた騎兵はすぐに救命処置を命じた。卒なく即断、指示するさまは正に上級の軍人足るを感じさせ、素人同然の光一としては委縮してしまう事しきり。

「貴公らだけか?」

 その騎兵隊長が声を掛けてきた。

「え? あ、あの……」

「抵抗していたのは、貴公ら二人だけかと聞いているのだが?」

 問われて騎兵の顔を見る光一。

 ――え!?

 瞬間驚いた。しばし言葉を忘れてしまうくらいに。

 ――に、人間じゃない!

 そう、その騎士の頭部の両側には羊のようなご立派な角が生えているのだ。いわゆるバフォメット系?

「ま、魔族……」

 光一は思わず口にしてしまった。だが当の本人は、

「うむ、私は魔導(モニウム)国軍辺境派遣隊第三小隊長ソネット・バンカー中尉である。済まぬが村長と面会がしたい。国境を越えての軍事活動は越権行為だが、なぜこれに至ったか釈明をしたいのでな」

と、ケロっと難なく受答えた。

 カチ……騎士は口元を覆っていた面頬を外した。

 ――お、女!

 角に目が行ってしまっていたが、この騎士は紛う事無き女性兵士であった。鎧で目立たなかったが胸周りも確かにそれらしき膨らみも感じる。

「どうした? 口止めでもされておるのか?」

 バンカー中尉は怪訝な眼で光一を見据えた。

 トリアーノ国とモニウム国は緊張が高まっているのは周知の通り。その辺りも作用しているのかもしれないが。

「あ、いえ、そう言う事では無くて。俺たちは雇われなんで、村長の事とか知らなくて」

「雇われ? 冒険者か傭兵あたりか? しかし契約主は村長では無いのか? 知らんと言うのは解せぬな」

「ええと……あたしたちが依頼を受けたんじゃなくて、冒険者の下請けで……」

「下請け? 雑役か?」

「そんなもん、かな?」

「ならば尚さら解せん。雑役の貴公らが、たった二人でこれだけの盗賊団を押さえ込んでいるのに、当の冒険者は何をしとるんだ?」

「ああ、その……宿屋で立て籠もると言って……」

「はあ?」

 中尉から、どでかいため息が漏れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ