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魔族さん、こんにちは 3

「ちょ! 何やってんのよ、あいつ!」

 由美も叫んだ。真鈴の目も、これでもかと言うくらい見開いている。

「きゃ!」

 逃げる父親が擦れ違った少女を引き寄せ、ゴブリンたちの前に突き飛ばしたのだ。

「うお!」

 目前で転倒する少女。ゴブリンたちは行く手を遮られ歩を止めた。

「け! しゃらくせぇ! おい、追うぞ……ん?」

 思わず足を止めてしまったが、気を取り直して仲間に発破を掛けようとしたゴブリン(a)は、ゴブリン(b)の動きに気を取られた。

「あ、あああ!」

 ゴブリン(b)は、転倒した少女の頭を鷲掴みにして持上げた。

「なんだおめぇ。そんなガキ、相手にする気か?」

 ――お、おい、まさか!?

「いやぁ、オデにはそんな趣味ねぇゾ。でんも、こういう幼い雌ガキ、高く買う金持ち、いるもんヨ」

「マジか? こんなガキにブチ込んだら股、裂けちまうだろうに」

 何やらとんでもない話をし出す盗賊ども。

 ――魔族にもロリッてか、ペドフィリアがいるんか? しかも異種族の子を……い?

 正に唾棄したくなる思いの光一だったが、同じく隣で見ていた由美の様子の異変に気付いて息を飲む。

 ――キレ……てる? あ……

「おら、来い!」

「いたぁーい! ママぁー!」

「オデはこいつ連れてく。おめぇ、さっきの女。追いかけぇ」

 ――くそぅ、このまま見てるしか無いのか……つ!

 光一の頬に、いきなり激熱な何かが当たった。 

 

 バシィッ! バシィッ!


 同時に、

「ぐが!」

 少女を掴んでいたゴブリン(b)が膝を折った。

「きゃ!」

 突然の激痛にゴブリン(b)の腕から力が抜け、少女は転げ落ちた。

「ぐ、ぐお……な、なんだこれ……」

 左腹部に激痛を感じたゴブリン(b)は、押えた左手が己の血で真っ赤になっている事に驚愕した。

「な、何が……弓矢……いや、違うど……」

 ゴブリン(b)は地面に右手を突いた。

 ザッ!

 地面を踏みしめる音が聞こえた。

 軽い音だった。少なくとも自分や仲間とは違う足音。ゴブリン(b)は音のした方を向いた。

「女?」

 宿屋の窓から降り立ったであろう女が、何やら錫杖らしきものを構えて立っていた。

「てめぇか! ()()に何しやがった!」

 もう一体のゴブリン(a)が得物の戦斧を振りかぶった。と、ここで……

「あん?」

ゴブリン(a)の視界の端に異様な光景が映った。

 ススス、ススーッ

 転がった少女の身体が、起き上がる事無く宿屋へ向かって移動しているのだ。

 少女が宿屋の外壁に達したと同時、またも奇妙な光景がゴブリンの目に飛び込んでくる。

 何せ、窓に掛けられていたチュニックやズボンが宙に浮き、まるで何者かが着替えをしているように動いているのだ。

 その服はやがて人姿を形作ると、程なく人の首が、手が足が、浮かび上がってきたのだ。

 光一の光学迷彩スキル「透過」である。

「そこの木偶の坊!」

 今度は女が叫んだ。

「足元に転がってる仲間連れて、さっさと村から出ていけ! そしたら命だけは勘弁してやるわよ、この変態盗賊!」


 フーッ! フーッ!

 

 激しい息遣い。由美はかなり頭に血が昇っているようだ。

 無理もない。

 村に仇成す盗賊行為だけでも大概な上に、家族を守るためとは言え、同じ村民に、足止めのために転ばされた幼気な少女。挙句、異常性欲のペドフィリア野郎に売り渡すべく無造作に引きずり回され号泣する彼女を見て由美の中の何かが切れてしまったのだ。

 熱を帯びた薬莢が頬に当たった時に光一は由美のブチ切れを悟った。一瞬悩んだが、自分は由美の逆上に乗った。あの少女、このまま放っておいてはあまりに不憫すぎる。夢見が悪いなんてレベルでは無い。

 そこで光一は、まずは少女の安全を確保するべく、隙を見て「透過」を使って少女の救出を目指し、それに成功した。

 ここまではよし。

 だが多勢に無勢は相変わらずである。盗賊が大人しく引き下がってくれるかと言えば……

「舐めんじゃねぇぞ小娘がぁ!」

 ゴブリンは由美に向かって戦斧を投げ着けた。

 当たれば一撃必殺の破壊力を持つ戦斧ではあるが、重量級の武器でもあり、その投擲速度は遅く、由美はこの世界の人間よりかは素早くなっている反射神経・筋力で難なくかわし、続いて、


バシィ、バシィ、バシィッ!


「ほご!」

今度は三連射を食らわせた。腹に二発、左脚大腿部に一発が見事に命中。

「が、があぁ……」

 戦斧を投げてすぐ、腰の剣を抜いて突撃を仕掛けたゴブリン(a)は由美のM4小銃の餌食となり、転倒・苦悶の唸り声を上げた。

 小口径弾ゆえ、その効果に不安はあったが、威力於いてはかなり有効なようだ。とりあえず目先の制圧は成功した。

 だが……

「おーい! (a)ボムと(b)グフがやられてるぞー!」

 現場は見通しの良い表通りである。あっさりと盗賊団本隊に気付かれてしまった。

「やっちまったっすか!」

「ごめん、良さん。この子のコト見て由美のヤツ、キレちまって」

「まあ気持ちはわかるっすけどねぇ……」

「てめぇら! 勝手に何やってやがんだ!」

 二階から罵声が飛んできた。見上げると、アソートたちが顔を真っ赤にして怒鳴り散らしてきたのだ。

「余計なことしないでよ! 連中こっちに集中して来るじゃない!」

 シーラもお冠。彼らにしてみれば迎撃準備はしているものの、出来る事なら奴らに気付かれずに、やり過ごしかったところ。

「どうする気だ、バカどもが!」

「ヒヨッコがイキってんじゃないわよ!」

 探偵団のおかげで目論見が崩れてしまった上、下手したら仲間の敵討ちとばかりに全兵力がこちらに来てもおかしくない状況になってしまったワケで、彼らの言い分も、まあ分からなくはない。

 しかしクリンシュカ、

「何考えてんのよ! 胸が薄い分、頭の中も薄いの!?」

これはいただけない。

 ご自分のお胸に自信があるのは結構だが、それで優位性を誇り、他を見下すなど下の下である。

 確かに由美も真鈴も、日本基準で見ても控えめなお胸ではあった。だからと言って、そんな言われ方をされる、そんな筋合いも無い。つか、初顔合わせから道中、これ見よがしにちちを振るわせてほくそ笑む彼女にいい感情を持てというのは、どだい無理な相談だった。

 パカッ! パカッ! パカッ!

「うわ!」

 軽いが派手な音量の破裂音が響いた。同時に、軒先から弾けた木片がアソートたちに降り掛かって来る。

「な、何だあの武器は!?」

 由美の副兵装(サイドアーム)、マークIが三回火を噴いたのだ。

「ごちゃごちゃ、うっせーわ! 引き籠るしか出来ないヘタレが!」

 由美さん、激昂・暴走モード絶賛継続中である。お胸の容量をイジられ更にマシマシ。

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