魔族さん、こんにちは 1
良介はガンマニアではあるがミリオタと言うほどの知識は無い。しかし、それでもズブの素人よりかは多少、見識が有る。
軍隊が主攻正面に兵員を多く割く事は有っても、他の地点を無視し、空にするような一部分に全振りした投入はまずありえない。
「通常はリョウスケさんの仰る通りなんですが、今回の大演習には例の特戦隊が初めて参加するそうで……」
「あいつらが?」
「訓練は順調なんだねぇ」
「大演習の中で、敵の斥候の目から特戦隊を目立たなくする目的もあって、通常よりも人員が割かれておりまして……」
「討伐任務に回す余裕が無いから、ギルドに依頼してきたと?」
「そうなんです。ところが折り悪くギルドも人員が出払っていて、受けてくれたのは4人と3人のパーティ2組だけなんです」
「7人……魔族の実力は僕には分かりませんけど、ほぼ五分五分の人数で太刀打ちできるものなのですか?」
「村の自警団も参加しますので何とか……と言う事らしいです」
「あたしたち、戦闘経験なんかろくすっぽ無いわよ? それでギルドからもダメ出し喰らったんだしさ」
「お願いしたい業務は主に後方支援……と言えば聞こえはいいですが、正直に言わせて頂きますと荷役・雑役要員と思って頂ければ」
「あたしたち……じゃ、なくても……いいん、じゃ?」
「建築現場のガチムチ連中の方が良くね?」
光一も真鈴同様に疑問を感じた。パワー勝負なら彼らの方が数段上だ。
しかしシオン。
「そこはそれ。なにしろ皆さんはザーラの荒くれを一捻りにしたパーティですし? 市内の人夫よりは期待が持てそうと言う事で幹部会が」
初戦の功績を持ち出し、いたずらっぽくニンマリするシオン。まあ一応筋は通ってはいるが。
「ふ~ん……ところで出発はいつですかね?」
「三日後なんです」
「そりゃまた……急ぎだなぁ」
「依頼元のソンニ村は王都から見て南西の、魔導王国との国境に近い場所にありまして、馬車で3夜4日ほどかかるんです。村の要請からの時間も考えますと、今も彼らは盗賊に襲われ脅かされているやも……」
「でも、こっちも不明人の捜索案件抱えてるしなぁ」
「うん、まあそっちはエリアが絞れてきたし、僕だけでも何とかなりそうだから……」
「……受けるの……所長?」
「いきなり経験の無い、冒険者のクエストに参加ってのも不安が有るけど、世話になってるJ・Vさん直々の要請を断るってのもなぁ。ねぇ、シオンさん? うちの所員は戦闘には極力関わらない、って条件付けてよろしいですかね?」
「はい。参加パーティにはその旨、伝えさせて頂きますわ。自分の身は自分で守らせる、と言えば、主力パーティも討伐に全振りできますし」
「それじゃあ……コウくん?」
「ん? ああ」
「由美くんに良くん。そして真鈴ちゃん、参加してみないか?」
「受けるの?」
「俺やコウくんはまあ、ともかくとして、由美さんや真鈴さんは如何なものっすかね?」
「でも由美はM4持たせりゃ無敵だし」
「ちょっとぉ! 5.56ミリごときで、そんなイキれる訳ないでしょぉ?」
「じゃあ由美くんは不参加?」
「え? いや、あたしはやってもいいよ? この先、王都内の仕事だけで生計立てられるか分かんないし、戦闘抜きで良いなら色々見ておきたいし」
「僕は調査続けたいし、ヘレナくんやエミリーちゃんは外に連れ出す訳には、いかないしねぇ」
「由美さんや、コウさん、一緒なら……あたしも……いく……口下手だし……聞き込み、苦手……」
「その代わりと言っちゃなんだけど、真鈴て似顔絵描くの上手よね~。今回のフランクもそうだし、エミリーちゃんの時もそっくりだったしぃ~」
「んじゃ、決まりでいいかい?」
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「何よ! 話が違うじゃない!」
アーリウム探偵団を含むJ・Vの討伐隊がソンニ村に到着した翌朝、討伐対象である魔族盗賊団は日の出と共に、村に襲撃を掛けてきた。
討伐隊の内、主力である戦士主体のパーティ「ポテンタ」の支援魔導士であるシーラは、襲いかかって来る盗賊団の総数を見て愕然とし、震えるほどの涙声で嘆いた。
「せいぜい5~6人じゃないのかよ! なんだよ、これ! 軽く20人以上いるぞ!」
夜明け頃、村のはずれで不寝番をしていた自警団の1人がJ・Vの拠点である宿屋に息を切らして転がり込んで来た。
その者から状況の報告を受けたリーダーのサントー、そしてシーラたちは表に飛び出して東の状況を見た途端、仰天した。
事前情報とは全く違う、20人を超える大規模な人数で襲ってきた盗賊団は、村入口のゲートを守る自警団の抵抗を今にも排除、村中に乱入せんとしていたのだ。
「ダメだサントー! とても俺たちや自警団でどうにかできる人数じゃねぇ!」
サブリーダーの重剣士・アソートも早々に現状を見限った。
彼は重剣士だけあって屈強な戦士であり、松の根っこのような筋肉バッキバキの腕で大剣を振り回すタイプ。並みの盗賊の2~3人ならば1人で引き受けられるほどで、ギルドでも一目置かれているとかいないとか。
だが何事にも限度と言うものは有る。
ヒト種の盗賊団と違って魔族盗賊団は遠目に見ても分かる、オーク種やゴブリン種の中でも飛び抜けた体躯の連中だらけで、しかもそれらが20人超。
ただでさえ体力的に優位な傾向にある魔族。それでも5人程度ならば今回同行した、支援と回復力に秀でた同じJ・Vのパーティ「クァラーム」に後衛を託して戦闘に全振り、自警団と首尾よく連携すれば撃退できると考えていた。
「自警団が突破された! 村に進入してくるぞ!」
「くそ! 宿屋に戻るぞ!」
ポテンタの面々は宿所に戻った。とても正面切って戦える状況にはない。
「村に留まるの? 逃げた方が良くない?」
戦闘魔道士のクリンシュカが具申してきた。エルフのシオンより若干耳が短い辺りにハーフエルフの特徴が出ている攻撃系の魔法が得意な女性メンバーだ。ついでに言うと、巨乳持ちである。いきなりの襲撃の報に、お胸を防具に収めるのに手間取って出遅れていた。本人も自慢の種にしており、雑用に勤しむ由美や真鈴を見てほくそ笑むなど、性格に少々問題が。因みに仇名は牛エルフ。
そんな彼女の後退案の具申に異を唱える――と言うか疑問を呈する声が。
「逃げるのはマズくない? 正式に依頼を受けたギルドに泥を塗る事になっちゃうよ!」




