この世は男と女、そして少々の金 1
お世話になっております、三〇八でございます。
第二章突入です。
異世界での生活にも慣れてきた光一たちアーリウム探偵団は更に脚を延ばし、様々な人たちと繋がりが出来ていきます。そんな中で翻弄される光一は……
探偵モノの皮を被った(w)ライトアクション。ご堪能いただければ幸いです。
あの衝撃的な電車ごと召喚から二カ月が経った。
トリアーノ王国の計画した対魔族組織「魔導軍特殊作戦隊」の初期教育は滞りなく行われていた。
召喚された異世界人たちの部隊は、軍としての体裁も整ってきており、来月からは更に実践的な訓練を兼ねて、野外演習に参加するための準備に入り始めるらしい。
と、同じ頃。
その魔導特戦隊から落ちこぼれ、王都に於いて冒険者ギルド「ジャック・ヴァイス」の提携先組織と言う体で「アーリウム探偵事務所」を開設した東 光一ら日本人5人。彼らもまた、王都の一市民として生きていく目途が付き始めてきていた。
とは言っても、まだまだ手元不如意なところも多く、特戦隊組同様、日々これ勉強の毎日であった。
さて、そんな光一らの探偵事務所には今、とある案件を依頼してきた中年一歩手前の女性が訪れていた。
「奥さまから御依頼されました、ご主人の行動調査ですが……」
光一たちは一カ月ほど前に彼女から「夫の言動に不審な点がある」と相談された。妻の自分には話せない、良からぬ事をしているかもしれない。それを解明すべく、夫の素行調査を――との依頼を受けて夫の行動を洗っていた。
ある程度の調査が進み、今日は所長の平蔵が依頼人の女性に、その調査結果を伝えているところである。
「毎朝、普通に出勤。しかし、給金にバラつきがある……内緒で欠勤している可能性がある、との事で……」
「はい。休養日以外は、ちゃんと働いていると思っていたのですが……」
「ご主人の言われる『現場トラブルで作業が止まった』とか、その後『仕事仲間と飲み屋に付き合っていた』などの証言は、ここ一カ月超の間、当方が調査を行った結果、全て否定されました。同じ職場の同僚からそれとなく情報を引き出したのですが、ご主人はしばらく前から月に2~3回ほど欠勤していたそうです」
「……そ、それでその時、夫は……」
「当方が調査している間に2回、南地区西方のアパートメントに訪れております」
「アパート……そ、それで?」
「その部屋の住人は……独身女性、一人だけでして」
「は、はっきり……」
「は?」
「……はっきりと、仰ってください!」
「はぁ、それでは……。結論を申しますと、現在ご主人と件の女性は、既婚者の倫理から外れた不逞関係にある――と、我が探偵事務所は突き止めた次第でございます」
「くっ……!」
女性は若干俯き、唇を一文字にし、膝の上の拳は固く握られ、肩はフルフルと震えていた。
そんなバカな! などと、いきなり調査報告を否定しない辺り、彼女もある程度は予想していた結果なのだろう。おそらくは前科持ち? 性犯罪と同じで不倫・浮気の再犯率は高く、こちらの世界もその辺は同様らしい。
「それは……絶対に、間違いの無いコト……なん……ですね?」
震える女性の声。そうさせるのは、心からの怒りか悲しみか。
「詳しくは申せませんが、調査員の一人がその能力を発動して、しかと確認した事実であります」
その能力者とは、言わずと知れたスキル「千里眼」を持つ由美であった。
光一が夫を尾行して、アパートに入った事を確認すると由美に連絡。その後、由美は千里眼を発動して部屋の中を透視して|二人の決定的瞬間《ベッドで腰を振っている所》を確認したのである。
「あんな覗きみたいなコト、趣味じゃないんだけどね~」
平蔵が依頼人に報告している間、光一や由美たち探偵団の面々は、隣の給湯室で声を潜めて駄弁っていた。
「でも、日本じゃラブホに数回入り浸れば確定扱いされるっすけど、ここではそんな場所無いっすからね。遊びに行ってただけ、相談に乗ってただけとか、言い張る事も可能っすよ」
「なら、あたしたちの証言突きつけてもしらばっくれるかもって……あれ? おじさん、ここ入んないよ?」
由美が良介に質問。
「ん? え~と。ああ、ハンマーストラットとプランジャーの位置がズレてるっすよ? そこ直せば……」
「え? ここ? ん~と……あ、入った!」
良介の指導通りに部品位置を調整すると、由美の手にしていた拳銃、ルガー・マークIのメインスプリングハウジングは握把フレーム後方にすっぽりと収まった。
スキル再現のコツを掴み始めた良介は、探偵団向け護身用拳銃の創造に取り掛かっていた。由美には既にM4自動小銃を創造してはいたが、さすがにあんな目立つモノを首からぶら下げて、街中を歩く訳にはいかない。
と言うワケで懐に隠せる拳銃として、マークIを再現して女性陣用に支給したのだ。
で、実現相成った拳銃を良介の指導の下、光一らも交えて分解整備・組立ての勉強中なのである。
「音、しない……」
「ん? 何すか。真鈴ちゃん?」
「銃、構えた、時……チャキ! とか……ジャキ! とか……」
「ああ、あれ。いやあ、しないっすよ、あんな音」
「ウソ、なの?」
「あれは映画やドラマの演出っす。大体構えただけでガチャガチャ音してたら、特殊部隊とか任務にならないっすよ。気付かれないよう忍び足で近付いたのに、狙いを付けたらチャキ! とか、敵に『近くにいるぞー、これから撃つぞー』って教えるようなもんっす」
「はは、確かにな」
「でも、観ててテンション上がるっしょ? ジャキ! とか音入れられたら緊迫感が高まるっす。制作側も分かっててやってる事っすよ」
「ふーん……」
「さっきの話だけどさ。やっぱ由美の言う通り、旦那はすんなりとは認めないんだろうなぁ」
「じゃあ、どうやって認めさせるのですか、お義兄さま?」
例の騒動以来、探偵局の一員となった狐種の獣人ヘレナ・エミリー姉妹。彼女らにも一応武器は支給された。由美と同じモデルではあるが、いくら威力も反動も少ない22LR弾使用とは言え(あまりの低反動に『これで人、死んじゃうっすか!』と逆インパクトがあったそうな(良介談))マークIは手の小さいエミリーや真鈴にはそれなりの大きさ・重さであり、ちょいと重荷ではあった。
「やっぱり……現場に……奥さんが踏み込む……しか?」
光一に変わって真鈴が回答。良介も、
「こちらの世界じゃ、画像も動画も音声も残せないっすからねぇ」
と、補足。
全員の持っていたスマホは既にバッテリーが上がっている。文明の利器もこうなっては何の役にも立たない。単なる故郷の思い出の品、に落ちぶれている。
「行為に及んだところを由美に確認してもらって、そこへ奥さんが突撃……」
「マジで阿鼻叫喚よね~。あたしとしちゃ親と同年代の男女の濡れ場なんて、そう何度も見たくないんだけどぉ~」
「奥さん、どう出るかな?」




