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そして探偵は行く? 2 <第一章完結>

「ここが一番安全なんですわ。同盟国たるトリアーノ王宮のすぐ近くで、城下警衛隊のお膝元であり、国防軍上層部とコネクションのあるギルドの提携先であるこのアーリウム探偵事務所は格好の潜伏場所なのですわ」

「ルカの言う通りで、ここで何かあったらトリアーノ国のメンツを潰す事になりますから、殿下に仇を成そうとするキュウビィ内の不逞の輩も手が出せないんです。ルカや自分も大使館常駐の許可を得る所存ですので、何かありましたらいつでも馳せ参じますから。キュウビィ王国内の状況がはっきりするまでの間、ご無理をお願いしたく!」

「そんな無茶な……」

 椅子に背中を預け、がっくり肩を落とす平蔵。

 開所以来なかなか仕事が無く、このままジリ貧かと思われた矢先に飛び付いた本案件ではあったがとんでもないオマケがついてきた。いくらヘレナとエミリーの身の安全を確保するためとは言え、そんな綱渡り同然の方策など。

「これでも全権大使や駐在武官とも検討した最適解なんです、なにとぞ!」

「大使まで?」

「はい。見た事も無い、ジュウなる魔道具を操る能力(スキル)も然ることながら、それを以って双方最小限の被害で済ませ、最高の結果を導いた手腕。大使館員の多くが皆さんを高く評価しているのですわ!」

「そうは言ってもさあ……」

 平蔵だけでは無く、光一も困惑する事しきり。

「あの……」

「え? あ、エミリーちゃん?」

「その……」

「な、なにかな?」

「僭越ながらあたし、意外に思っております。お義兄さまなら姉さまのために即、ご了承下さるものと……」

「え、お義兄さまって! ヘレナさん、まだ話してないの? いや、説明してんでしょ?」

 思わずヘレナを見る光一。しかし、

「……」

ヘレナは顔を背け、無言だった。

「ヘ、ヘレナ、さん……?」

 光一くん、狼狽するの図。

 ――もしや、あのロイヤルおっぱいプレス。それを既成事実としておれと……いやいやそんな筈は無い!

 そんなんで彼女が将来の伴侶を決めるなんてマネ、するなどは有り得ない。その行状にはちょいと問題が有ると言えるが、何と言ってもヘレナは恐れ多くも畏くもキュウビィ王国王位継承権を持つ王族の一員である。いくらエミリー救出の立役者とは言え、どこの馬の骨とも牛の首ともわからん若造に、いきなり惚れるなどあり得る訳も無い。そう言うのは自分が夢中になっていたアニメやラノベの中だけにしろ、と。

 むしろヘレナ側がエミリーの勘違いを利用、幼気な少女の、そのつぶらな瞳で光一らをナチュラルに篭絡させるように仕向けているのでは! と考える方が普通であろう。

「まあ、いいじゃん」

「由美?」

「事情は以前から分かってるし、国元に戻るとエミリーちゃんもまたぞろ有象無象に狙われるわけでしょ? かわいそうじゃん~?」

「せっかく助けて……また、狙われたら……やった事、無駄に……なる……よね」

「そうそう。それにエミリーちゃんてお母さんと二人暮らしだったよね? じゃあ家事とかも手伝ってたんじゃないの~?」

「はい、一通りのことは出来ます。事務所内の炊事・掃除・洗濯なんでもお任せください、なんなりと!」

「待てよ! そのお母さんはどうするの? 狙われるんじゃないのかよ!?」

「彼女を狙っても何の意味もありませんわ。問題は国王陛下の血を引く人物、すなわちエミリーさまだけですから」

「状況次第ですが、今一度城内で雇用されるか、場合によってはこちらの大使館要員として派遣される事も有り得ます。それと、これは皆さまだからお話しますが……」

 ジュドが話題の矛先を変えた。

「秘密裡ではありますがトリアーノ国防部から我が国大使に、対魔族軍特殊部隊創設の計画案が伝えられました」

「特戦隊の事を?」

「有事の際は同盟国たるキュウビィ王国も、足並みを揃える必要が出て来ます」

「ですから我が国内の内部の問題を、トリアーノ国内に持ち込んで支障をきたすことは同盟関係に影を落とす事になりますわ。それはキュウビィ内のどの派閥も望むところではありません。どちらもトリアーノとの通商・交易の利権を狙っているはずですし」

「トリアーノとキュウビィは同盟を組んでから戦争らしい戦争は起きてないらしいっすね?」

「対外戦争が無くなったら国内の抗争が激化って、皮肉なもんだねぇ。で、結果としてこのままアーリウム(こちら)で潜伏するのが一番であると?」

「言ってしまえば全てが微妙・中途半端な状態にあるんです。キュウビィ内の相関がハッキリする迄はここで……」

「だからって王女様がこんなとこで何すんだよ?」

「姉さまは算術がお得意ですよ、お義兄さま」

 ――だからお義兄さまじゃねぇって!

「実際にエイダの方(実母)と共に奥の会計全般のチェックや業務の割り振り等にも従事しておりました。そういった雑務、ぜひお任せくださいませ」

「事務所の会計……所長の秘書……とか……?」

「え、僕の? 秘書が必要な事務所? ここ?」

「所長代理でもいいじゃん。うちは人材が乏しいんだし、ヘイさんの聴能力は思いっきり探偵向きなんだし? 外廻っている間、事務所でお留守番してもらってさ。それとぉ~」

 由美の顔つき眼つきが、ついと悪くなった。

「ご両人をかくまうって事はこれ、ウチに対する依頼ってワケよね? だとしたら~」

 由美は右手の親指と人差し指で輪っかを作りながら、

「2人のお給金はそれで相殺って事で、おけ?」

と、こちらでもこのサインが通用するかどうか不安げに見る良介・真鈴を尻目にして、キュウビィ勢に向けて口元に暗黒の笑みを浮かべながら迫った。

「あ、はい。その辺りは皆さまの負担にならないように、大使や事務官も予備費からの支出は問題ないと……」

 ――あ……通じ……た……

「なら、事務所(ここ)の家賃くらいは……」

 悪笑顔さらに倍!

「負担してもらってもいいよね~?」

「は、はあ。わ、わかりました。その辺りのご要望は、前向きに検討させて頂きますので……」

「本国、及び大使館がその案を受け入れる事と引き換えに、殿下とエミリーさまのご滞在の了解を……!」

 由美の銭ゲバフェイスに押されたかどうかは不明だが、ジュドとルカ、そしてヘレナ姉妹も条件を了承したようだ。しかし、ワケありとは言え他国の王族をタダ働きさせ、家賃まで集るというのも……アリかしら?

後藤(ごっ)さん?」

「ん?」

 良介は平蔵に目配せした。所長一任、と。

「ふ~ん……」

 真鈴や由美の表情も窺ってみる。

 真鈴は良介と同じく、由美も悪い笑顔ながらも最終の決済は平蔵に、との目だった。

 そして光一は、

 ――やれやれ……

という思いを引き摺ってはいたが、やはり所長一任に同意していた。

 平蔵は一つ、軽くため息をつくと、

「まあ、いいかぁ……」

ヘレナに回答した。

「王女殿下。当アーリウム探偵事務所は、あなた方の要請を条件付きながら受け入れたいと思います」

「あ、ありがとうございます! あ、でも条件とは?」

「ご存じのように我々は異世界からの召喚者であり、その意味で王国とのパイプは有るといや有るんですけど、まあ当てに出来ない事情がありますのでね」

「落ちこぼれっすからねぇ?」

「そう、国防軍のお眼鏡に適わなかった者同士の寄り合い所帯でしてね。ホント、吹けば飛ぶような集まりなんですよ」

「実際、エミリーちゃんの件にかかりっきりだった間、他の依頼が全然舞い込んで来てないもんね~」

「ジリ貧に……逆戻り……」

「と言うワケで、お二方を他国の王族の方として遇する余裕なんてからっきしなもんで、その辺は覚悟してくださいな。てか他の者同様、一所員として扱わせてもらいますんで、それで宜しければ所員一同、お受けさせて頂きますよ」

「あ、ありがとうございます!」



 思わぬ所員増員にビミョーな空気で盛り上がる事務所内。と、ここで、

 コンコン……

事務所の扉をノックする音が。

「あの~……」

 扉がちょっと開いて、年配――と言うには些か早すぎるか? てな年齢の女性が顔を覗かせた。そして、

「私、冒険者ギルドのジャック・ヴァイスさんから紹介して頂いた者で……こちらで素行調査を請け負って頂けると聞いたのですが……よろしかったでしょうか?」

と聞いてきた。

 光一、由美たちは思わず顔を見合わせた。

 ――客だ!

 ――依頼だ!

 ――金蔓!

 彼らは無言のまま、そんな台詞をアイコンタクトで会話していた。そして一同の思いを受けた平蔵が立ち上がり、

「はい! ようこそ我がアーリウム探偵事務所へ! 素行調査はもちろん、人探しに物探し。庭のお掃除から草むしり、ドブ攫いと私どもで出来る事でしたら何でもお受けしますよ! ささ、ずずっと奥へ! 詳しいお話、お伺い致しましょう!」

新規顧客を迎え入れた。


 前途洋々、とは ちょほぉいと ほど遠く、国際問題にも発展しそうな爆弾を抱えたままの出立だが、光一たちは二件目の来客と言う事で、この先の探偵家業にうっすらと光が見えて来たような気がした。

 この時の探偵団の目はホント、微妙であったかもしれないが後は野となれ山となれ、なんとな~く腹を決め始めた光一たちだった。

どうも、三〇八でございます。

まずは第一話完結であります。

タイトルに探偵なんて関しちゃいますが推理だの、謎解きなど組み上げる能なんて無いので、ライトアクションとして気楽に楽しんで頂ける作風を目指します。

余り間を置かず、第二話もアップ予定ですので、お付き合いのほど、よろしくお願い致します。

                          三〇八


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