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そして探偵は行く? 1

「そろそろ()()()でも行けるかと思ってたお前たちを簡単に煙に巻く奴らだったしね。ロゼの聞き違いじゃなければ連中はザーラとも取引したいとか言ってたんだろ?」

「うん、一番歳上っぽいヤツが、そんなコト言ってたよ」

「ザーラからしたら、舐めてんじゃねぇよってトコだけど、連中はヤサを偽装してるワケでも無くて看板も堂々と出してるし、フカしてるわけじゃ無さそうだねぇ……いがみ合いするより利用し合った方が得策って競合相手(ライバル)、なんてのも居るもんだしね」

「そうなの?」

「無能な味方より、優秀な敵の方が信用できる……冗談抜きでそう言うのも有るんだよ」

 キョトンとするロゼとマイロ。

 一端の闇ギルド員になりつつも、こういう所であどけなさを見せる二人に、マスター・リリィの眼尻は再び垂れ下がった。


         ♦


 日の出から数時間がたち、朝から昼の縄張りに入りかけた頃、

「この度の不始末。何とお詫び申し上げればよいか……」

ザーラ・ファミリー若頭クレンツ・コルッチェは、イオタニア市の北と西の境目近辺に看板を掲げる王都でも指折りの大手商社であるドレン商会の会頭室内で、コレオ・ドレン会頭を前に深々と頭を下げた。

「本来ならば我が方のドン、テッシィ・ザーラ自らお詫び申しあぐるところですが、年齢からくる体調不良のため外出も叶わず……重ねての非礼、何とぞ……」

 そう言うとクレンツはコレオの机上に袋を一つ、差し出した。

「今回の報酬です。謹んでお返しいたします。それと……」

 更に、ほぼ同じ大きさの袋をもう一つ。

「この度の不始末に対する我がファミリーの違約金(ペナルティ)となります。どうかお納めくださいますよう……」

 クレンツは再度頭を下げた。深々と。

「いや……」

 対するコレオ会頭。口をへの字にしながらも、

「こちらも当初から無理を聞いてもらったとは思っとります。ザーラさんの誠意は、私から()()()に、ちゃんとご説明しておきますので……くれぐれもお身体御自愛なされますよう、ドン・ザーラにはお伝えください」

と、やんわりと答えた。

「お心遣い、感謝の極みにございます。では、これにて……」

 クレンツは今一度、深く頭を下げるとコレオとは目を合わさず振り返り、そのまま部屋を後にした。


 パタン……クレンツがドアを閉じると同時、コレオは机から立ち上がり隣室へと向かった。

「お聞き頂けましたか?」

「うむ……」

 奥の部屋は応接室になっていた。そのソファに座る気品を感じる貴族風の出で立ちの、歳の頃40代半ばの男が唸る様に応じた。

「惜しかったな。仲睦まじいとは言え、まさかヘレナ殿下があそこまで行動されるとは思わなかった。少々、甘かったようだ。貴社にも期待外れにしてしまったな」

「残念至極です。しかし、卿? このまま引き下がるのですか?」

「ふふ。キュウビィとトリアーノの貿易利権、諦めるには惜しいかな?」

「当然でございましょう? ですからこのような横紙破りな手段だと承知で、反社組織にまで手を伸ばして計画したのですから。卿の領地にも恩恵は計り知れませんしね?」

「ははは。いや、すまん。人の事をどうのと言える立場では無いな。しかし知っての通り我が領地は農業が主力ではあるが商工分野の発展が思わしくない。貴社と共にテコ入れが可能になればそちらの成長も期待が持てる」

「王室派の幕閣は頑なに利権保守に傾倒してますな。そこに付け入っている商社アスロッカも……して、この先はどうされます? まさか白旗では……?」

「そんなわけは有るまい。とにかく()()()にご説明申し上げて前後策を練らねばなるまい。()()()の宮城内での立場も固めねばならん」

「ヘレナ殿下とエミリー嬢の方は? 王都に居る間に何らかの行動を?」

「それも同志と審議せねばならんだろう。とりあえず監視だけは続けてくれ。おそらく帰国なされるだろうが警備もより厳になろう。当面、遠巻きに見据えるだけにしておこうか?」

「わかりました。何かあればすぐにお知らせを」

 男は、頼む、とコレオに伝え、冷め切った茶を飲み干した。


         ♦


「あの! すいません、もう一度!」

 目を見開き、垂れさがった顎を懸命に持ち上げて、平蔵は今一度聞き返した。

 相手はヘレナ・エウロパ王女殿下とその妹、エミリーだ。

「ですから、私とエミリーをこの事務所で雇って頂きたいんです!」

「な、なんでそうなるんですか! 我々が何のためにエミリーさんを救出したと!? ご姉妹で故郷に帰って頂くためじゃ無かったんですか!?」

 ヘレナからの唐突な就職願い。平蔵ならずとも驚愕する以外の選択肢などあり得ない。その証拠に光一、由美、真鈴、良介の眼ン玉はピンポン玉にマジックペンで点を付けただけのような目になっている。

「ご迷惑なのは重々承知しております! でもこちらにお願いするしか他に方法が!」

「だからなんでさ!? おれはご両人に故郷へ戻ってもらうために身体張って!」

 目玉がピンポン玉からまともな眼球に復帰した光一も参加。どうにも得心が行かない。今までの騒動はなんですの?

「それはですね、殿下が申されるには……」

 ジュドが割って入って来た。

「今回、エミリーさまの救出が滞りなく、成功裏に終えた事は喜ぶべき結果ではあるのですが……」

「ふんふん」

「結局は直接の実行者であるザーラ以外の背景が不明なままであることが殿下の懸念の元なんです」

「今回の件、ザーラによる人身売買や営利誘拐では無い事は明白です。彼らを動かした勢力が有るはずですわ」

 ルカも補足し始める。確かに、その辺りは当初から気に掛かっていた事だった。

 エミリーの廃嫡を良しとしない勢力か? それを王宮における自身の影響力を高めるべく、ヘレナとエミリーを担ごうとする勢力? あるいはそういう言いがかりをつけて廃嫡反対派の機先を削ごうとする派閥? その辺りは相変わらずハッキリとはしていない、未だ藪の中と言って良い。

「だからって、なぜ僕の事務所に就職って選択肢が出てくんの!?」

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