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潜入・作戦開始 2

 陰部の茂みもしかり。有るか無いか分からない、限りなく透明に近いはずのシースルーが罠丸出しと言って良い障壁として立ちはだかる。

 ほら、あと一息ですよ? 

 まるでそんな風に、男の煩悩に挑戦するかの如き演出。

 もしも彼女に自分の()()()()を刈り取られるのだとしたら……自分の考え得る最高の初体験となるのは言うまでもない。

「恥かしいですわ……」

 シーナの声で光一の意識が現世に戻ってきた。

「そんなに熱烈に見つめられましては……」

「ああ! いや、すみまセン! あ、あまりにモお綺麗で! き、緊張しチゃって!」

「ふふ、ホントお上手」

「いえ、マジっす、マジ! それに自分は、こういうの初めてでして……」

「初めて? あ、こういうお店の事? いえ……」

 ――う……

「女性との夜、が?」

「は、はずかしながら……」

 こんな時は嘘や誤魔化し、ハッタリの類は悪手である。素直に吐露した方が吉、とは平蔵の言。

 で、シーナ。

「じゃあ、わたくしがお客様の最初になれるのですか? 光栄ですわ~」

 と思いっきり世辞られる光一。ビジネススマイルとは分かっていても、少し喜んでしまう自分が情けない。

「ええ、だから落ち着かなくって! ちょ、ちょっと失礼!」

 そうドモリつつ、光一は懐からシガーケースを取り出した。細く短めのリトルシガーらしき葉巻を摘まんで咥える。

「あ、お煙草はお()みになるのですね。少々お待ちを」

 そう言うとシーナはベッドサイドの卓上から魔石ライターを取って、光一に差し出した。

「どうぞ」

 点火するシーナ。

「ど、どうも」

 礼を言いながらシガーの先をライターに向ける光一。しかしその先を不意にシーナに向け直した。

 え? シーナが訝しんだ表情を見せると同時、

シュ!

シガーの先端から何やら煙のように、細かい微粉末が噴き出された。

「う!」

 シーナの表情が歪む。ライターに注視していた彼女は避けるスキが全くなく、その粉末を鼻・口周りに、まともに喰らってしまった。

 ゴトッ

 途端に身体の力が抜けていき、ライターがシーナの手から床に転げ落ちた。

「あ、う……し、しくっ……た……」

 ズルズルと倒れていくシーナ。襲い来る眠気に負けそうな瞳は光一を恨めしく睨みつけていた。それもやがて重くなった瞼に塞がれてベッド下に沈んで行った。

 ――ごめんなさい、シーナ姉さん!

 光一は横たわったシーナの身体を抱え、ベッドに上げて出来るだけ楽そうな姿勢で寝させようと寝姿を整えた。床下のまま放置、でもいいのだろうが、それを選ぶには光一は彼女に情が移り込んでしまった。プロとしては失格だろうが、まあそこは初心者ならではと言う事で。

 ――よっと!

 ベッドに寝かせた拍子に、彼女の顔がどアップになるほど光一に接近した。

 ――キレイ……だなぁ……

 何度見直してもこの世のモノとは思えない美しさであった。口惜しそうに歪む眉も半ば開いたままの唇もすべてが別嬪だ。このまま思わず唇を奪ってしまいたい衝動が湧き出るほどのエロさと共に。

 だがまあ、即効の睡眠系魔法薬が付着した唇にキスなどしようものなら自分も途端に寝転げてしまうだろうが。


 シガーに仕込まれた薬物は、特定の薬草・香草・魔石紛を魔導士が魔力も注ぎ込んで調合した催眠剤であった。ルカの伝手で在トリアーノ・キュウビィ大使館の駐在魔導武官から回してもらった秘薬である。

 光一は、もう一度シーナの顔に自分の頬を近づけて呼吸の有無を確認した。同時に手首の脈も探る。

 ――よし

 両方、ともに反応アリ。シーナは眠っているだけだ。

 足し無い光一の知識でも、一瞬で眠らせられるような麻酔薬なんてのは、ほぼ致死量であることくらいは知っている。そんなのを喰らって数十分後に、呑気にあくびしながら起きられるヤツなんぞベーカ町の迷探偵くらいのもんである。

 故に魔導武官謹製の魔法薬とは言え、下手をすると絶命もあるか? と危惧していたのだが無用な心配で終わったのは僥倖。この()()は、あともう少し必要となる。

 それはさておき――。

 ここまでは上首尾。彼女とベッドで、しっぽりと合戦していると見せかけて、その間に由美の千里眼でもボヤけていたエリアを調査。もしもエミリーの拉致が確認されれば、出来る限りその場で救出。それが今回の作戦大綱だ。

 シーナをベッドに預け直し終えたあと、改めて彼女を見直す光一。

 さっきと変わらない少し顰めた眉も、開き気味の口も、無防備になったお胸もすべてが美しく麗しく、そしてエロい。よくここまで理性が持ち堪えたものだと不思議ですら思う。でも身体を張った任務・責務を背負っているわけだし、両方なんて贅沢は言わないが、右乳の一揉みくらいしてもバチは当たらないんじゃないかなぁ~とも思ったり。

 しかしながら実は光一、その全てが躊躇われた。

 経験のない光一にとって彼女の魅力は、全ての思いが下半身から一気に噴き出しそうになるほど美的にも性的にも素晴らしい女性だった。

 だが度を過ぎていた。あまりにも別嬪過ぎて逆にヘタれてしまったと言われても否定できない。自分ではとても釣り合わない、と自信を持てないと言うか。品なく袖を引っ張ってきた客引きの遊女の方が躊躇わなかったかもしれない。

 二度と、こんなパーフェクトグレードな女性と同衾する機会は無いだろう。手が出ないまでも、いつまでも見つめていたいと願う、それほどまでに彼女は美しい。

 そんな感情を押し殺し、光一は任務に取り掛かった。


 ドサッ

 光一は、シーナの使い走りとして廊下に待機していた歳の頃12~3歳くらいの少女を「シーナさんが呼んでる」と誘い込み、同じく眠らせた。

 しかし、なんぼ仕事でも、なんぼここが反社直営の店と言っても、彼女らに罪があるわけでも無いので良心の呵責は避けられない。

 そんなの甘ちゃんだと言うのも分かる。当初、目指した冒険者の仕事にある、護衛・討伐などでも相手は魔獣だけではない。盗賊との戦闘ともなれば、人間同士で切った張ったの命のやり取りになる場合も往々にして有るワケだし。

 などとあれこれ脳裏を過る中、少女をソファに寝かせた光一は、室内のランプを窓際で振って「こちらも行動開始」を外に知らせると、ささっと服を脱ぎ始めた。スキル「透過」を展開、姿を消す。

 唯一の武器である催眠シガーをケースから取り出す。それを拳の中に握ってしまえば、これも視界から遮断できる。得物を隠せる数少ない方法だ。

 真鈴からは、やおい穴に隠す方法も強く勧められたが全力でお断りします、とした。つか咥えられるか、そんなもん!


 さしあたっての目標は、LOWER・FLOORの地下一階にある厨房だ。

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