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真夜中の訪問者 4

「カンに近いけど、まあ一番それらしいもんね~。いずれにせよビンゴ引くまで一つずつ潰すしか無いし~」

「それで、どうやって確認するのですか? あ、まさか……」

「……潜入?」

「ああ。ボヤけている場所は由美くんが特定してくれているから、客を装って入店して、そこへ近づいて確認しようと思うんだ」

「いきなり潜入を? いささか拙速では?」

「そうですわ。そんな危険を冒さなくても、ユミさまの千里眼で見張り続ければ、人の出入りなどで更に正確度が増すと思われますわ」

「もちろん、そうも考えたんだけどねぇ」

「ジュドさんの嗅覚スキルと同じで、あたしのスキルも無限じゃなくてさ。千里眼使ってるうちは当然、魔力を使いっぱなしなワケなの。距離や、屋内か屋外かでも魔力の消費量が違うんだけど~。単純に遠くを見るだけでも約1時間。複雑な屋内の透視だと精々15分くらいかな。それ以上無理すると魔力が枯渇して失神しかけちゃうのよ~。めっちゃ身体だるくなっちゃってぇ~」

「最近、僕たちが嗅ぎ回っているのは連中も周知してるわけだし、時間を置くと対策を立てられる可能性もあるしね」

「余所に……移動されたら……一からやり……直し……」

「でも、潜入するにしてもそんな簡単にいくかな~? あたしの見た怪しい場所って客用のお座敷からはちょっと離れてるから、あちこちにザーラの目が……あ、そうか!」

「そう。コウくんの『透過』だよ」

「え!? おれ!?」

 思わず指で自分を指す光一。

「なるほど。娼館なら服脱いでても不自然じゃない所っすもんね?」

「コウくんの能力も、西地区からここまで持続するだけの時間的余裕があるのは実証されたし、店内を探すくらいは大丈夫だろうしね」

「ちょ! まってよ! おれ、そんなトコ入った事無いからどうすりゃいいのかなんて分かんねぇよ!」

 童貞少年焦るの図。

「僕は外で指揮とりたいしなぁ。良くんも再現(リプロダクション)での武器創造が佳境だしぃ。とは言え現役高校生だったコウくんに一人で行けってのも酷だよねぇ」

「アズマが行くのは確定なのね。よかったわね~アズマぁ。大人の階段一気駆けよぉ?」

「卒業……おめでとう……」

 とか言いながら、由美も真鈴もこれ以上は無いってほどのジト目をくれてきた。

「お前ら! んなハエの集った犬のクソでも見るような目で人のこと睨むの、ヤメてもらおうか!」

「う~ん、下手打つと向こうを硬化させる可能性も高いしなぁ。やっぱ一人は難しい……あ、そうだ。ねぇジュドさん?」

「はい?」

「悪いんだけどさぁ。彼の()()、頼まれてくんない?」

「は!?」

軍人さん(君ら)なら、ああいうトコって馴染みなんじゃないかな?」

「え! じ、自分がですか!? あ、いや、しかし!」

「もちろん費用はこちらで持ちますんで」

 回り回ってヘレナの金だけどね~。

「いえ、そう言う事では無く!」

「あ、もしかして妻帯者でいらっしゃる?」

「ああ、いやその……」

「すみませんヘイゾウさん。実はそう言う話では無く……」

「へ?」

「実は彼は……」

 チラッと目線をくれるヘレナ。

 だがジュドは、その目線を受けることなく俯いたままだ。

 そこでヘレナの意を汲んだルカが言った。

「アッジー武官は男色家なんです」

 キラーンッ!

 光一や平蔵が「え、そっち?」とか、揃って首を傾げる前に、真鈴の眼光が怪しくも強烈に光った。

「へ~。そりゃ、娼館とかは苦手になるよね~」

「そのかわり、女性臣下の多い王后陛下の傍に安心して配属出来たのですわ。まあ、あとで発覚した偶然だったのですけどね」

「それで!? 今お付き合いされてる方はいますか!? いらっしゃるならどんな状況(シチュ)ですか!? いないならコウさんとかリョウさん、いかがですか? どちらがお好みですか!?」

「おい、いきなり何をとんでもねぇコト聞いてんだよ! つか、おれまで巻き込もうとかどういう了見だ!?」

「いや、ホント真鈴ちゃんて趣味に傾くと饒舌になるっすね~。俺も模型や銃の話になると、そうだから気持ちはわかるっすけど~」

「まま、まあ真鈴ちゃん落ち着いて。君の趣味にはとやかく言わないけど今はね、ね?」

「ハ!」

 平蔵の取り成しに、暴走から我に返った真鈴は一気に頬を赤らめた。肩を窄め、おへそ辺りで手を交差しながらモジモジし出す真鈴。

「す……すみま……せん……初で……(ライブ)で……見られるかも、と……すみません……」

 生BLの期待に思わず疾走(つっぱし)ってしまったが、自分を取り戻し、血走った赤い目から潤んだ眼に変わって恥じらう真鈴。生でそんな萌えなシチュを目にし、普段寡黙なキャラの豹変のギャップも相まってちょっとドキッな光一くんであった。とは言え、BLのオカズにされると言うのはどうにかならないものか、とも。

「殿下、ルカ! そんな事、このような場でバラさなくても!」

「でも、このままでは潜入員にされてしまい、娼妓さんと相まみえることになりましてよ?」

「こちらとしては武官殿に気遣ったつもりなんですけどぉ?」

 ヘレナやルカからフォローにならないフォロー。バツの悪いジュドは苦虫を噛み潰した。

「ん~? やっぱこちらでも同性はタブー? 宗教裁判にかけられるとか、投獄されるとか~?」

「い、いえ。確かにそんな国もあると耳には聞こえますが、我が国はそこまでは……しかし、その~、何と言いますか……」

「ふ~ん? まあ、あたしたちの前では隠す事無いわよ? あんたの問題だし、あたしたちに迷惑かけてるワケじゃ無いしね。あんたはあんたのままでいればいいのよ?」

「え? いや、私のような者は通常は……」

 目線を落とすジュド。しかし真鈴は再び目を輝かせ、

「あなたは、あなたのままでいい……今の、はにかむあなたは尊い!」

またぞろ饒舌になってきよった。

「その辺はまあ、そこまでにしとこうよ。でも、逆に考えて好都合じゃないかな?」

「好都合? 何がだよ?」

「聞き込んだ情報をまとめると、ザーラ直営の店ってのは2つ並んでてね。一方は他の店よりは高いけど庶民向けで、来客数もかなりあって人目が多すぎるんだよ。で、もう一つの方が西地区――と言うか王都全体としても一番の高級娼館でね。出入りできるのは政府役人や元老議員の大物、軍なら高級将校やその取巻きくらいなんだそうだ。相手してくれる女性も、そりゃもうこの世のモノとは思えないほど飛びっ切りの別嬪さんらしいんだな」

「ん~…………あ、なるほどです! コウイチさんがエミリーの捜索をしている間、ジュドなら高級娼妓さんに溺れることなく、ザーラの目を引き付け続けることができると!?」

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