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初めてのおつか…捜査 4

「大きいのは3つ。東のドミノ。西のザーラ。南のイルハってとこかな」

「ギルドやあたしたちの事務所辺りはどこが?」

「ここいらは警衛隊の目が届くからな。俺たちみてぇなのは要らねぇんだよ」

「確かに家賃以外のショバ代だの、みかじめ料だのってヘイさん何も言ってなかったしなぁ。じゃあこっちの方が得って事かい?」

「その分、地代や家賃が高いのよ。東と比べても二~三割は高いわね」

 王宮を頂く北地区は確かに王都府のお膝元であり、役職を預かって王宮に出仕している地方の領主・統治者ら貴族の王都屋敷も多く見られる。そう言った事情も有り、ミケーレの言う通り治安維持等には警衛隊も力を入れているのだろう。

 民間にしても、それら上級臣民との取引など繋がりのある大店(おおだな)等も寄って来るだろうし、その辺りでそちら方面の需要も高く、それに釣られて相場も……と言う事らしい。

「じゃ、これで納得いったし、今回は不問だな。でもなぁ、要らん揉め事を避けるためにも事前に挨拶くらいは欲しいところだ」

「だから言ってんでしょ? この子たちはウチでも受けられない仕事やって貰わなきゃいけないんだから秘密裏に動く案件も有るの! ドン・ドミノにはあなたから言っておいてよ」

「ったくよぉ。昔じゃねぇんだから仕事で慣れ合いは避けるべきだろ」

「分かってる! 埋め合わせはちゃんとするわ。ドンによろしく」

 シオンはそう言いながらティーカップに口を付けた。そのまま”じゃあね”とばかりに左手を軽く振る。

 ミケーレは軽く嘆息しつつ、応じるように右手を上げながら「んじゃ、またな」と席を立った。

「すいませんシオンさん。また余計な手間を掛けさせちゃって……」

「ううん、こっちこそもっとこの界隈のコト、伝えるべきだったわ」

「ねえシオンさん?」

「なに?」

「シオンさんとミケーレさんてお知り合い……て言うか昔馴染みとか、なの?」

「ええ。昔は二人とも、ジャック・ヴァイスのメンバーでね。しばらく一緒にパーティを組んで冒険者してたの。でも、とある依頼でパーティが全滅に近いダメージ喰ってね。私も負傷が元で引退、彼はファミリー入りしちゃったの」

「冒険者が反社組織に?」

「反社? ん~。まあ、腕っぷしが取り得な連中ばかりだしガラも悪いけど……余所はどうあれ、ドミノは反社ってほどでもないかな? あいつがやってることって組織(いま)冒険者時代(むかし)もそんなに変わらないし、街の中でやるか外でやるかくらいだしね。それよりも……」

 シオンはカップを置くと、光一らに向き合った。

「次はあなたたち、おそらく西か南に行くと思うけど、あっちでこんな事があってもこれほど穏便には済まないわよ? さっきも言ったけど西のザーラは三つのファミリーじゃ劣勢でね。勢力伸ばすために、けっこう法度に触れる事もやらかすからね? 十分、気を付けてよ?」


         ♦


「そうなんだよなぁ。僕も『ここは日本とは違う』とか意識してたつもりなんだけど、いやぁ甘かったねぇ」

 事務所に戻った光一と由美は、同じく南地区周辺を廻っていた平蔵と本日の反省会と相成った。光一に平蔵・真鈴、()()の研究をしていた良介と依頼人のヘレナも加わる。

 再現研究に没頭する良介と一番最年少の真鈴を留守番として、平蔵は単独で南地域を回っていた。

「あんまり一処で訊かないで、距離や時間を置いてボチボチと聞きまわってたつもりだったんだけどね~。連中、余所者やら異端を見つけるのって鼻が利くんかねぇ?」

 と、言う感じで光一らと同様に平蔵も地回りに目を付けられたんだそうな。

「南だとイルハ・ファミリー?」

「お、情報得てるねぇ。そのままアジト……てか事務所だわな。連れてかれたよ」

「よ、よく無事だったね」

「まあ、僕の方から『挨拶したいんで場所、教えてもらえますか?』って寄ってみたんだよね、如何にもこの辺の流儀に無知って顔して」

「それで……済んだ……の?」

「ついでに営業もね。調査・探索・捜査からドブ掃除、庭の草むしりまで、法に触れない限りやれることは何でもお受けします。もちろん依頼人の素性は秘密厳守で、ってね」

「雑用とかは余計じゃないか?」

「草むしりの……依頼者まで……秘密厳守?」

「情報や調査に関しては、おそらくその筋の連中がこの街にもいると思う。それこそ敵対組織の弱みを見つけるとか金庫の場所を探るとか、バレたらそのまま消されるような非合法お構いなしの情報屋・チクリ屋の類がね。使い捨てにされても困るから便利屋・何でも屋だってのを前に押し出しといたよ」

「大丈夫なんかなぁ~?」

「一応ジャック・ヴァイスにケツ持ち、てほどじゃないけど贔屓(ひいき)にしてもらってる、とは言っておいたよ。連中、ちょっと顔色変わったし、隣の部屋で幹部らしき奴が、ハッタリじゃ無けりゃ下手に扱わん方が云々……と小声で呟いてたし、しばらくは問題ないだろね」

「さっそく能力が役に立ってるっすね」

「それで……首尾、は……?」

「今のところ、東地区は空振りって感じだな。ヘイさんどうだった?」

「事務所出てから、また目抜き通りとか歩いたんだけどね。地回りが動いたもんで、僕の顔見ると露天商同士で『狐族の娘を探しているらしい』ってボソボソ噂し始めてたようなんだけどな。能力(聞き耳)立ててたんだがマルタイに関しての脈ありな情報は無かったねぇ」

 手元不如意な探偵デビュー。開始早々、トラブルに巻き込まれて難儀したあげく、肝心のエミリー捜索に関する収穫は、ほぼゼロな顛末。

 最初から順調に行く方がどうか? とも思えるが、傍らで聞いていたヘレナは肩を落とさざるを得なかった。

「明日は……西を……?」

「そうなるな」

「誰が行くんだ?」

「今日と同じ、三人で行こう。コウくんと由美くん、ちょいと離れて僕も探ってみる感じ? んでもって由美くん?」

 平蔵は目線を窓際に座っている由美に向けた。

 そこで由美は目を閉じ、眉間に若干のしわを寄せながら何やら念を込めていた。

「どう? 何か引っ掛りそうな情景は見えて来ない?」

 眉間のしわはそのままに、ちょっと右目を開ける由美。

「西の歓楽街……賑やかなのはいいけど……やっぱり、あんま良い空気じゃないわよねぇ~」

 由美は「千里眼」を発動して西地区の、ザーラ・ファミリーが仕切っている歓楽街を観察していた


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