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初めてのおつか…捜査 3

 光一たちは、背後から荒い口調の男に呼び止められ、肩をビクッと震わせた。

「おまえらだな、朝からこの辺で何やら嗅ぎ回ってるのは? どこのもんだ?」

「え? ど、どこのと言われても……」

 いかにもスジ者的な有象無象男に凄まれて、ハイになっていた光一のテンションは一気に下がる。

「こっちやで、アニキ」

 また二人来た。おそらく……と疑うほども無く、すぐに同舟と分かる男たち。

「あ? なんだ、ボンズ? アローザんところのガキじゃ無ぇじゃねェか?」

 ――あ、アローザ?

「へぇ。露店の何人かが、若ぇ男女が二人でうろついてる、てんで俺もてっきり例のガキどもだと思ったんやけどね。でも胡散くせぇのは違ぇねぇし、一応アニキの耳にもって」

「なるほど、そうか。確かに見ねぇ顔だが……おいお前ら?」

 ボンズの説明を受けた、「アニキ」と呼ばれた男は光一らに近付いてきた。まずは手前2mほどで止まる。

余所者(よそもん)だろうが、何をウチのシマでコソコソ嗅ぎ回ってんだ?」

「あ……いや、おれたちは人……人を探してただけなんで!」

「人探しだぁ? 身内か?」

「い、いえ。ある方から依頼を受けまして……」

「依頼? ……つまり、商売でやってたって事か?」

「う……」

 地代・ショバ代・みかじめ料……

 光一の脳裏にはそんな言葉が飛び交い始めた。

「あ、あたしたち私立探偵なの! それで調査しているだけで!」

「調査?」

「シリツタンテイ? なんだそりゃ? 探査とか探索方とか? 国側(役人)か?」

「あ、いや、そういうんじゃなくて……」

「ふん? まあ確かに宮仕えには見えんが。何れにしろ、俺たちの縄張りで挨拶も無しに勝手に妙な事、やって貰いたくねぇもんだなぁ」

「そ、そんな許可要るの?」

「あ? てめぇどこの田舎モンだ? 若ェからって仁義無視してんじゃねぇぞ!」

「おい、ヤース。あんまり凄むな。こいつらマジでそう言うの知らねーみたいだぞ?」

 アニキが、ヤースを抑えた。光一・由美のキョドリ方がどうにも素人丸出しに見えたようだ。実際、アニキの推察通り、ド素人ド真ん中であるし。

「でもアニキ。若いつったって十やそこらのガキでもあるめぇし、商売で嗅ぎ回ってんだから、そんなボケ通用しませんぜ?」

「うう。シオンさん、そんなこと言ってなかったのにぃ」

「ん? おい嬢ちゃん、いま何つった? 誰が何だって?」

「え? あ……シ、シオンさんって冒険者ギルドの……」

「ギルド? ギルドって、もしかしてジャック・ヴァイスか?」

「知ってるの?」

「あんだ? 姐さん絡みかや?」

「あ、姐さん?」

「て事は、その人探しってのは彼女の依頼なのか?」

「いや、そう言う訳じゃ。その、この仕事は彼女の紹介で……」

「ヴァイスの仕事じゃねぇの? やっぱ何か怪しいな」

「と言うか、み、みなさん、シオンさんのお知り合いなんすか?」

「そらお前、シオンの姐さんはウチの……もがぐぐ!」

 アニキの手がヤースの口を塞いだ。

「え? なんですか?」

「いい! 気にするな! しかし、彼女(あいつ)の伝手だとしても妙だな? そんな話は通ってねぇし、シオン()がその辺の事情を言いそびれるワケは無ぇんだが」

「おめぇら。その仕事――依頼内容っての話せや。姐さんが絡んでんならそれ次第で眼ェ瞑れるで?」

 ボンズが光一らに迫る。

 どうやら彼らは、シオンやジャック・ヴァイスとは何らかの繋がりが有りそうだ。

 おまけに下っ端らしい二人はシオンを目上に見ている可能性も高い。となれば話は通せるかも?

 とは言え、看板を上げたばかりではあるが腐っても光一・由美は探偵の端くれだ。依頼者の名前等、守秘義務条項にど真ん中ストライクな情報を、そう簡単に口外する訳にはいかない。思わず漏らしてしまったが、シオンの名を出した事でも境界線ギリギリだ。

「そ、それは話せないわ!」

 おまけに依頼者であるヘレナは他国の王族。下手な流言は国際問題の火種にすら。

「そら、調子こき過ぎだがや? 姐さん絡みってんでこっちも一歩引いてんだで?」

「まあ、いい。ところで探してる相手ってのは、どんなヤツだ?」

「いいんすか、アニキ?」

「シオン()の名前出す以上、コネは有るんだろう。もっともコレ聞いて、シオン()が首傾げたら……てめぇら分かってんな?」

「も、もちろんす! シ、シオンさんの名を騙ってるってのは絶対無いっす!」

 ほぼ懇願に近い、思わず良介風な口調になってしまった光一の返答である。同時に似顔絵を差し出す由美。

「狐族ね。ふ~ん、歳の頃12~3ってところか?」

「でも見たこと無ぇですね」

「可愛いがや、将来有望やな~。やけど噂も聞かねぇがや」

 ――あ、話し、聞いてくれてる……

 ――反社でしょ、この人たち? シオンさん……何者?



「ごめんね~。てっきり()()()()()は分かってると思ってたから~」

 シオンの絵に描いたような悪びれの無さ。もうテヘペロ以前の愛想笑い。

 光一たちは結局、ギルド繋がりのウラを取るためにシオンの元へ付き合わされる事となった。

 ギルド内で話すには他者の耳を憚らねばならない案件でもあるし、4人はギルド向かいにあるカフェに移動して話し合った。

「お、おれたちの世界(故郷)は、そうそう反……地回りさんとかの付き合いは希薄だったもんで……」

「そうなのか? 街中でトラブルとかあったら、どうしてんだよ?」

「もちろん警察に……」

「ケーサツ?」

「え? いや、あの、泥棒とか喧嘩とか取り締まって治安を維持する……」

「あ~、城下警衛隊か。いや、あいつらは王城近辺はともかく、それ以外は殺人とか盗賊団相手みたいなド派手なヤマでも無けりゃ出て来やしねぇよ、人手も足りねぇし。だから俺たちがいるんだしよ。やっぱ、よほど長閑(のどか)な田舎らしいな、おまえらの故郷(くに)って」

「……」

 さきほどから随分と田舎者呼ばわりされてしまい「水も安心して飲めねェ街の住人に言われた無いわ!」とでも言い返したい気持ちは有れど、自分たちが異世界から来た召喚者であることは軽々に吹聴すべきではない。

 と、アニキ――ミケーレを交えての話し合いの前にシオンから改めて釘を刺されていたし?

「まあ、そう言う訳でね。この子たちの仕事は、あたしたち経由なのは保証するわよ? 訳アリでウチじゃ受けられなくてさ」

「そうか。そんならまあ、揉め事起こさん限り、あそこらで仕事すんのは構わねぇな」

「でも、あなたのとこでよかった。西のザーラ・ファミリーだと一時金でもみかじめ取ってただろうし」

「ファミリーごとでルールが違うの?」

「まあ大同小異だけどね。ザーラは他より縄張りが狭いもんで、お金にはキツめなのよね」

「王都でどれくらいのそう言う反……いえ、ファミリーとかグループとかあるんですか?」

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